晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』

2013-09-04 20:26:36 | Weblog

 『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたいー正義という共同幻想がもたらす本当の危機―』(森達也著 ダイヤモンド社 2013年刊)

 とても長い題名の本である。当ブログとリンクしている愛犬日記で、現行の憲法の解釈で集団的自衛権が認められるという見解を示している小松一郎法制局長の「隣家に強盗が入って殺されそうだが、パトカーがすぐに来ないかもしれないので隣人を守る。」という言葉を批判的に引用している。

 本書で著者は、最近の一見批判をしにくいが、冷静に考えると絶対におかしいという言説をいくつか例示している。代表的なのは、「殺された被害者の人権はどうなんだ!」であろう。表題の「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」も全く同じ構造を持っている。

 領土問題で冷静な対応を主張した著者がネット上で浴びせられたのは、「ならばお前の家に押しかければ庭や財産をくれるんだな」「尖閣やったら次は沖縄が狙われるに決まっている」という言葉だ。

 この国の首相(私は以前、大きい声の出ないアベちゃんと言っていた。)も同様の言葉を吐く時がある。「国民は憲法について意思表示をする機会を奪われていた」だから、96条を改正したいのだと。

 警察官の職務質問を任意ですねと拒否した時の決まり文句は、「何かやましいことがあるんですか」でる。

 本書は、ダイヤモンド社のPR誌『経』に2007年10月から連載された『リアル共同幻想論』を編纂している。共同幻想は、もちろん吉本隆明の影響である。国家という共同幻想に危機を見る筆者である。

 

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