馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

奇跡の夜が明けた日は腸管手術を3頭、その他にも

2020-05-08 | 急性腹症

私が第一当番だったが、入院馬もおらず、急患の電話もなく奇跡の夜だった。

これが日頃の行いの良さ、というやつだな;笑

朝、1歳馬の大腿骨骨嚢胞のscrew固定とPRP療法。

その最中、不調の繁殖雌馬の診察を頼まれていて私一人で診察。

胸膜炎だった。慢性化していて完治は難しい。治療するなら離乳した方が良い。

そのあと1ヶ月の当歳馬の近位趾節関節の伸展方向への亜脱臼の経過判断。

あきらめた。剖検したらあきらめたのが正解だった。

近位趾節関節の底側固定装置がすべて切れてしまっていた。

そして急患で繁殖雌馬の結腸捻転。術前PCV59%。

厳しいですよ。と言っておいたのだが、やってみて欲しいとのことで、開腹した。

骨盤曲切開部の粘膜は完全壊死。覚悟の上だった。

結腸亜全摘する気で始めた開腹手術だったが・・・・

もうそこより奥は術創から出せない盲腸結腸襞の近位までダメージが広がっている。

あきらめるしかない。

次の疝痛馬が来院。分娩1ヶ月の繁殖雌馬。

超音波で腸間膜ヘルニアっぽい、と推察したが、

そのとおりだった。

空腸最上位から腸間膜が剝がれたようになった大きな孔だったが、私たちには縫って閉じるHow to がある。

大結腸を骨盤曲を切開して空にしておく。

(これが正常な大結腸、先の結腸捻転の結腸のひどさがわかる)

そして盲腸、結腸を馬の右に、小腸を尾側に出しておいて、助手が術創内で左右へ小腸をどけると・・・

縫合閉鎖できる。縫い終えたところ。

そして、当歳馬のロド感染症の精密検査。

5時過ぎて、繁殖雌馬の疝痛の急患の依頼。

超音波で小腸がひどく膨満している。PCV47%。

2週間前の分娩で空腸腸間膜に孔が開いたのだろう。

そこへ空回腸が入り込むことで纏絡していた。

回腸を盲端にし、膨満した上位の小腸内容を捨て、健常部で空腸を切断して盲腸へ吻合し、腸間膜を縫って閉じた。

私は夜9時に引きあげた。

さっさと寝ておかないと夜中起こされない保証はない。

              /////////////////

このあたりの桜は満開を迎えている。

どこにも観にいっちゃいけない、とされているので、身近な桜を愛でよう。

庭や近所のサクラを大事にしましょう。

病気の枝があったら切り落し、断面には被覆剤を塗っておきましょう。サクラは切り口から腐ります。

花が終わったら、御礼肥を少しやりましょう。