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ジェームズ・C・スコット 『実践 日々のアナキズム』 ② 「国家を考える」ノオト その12    

2021-02-21 13:49:15 | Weblog

「そしたことから」「こしたことで」「いずれにせよ」・・覇気が感ぜられず死に神のようなスガ首相。取り柄を探してもほとんど見つからないのであるが、唯一いい点は、日本国憲法の改定が遥かに遠のいたことだ。スガには憲法をどうしようかという理念も信念も感じられず、また何が何でもやるぞという推進力もないと感じるのでとりあえず一安心している。

 

『実践 日々のアナキズム―世界に抗う土着の秩序の作り方』(ジェームズ・C・スコット著 岩波書店 2017年刊)② 「国家を考える」ノオト その12    

(僕)僕の理解では、コミュニズムは、抑圧されているプロレタリアートが支配階級であるブルジョアジーから権力を奪取して、労働者の国家を樹立し運営する。その社会は、秩序や規則、効率性ということばと親和性を持つ。しかし、20世紀の歴史における帰結は法治主義に基づく社会からは遠く、人間関係(コネ社会)を優先した専制者による人治主義に陥ってしまい大失敗に終わった。一方、アナキズムは、権力そのものの存在に否定的であり、反秩序や反権威、混沌とした社会のイメージである。ホロウェイは『権力を取らずに世界を変える』といったが、さてどのように変えたらよいのだろうか。行き先不明のバスに誰が乗ってくれるだろうか。

『第一章 無秩序と「カリスマ」の利用』(断章1~断章4)から学ぶ。

(断章1 アナキスト柔軟体操というスコットの法則)では、(P6引用)「理に通わぬいくつかの些細な法律を破る。自分の頭を使って、その法が正しく理に通っているか判断する。そうすれば、健康な心身の状態を保つことができ、重要な日が訪れた時に、しっかりと準備ができている。」と、日常の小さなルールにこだわりそれを捉え直すことが重要だという。

(断章2 不服従の重要性について)では、(P16)「革命的前衛や群衆の暴動よりも、数百万の人びとによる沈黙の粘り強い抵抗、職場放棄や脱走、反抗の方がこれまで多くの体制を少しずつ屈服させてきた。」と、(P10)「日常型の抵抗」の有効性を示す。

(断章3 さらに不服従について)では、(P20)「通常、議会政治の特徴は、重要な変革を促進するよりも、現状を固定化することにある。」、(P22)「一般に、西洋における自由民主主義は、もっぱら富と収入の観点から上位20%を占める人びとの利益のために運営されている。」と、僕らが肯定的イメージを持っている議会政治や自由民主主義というシステムが一部の階層の利益のためであり、(P26)「私の目的は、自動的な服従という根深く染み込んだ習慣が、ほとんどすべての人にばかげたことだと分かる状況をいかにもたらしうるかを例証すること。」と、人びとの覚醒を促す。

(断章4 広告「リーダーがあなた方の導きに喜んで従うつもりで、支持者を求めています」)では、ケネス・ボールディングを引用して(P35)「組織(国家)が、より大きく権威主義的であればあるほど、その最上位の意思決定者は純粋に想像上の世界のみで活動する可能性が高い。」と、実際にはリーダーが現実を認識できていないという弱点を明らかにし、逆に(P31)「カリスマの鍵となる条件は、ていねいに注意深く耳を傾け、それに応答するということ、気配りのきいた傾聴の態度を促す構造的な条件が重要」と、リーダーが大衆の現実を正確に把握することの重要性を指摘する。

『第二章 土着の秩序と公式の秩序』(断章5~断章10)

(断章5)省略 (断章6 公的な知と管理の風景)では、(P43)「フォード主義的な生産とマクドナルドの規格は、エルンスト・フリードリヒ・シューマッハーが『人間を含めた生きた自然界の予測のしにくさ、時間的不正確さ、移り気や強情といったものに対する反逆である。』と述べた。」と、近代産業の効率性を追及した厳密なシステムが持つ非人間性を指摘する。

(断章7)省略 (断章8 無秩序な都市の魅力)では、(P50)「多様な環境にこそ最も繁栄しそうなのは、植物だけでない。人間の性質も同様に、狭隘な画一性を避けて多種多様性を好むようだ。」、(P54)「秩序の公的な形態に特徴的に見られる模型化と小型化の論理は、近代主義の病理を示している。現実の世界は、乱雑で危険でさえある。」、(P55)「(首都の)中心部の秩序は、その秩序に従わず否認された周縁部の実践によって支えられている。」と、画一性、モデル化、小型化、中心といった秩序を表す表象を退け、多種多様性、乱雑、危険、周縁などカオス的な情況に対して共感する。

(断章9 整然さの裏の無秩序・混沌)では、(P55)「社会的ないし経済的な秩序は、より高度に計画され規制され公式化されるほど、より非公式な過程に依拠することになる。」と、逆説的な表現をする。

(断章10 アナキスト不倶戴天の敵)では、(P63)「近代国民国家は土着の実践(国家なき集団、部族、自由都市、緩やかな街の連合、孤立したコミュニティ、帝国)を絶滅させた。」、(P65)「言語、地域の口承文学、記述文学、音楽、英雄譚と叙事詩、意味世界全体の消失をもたらした。」と、僕らが現在身を置いている国民国家という枠組みに疑問を呈する。

 

 


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