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『自衛隊員が泣いている』

2013-09-07 21:51:03 | Weblog

 2020年オリンピック開催地が東京に決まるかどうかで、マスコミは朝まで特番だそうだ。人相の良くない猪瀬東京都知事が「東京は福島から250kmも離れているので安全だ!」と弁明している。逆に考えると福島は危険ということを言っているのだ。原発の名前は東京電力福島第1原子力発電所、東京に住んでいる人たちのために電気を作ってきた施設に対して、「アッシたちにはもう関わりの無いことだ」ということなのか。東京五輪招致成功の熱狂で福島を忘れたいのだろうが、熱狂は心の問題で時が経つと消えてしまうだろうが、放射性物質は物質なのでいつまでもいつまでも残るのだ。

 

 『自衛隊員が泣いている』(三宅勝久著 花伝社 2013年刊)

 自衛隊員に自殺が頻発している。著者は、本書でいくつかの自衛隊員による自衛隊を相手とした訴訟の内容を報告している。訴因は、体内での上官によるいじめ、あらぬ疑いに対する警務隊による不当な取調べ、それに起因する心の病、暴行、リンチ、パワハラ・・自衛隊員の命と心が壊れていくと警告する。

 筆者の立ち位置が反自衛隊にあるため、はたして本書の表現内容に客観性があるかどうかは少し疑問があるが、火の無いところに煙は立たないという諺もあるように、事実はその通りなのであろう。

 ただ、本書に欠落しているのは、現象を描くことに精力が注がれているが、組織の病理の原因がどこにあるのかという、本質的な分析がないという点である。組織の閉鎖性の具体的にどこに問題があるのか。果たして自衛隊員は隊内で人権が保障されているのか。否、物言う自由があるのか。旧国軍と組織体質は変わらないのか。そういう分析が全く無い分、消化不良に終わっている。

 自衛隊の組織目標である「祖国を守る」ということの内実は何か。領土、領空、領海、国民、財産、国家体制・・を守る。いずれも抽象的な共同幻想(観念)のため自衛隊員は存在を意義付けられている。

 しかし、個々の隊員の意識は、恋人、家族、友人・・を守りたい。それぞれ対幻想の世界で自分を納得させているのではないか。共同幻想と対幻想の間にある心の空隙が様々な病理の原因なのではないか。

 自衛隊員の隊内での暮らし、家庭内での様子、地域社会でのふるまい振りなど知ることのできないことはまだまだ多い。

 


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