馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

2.5ヶ月齢の橈骨骨折 double LCP

2018-06-24 | 整形外科

夕方、放牧地で当歳馬が橈骨骨折している、との連絡。

もうX線撮影したりしているより、すぐに運んでもらったほうが良い。

橈骨骨折ではキャスト固定するのは無理だ。

ロバートジョーンズバンデージを巻いて、肩甲骨の部分まで伸ばした添え木を付けて運ぶよう答える。

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来院したら、人が抱えて立って入るが歩けない。

外で全身麻酔して、リヤカーに乗せて倒馬室へ運びこむ。

橈骨近位骨幹の螺旋骨折だ。

小さいフラグメントがあるが、粉砕というほどではない。

これならピッタリ整復できれば、頑丈な内固定ができるか、と思ったが・・・・・

手術台で仰臥にして、バンデージを外して、消毒して、橈側手根伸筋上を切皮して、整復しようとするがうまくいかない。

悪戦苦闘するが、完全な整復ができない。

3人がかりでなんとか骨折端を合わせたが、完璧ではない。

小さな骨片がなくなっていたし、骨折端が磨かれて丸くなっていたし、螺旋状骨折なので尖った端が薄くて割れそうだ。

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内から2本のラグスクリューを入れて仮固定した。

まず頭側すこし外寄りにブロードLCP12孔を当てる。

両端と骨折部近くを4.5mm皮質骨スクリューで押し付ける。

あとはLHSで固定する。

内側にはナローLCP12孔を当てる。

しかし、先のLCPに入れたスクリューに当たらないようにするのが難しい。

仮固定したラグスクリューのヘッドが邪魔になるので、1本は抜いた。

スクリュー1本はどこかに当たって折れた。

両LCPとも骨折線のすぐそばにはスクリューを入れなかった。

その隣の孔は4.5mmスクリューを入れた。

骨折部近くに集中してLCPにかかる力を分散してくれるはず。

整復は完全ではない。

術後はキャストはしなかった。

体重は量れなかったが、おそらく170kgほどあるだろう。

橈骨近位部を有効にキャスト固定する方法はない。

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無理な姿勢で3時間、難手術をしてヘトヘトになって帰ったら、ぶらじ~るとこすたり~か戦の最中だった。

一方的にぶらじ~るがボール回しして攻めるのだが、こすたり~かは守備に集中し、名ゴールキーパー・ナバスもゴールを割らせない。

ブラジルも2戦とも引き分けとなると予選リーグ突破が危うくなる。

最後の5分にブラジルが1点決め、反撃に出たコスタリカにネイマールがとどめを刺した。

ネイマールは試合後泣いていた。

終わってみれば2-0だったが、良い試合だった。

ブラジルもコスタリカも、それぞれの状況の中で魂のこもったゲームをした。

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で、疲れに寝不足が加わったのでした。

ボロボロだ;笑



6 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2018-06-24 07:01:31
 ぱっと見、難儀しそうに見えないけど、関節近くの螺旋骨折、そういうものなのでしょね。プレートのカーブがもう芸術的。
 なにかにびっくりしてこう折れたたのかな?
 サッカーわかんないから「泣くんだ」くらいに思った。試合中は自前の神経物質で興奮、高揚するんでしょね。同時に判断力、集中力も維持しているから冷静で的確なシュート。どんだけの素質と有効な練習の量なんだろまったく、と一流のサッカー選手にはただあきれる。
 鶏、こんなところにいる小さいバッタを食べました。まずそうなのに。
 hig先生はお早い回復で、またおんまさん、牛さんたちを治してほしいです。
  
Unknown (piebald)
2018-06-24 10:32:19
無理な姿勢はきついでしょうね。
辛い体制で固まった体に、ネイマールの涙は、ちょっとだけ、効いたのではないでしょうか?
>はとぽっけさん (hig)
2018-06-24 19:58:08
X線画像には骨しか写りませんから、簡単に整復できそうに思ってしまいます。しかし、もう人の2倍以上の体重があるサラブレッドの筋力に逆らうのは至難の技でした。300kgのホルスタインより筋力は強いのかも。

今日は疲れはとれていました。徒労に終わらないことを願っています。
>piebaldさん (hig)
2018-06-24 20:00:46
ネイマールは世界指折りのサッカー選手ですが、その彼が予選でゴールを決めて勝っただけで泣いているのを観て、彼が背負っている責任、指名、重圧を感じました。
当番じゃない夜に重傷と悪戦苦闘した自分と重ねたわけじゃないですけど;笑
Unknown (zebra)
2018-06-26 07:16:53
内側近位に僅かに不整が見られているようですが、ここまで亀裂が走っていたのでしょうか。
これでも整復不完全言うのですから大変ですね。
肢軸が捻じれないように正確にあてがうのは筋肉が増える程大変なのだろうと思います。
大型犬の下腿が捻れてくっ付いて、膝蓋骨脱臼の原因になっていたのを見たことがあります。
頭側のプレートのカーブなんか完全に整復像が想定されていますよね。
数をこなさないとこうはならないのだろうと思います。
頭側のLCPルールを全てのホールで達成して、内側のプレートは皮質骨スクリューの角度融通性を生かしてDCPでも行けそうですがDrRechardsonはどう考えるでしょう。
両方LCPで行って折損リスクをかわすなら、骨折部位だけ皮質骨スクリューを使って角度に融通きかせて、より多くのスクリューを入れる方法もありそうですが如何でしょう。
これなら最初の仮止めを撤去して必要なラグスクリュー を打ち直すと言う視点も成立しそうです。。
>zebraさん (hig)
2018-06-26 20:18:31
頭-尾方向の画像で、近位部に縦に走る亀裂が写っていますが、それ以外は大丈夫だったろうと思います。
テンプレートと呼ばれる薄いアルミ板でプレートを模したものを買いました。整復したら、それを当てて骨に沿わします。あとはそのアルミ板をそばで観ながら、ベンディングプレスでプレートを曲げればよいのです。

1枚はLCP、もう1枚はプレートスクリューの角度を変えられるようにDCP、というのは良いアイデアです。
しかし、DCPは完全に骨に沿っていなければ強度が落ちます。もしDCPでやるなら内側のプレートはもっと完全に骨に沿っていなければなりません。

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