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マイナンバーカードを持つことに対する不快感はどこからくるのだろうか。それは、相次ぐ事務ミスだけが原因ではない。免許証は運転をするため、健康保険証は病院にかかるためとそれぞれ目的がはっきりしていて納得感があるが、マイナには所持する切実な必要性を感じない。僕には、在日外国人が日常的に在留カードを持たせられている気持ちに通じるものがあると思う。
『歴史のダイヤグラム〈2号車〉 鉄路に刻まれた、この国のドラマ』(原武史著 朝日新書 2023年刊)
本書は、著者が朝日新聞に連載したコラムをまとめたものだ。皇室、文豪たち、駅弁や駅前食堂などいずれの話題も鉄道に関係している。「鉄学者」と自称するだけに、当時の時刻表を調べ尽しており、行き先、便名、時刻などはきわめて正確だ。これは、著者が高く評価する松本清張の小説における手法に通じている。また、車窓からの景色、車内の乗客の様子、その土地の人びとの様子なども良く書き込まれている。
1コラム、新書3ページという短い文なのでひとつの話題を掘り下げることはできないが、起承転結がはっきりしていて論理の展開が明瞭で、作文やエッセイの書き方の手本になるような見事な文章だ。
そこに鉄路があるから、人々は様々な想いを抱く。鉄道が無くなってしまうと、このような思いを抱くひとや、それを文章にしたためるひともいなくなってしまうだろう。あらためて鉄道はいいなあと思う。
本書を読んでいると、自然に北海道のことを考えてしまう。不採算路線はどうなるのか。新幹線が開通した後に並行在来線をどうするのか。本州と道内を結ぶ貨物列車は存続できるのか。鉄路が廃止された後の代替交通手段をどうするのか。北海道の鉄道には課題が山積していて中々解決策が見当たらないのも周知の事実だ。
鉄道の存続には採算も重要なので仕方がない課題ばかりだが、北海道からレールが剥がされてしまうと、これからは旅情を題材にしたエッセイや物語は生まれにくくなる。時間短縮には最も有効なのは新幹線だが、トンネルだらけの旅は楽しいのだろうか。僕は、それとは真逆の、ノロッコ列車のようなスピードを落として、車窓からの風景をゆっくりと楽しむ乗り方があってもいいと思う。
一度レールを剥がしてしまうと二度と元に戻ることはないだろう。なにか工夫はないのか。素人の思いつきだが、都市間を結ぶ幹線以外のローカル線は。車両を思いっきり軽量化した構造にして、列車スピードも落としたら、線路の整備レベルを低くでき、線路維持の経費を減らせるのではないか。
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