馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

全国公営競馬獣医師協会生涯研修2017 3日目

2017-02-16 | How to 馬医者修行

3日目はまるごとの解剖体を用いて腹腔内探査の実習。

馬の獣医師でも網嚢孔を触れる人は多くない。

おなじように、

馬の獣医師でも肘関節の位置と構造を正確に把握している人は多くない。

馬の獣医師でも上腕二頭筋滑液嚢をしげしげと観たことがある人は多くない。

そういう機会があるかどうかだし、そういう経験はいつか役に立つことがあるはず。

これだけ知っていれば名医、という知識などない。

名医とは、数多くの知識や技術や経験の蓄積からなるのだと思う。

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近位指節関節固定手術やTieback喉頭形成術もやってもらった。

飛節の浅屈腱脱位について説明した。

球節の輪状靭帯切断術について説明した。

それでやや4時。

みなさん満足されたように感じた。

ただの馬解剖学ではなく、馬臨床解剖学実習と呼んでいい1日になったと思う。

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今回、動物園の獣医さんが参加されていて、いろいろな動物園動物の話を聴けて面白かった。

テナガザルやチンパンジーは不器用なのだそうだ。樹上生活に適応しているので、親指を掴む目的に使えない。

ライオンの橈尺骨骨折が、内固定もキャスト固定もせず後遺症も残さず治ったそうだ。野生動物スゲー!

ゾウに襲われるととっても危なくて怖いそうだ。音も無くしのびよる、あるいは突進する・・・・

キリンもシマウマもバクも、診療の対象にするのはとても難しいそうだ。バクの開腹手術はちょっとやってみたいかも。腸に詰まっているのは夢のかけら?

われわれ獣医師は動物の医者だと思っているが、家畜やペットについてしか学んでないし知らないんだな。

 

 


公営公営競馬獣医師協会生涯研修2017 2日目

2017-02-16 | How to 馬医者修行

2日目はスリングを着けて倒馬。

大事なテクニックではある。

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そのあと、腸管手術の実習。

リクエストで、空腸切除、回腸閉鎖、空腸盲腸吻合、をやってもらった。

生産地ではもう疝痛馬を死ぬまで手をこまねいていることはほとんどなくなった。

もちろん疝痛は今も最大の死因のひとつではあるが、日常的に開腹手術が行われ、年間何十頭もの馬が救命されている。

それはいずれ生産地以外にも広げられるはずだ。

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開腹手術実習のあと、キャスト固定について講義してから実習。

以前にも講義も実習もやっている内容なので、資料を配布しなかったら、「資料を欲しい」、という声がだいぶあったようだ。

資料の配布は、良いような、悪いような、と思っている。

資料をもらうと安心する。しかし、あとで見直すか?

資料といっても話して聴かせるために作っているスライドだ。読む資料としては作っていない。読んで理解できるか?

講義はそのとき集中して聴いて理解することがだいじ。わからないことはその場で訊けばいい。

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hoof cast もやってもらった。

彼女は、獣医師にして装蹄師でもある。

さすがに蹄を保持する姿勢がさまになっている。

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私たちは馬の数と密度がもっとも多い地域で仕事をしている。

まさしく馬のcapital だ。

上の絵、生産地にいる者の目で見るとおかしく感じる。

1頭の仔馬が大人馬に取り囲まれているなどということはまずない。

母馬は、自分の仔馬に他の馬を近寄せないものだ。


全国公営競馬獣医師協会生涯研修2017 1日目

2017-02-16 | 講習会

水曜の夜?木曜の朝?寝たのは4時。

金曜の夜は眠らないまま開腹手術を2頭こなし、車で千歳へ走り、夕方那須へ飛んだ。

安着祝いもほどほどに眠らせてもらった。

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日曜日、自己紹介のあと講義で開始。

野外、あるいは立位でできる手術。を1日目のテーマにした。

今回、私のパートの参加者は約35名。過去最高ではないか、とのことだった。

こうなると皆さんにやってもらう形式での実習は無理。だいたいそんな器材もない。

デモンストレーションをして、あとは各自体験してもらう。

お互い話し合ったり、教えあったりも大事。

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耳にできた馬類肉腫equine sarcoid の切除もたのまれていた。

これはM先生がたいへん丁寧な切除をしてくれた。

私は講義で、馬サルコイドに切除と免疫療法を併用した症例を講義した。

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内側膝蓋靭帯の切断術を観ているところ。

どんどんやりましょう、という手術ではないが、立位でできることを知っている馬獣医師が増えることで助けてもらえる馬もいるはず。

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とうちゃん、オラおいてどっかいった・・・