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『日本経済はなぜ衰退したのか』

2013-05-22 20:00:10 | Weblog

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 飛鳥時代にタイムスリップ

 

 『日本経済はなぜ衰退したのか 再生への道を探る』(伊藤誠著 平凡社新書 2013年刊)                   

 伊藤誠氏は、絶滅危惧種となって久しいマルクス経済学者である。マル経にあらずんば経済学にあらずと肩で風を切って歩いていた研究者たちはどこへ行ってしまったのか。国際経済、社会経済、環境経済・・マルクスという言葉が差し支えるのであろう、看板を付け替えている。

 本書は、200ページほどの新書であるが、現状を歴史的射程の中で捉える、資本に奉仕するのではなく労働者(生産手段を持たないという意味で広義)の視点で考えるという理論を用いて、やさしい言葉で表現されている。

 さて、アベノミクスの評価であるが、歴史を振り返ると、戦後歴代自民党政権のもとでは、1970年代まではケインズ主義的政策であったが、1980年代以降、特に中曽根、小泉政権では、新自由主義的政策に転換した。伊藤氏は、2009年からの民主党政権では、当初、子ども手当てや高校授業料無償化などケインズ主義、社会民主主義的政策をとったと一定の評価をしている。アベについては、新自由主義を基調としながら、ケインズ主義を便宜的・局部的に利用していると捉えているが、7月の参議院選挙後には、緊縮政策と増税に反転する可能性が大きいと分析している。

 現状分析としては、わかりやすく説得的な論理展開である。しかし、不満が残るのは、新自由主義批判、ケインズ的社会民主主義の選択の次元に留まっている点である。資本主義経済体制に対するオルタナティブ、著者が、具体的に提案するのは、グリーン・リカバリー戦略、ベーシック・インカム構想、地域通貨であり、それぞれの考え方のはもうひとつの道の萌芽が含まれているのだが、今後の展望、現在の逼塞状況に対する打開の道の提起が足りない。

 しかし、本書は、日本経済についての数ある書籍の中でも、コンパクトで理解しやすい良書である。これ一冊で、ものの見方、考え方の再確認ができる。

 


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