3日前に分娩してから不調が続く繁殖雌馬。
分娩後から発熱。食欲不振。食べるようになったかと思ったら、
今朝ははっきりと疝痛。
牧場の獣医さんがしっかり経過と治療内容を書いてきてくれたので様子がよくわかった。
経過書とはこうでなくてはいけない。
電話でああだこうだ聞いてもメモ書き程度にしかならないし、だいたい整理して経過を話す獣医師が少ない。
来院して診察しながら経過を訊くと、同じことを何度も訊かれることになる。
「この馬連れて行けって言われました」と事情を知らない従業員が連れてくることさえある。
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超音波検査でひどく膨満した小腸が見えた。
右腎臓の脇で十二指腸も膨満している。
胃カテーテルを入れると、粥状の内容がダラダラと出続けて、5リットル。
分娩で小腸の腸間膜が破れて空腸が動けない部分があるのと、壊死が始まっているのだろう、と推定診断した。
当たっていなくても、開腹手術の適応なのは間違いない。
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腹腔内は腹水は多くないが、全体に黄色くてきれいではなかった。
空腸の中位に大網が癒着して閉塞している部分があった。
腸間膜が破れて血行を失った部分が通過障害を起こした。
短い部分だったのでなんとか食べられるようになった。
しかし、壊死が進み、そこを大網が覆って破裂を免れた。
今度は、癒着した大網が巻き付いて閉塞を起こした、ということだろう。
60cm切除して吻合した。
1.ドレープを下に敷く。
2.切除する部分と吻合する部位を決めて、腸間膜の血管を結紮止血する。
3.汚さず廃液できるように腸を配置する。
4.術創からできるだけ離れた所で切開(あるいは切断)する。
5.膨満部の内容を捨てる。
6.吻合部に腸鉗子をかけて切除する部位を切断して捨てる。
7.吻合する。
「腸管吻合」というと吻合が難しいように思われるかもしれないが、実際には practically 要領よくできるかどうかは1~6にかかっている。
吻合そのものは上手にできるように練習しておくのは当たり前。
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だが、それで順調に回復するとは限らない。
それが臨床の難しさ・・・・・・
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葉が出始めて、モクレンの季節も終わり。