晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『実録 神戸芸能社』 その1

2009-11-24 19:27:44 | Weblog
 『実録 神戸芸能社 山口組・田岡一雄 三代目と戦後芸能界』(山平重樹著 双葉社 2009年刊)

 久々に一気に読めるノンフィクション作品だった。著者の山平氏は文章もにテンポがあって大変読みやすい。素材が良くても調理が拙いと美味い料理にならないが、山平氏の手にかかって上手な作品に仕上がっている。

 映画で言えば、「仁義なき戦い」、物書きでは、猪野健治、竹中労を思い出すような内容である。

 表の看板は、「神戸芸能社」、実態は山口組興行部。山口組三代目田岡一雄の生涯を描いている。しかし、田岡氏はヤクザ者に対しては筋を通し厳しいつきあいをするが、素人に対しては温和な対応、氏の器の大きさを描く。

 この国のアンダーグラウンドは、皆が繋がっている。ヤクザと芸能界のみならず、漫才、浪曲、歌謡曲、プロレス、相撲などを通じて、芸能プロダクション、政・管・財界、右翼、自民党。地下で全部繋がっていることがわかる。

 鶴田浩二、美空ひばり、三橋美智也、西郷輝彦、舟木一夫、渚ゆう子、力道山、児玉誉士夫などが登場する。

 芸能興行を通じてヤクザの勢力拡大が図られる。戦後、国が落ち着きを取り戻すのと同時期に芸能も拡大に続く拡大が図られる。しかし、昭和39年警察庁のいわゆる「頂上作戦」で、ヤクザ系の興行が公共施設から締め出される。田岡組長の死、神戸芸能社も終焉を迎えこの物語も終る。

 果たして、今の芸能界やいかに。いわゆる暴力団とは完全に無縁ではあるまい。山平氏には、現在の興行の世界も描いてほしいものだ。


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