馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

網嚢孔ヘルニアの不幸中の幸い

2016-02-06 | 急性腹症

前日の午後3時に放牧地で疝痛が発見された空胎の8歳の繁殖雌馬。

鎮静剤投与されたが、夜にはまた強い疝痛を示し、直腸検査で膨満した小腸を触ったという。

「手術できる所へ連れて行きましょう」と言ったが、「夜だから」と断られたそうだ;苦笑。

夜中も疝痛変わらず、朝8時半に私が依頼の電話を受けた。

「9時半に持って行きたいんですけど・・」

「はあ? そんなのんびりした話じゃないよ。」

もう午前中の手術の準備もしているし、患畜も運ぶところだろう。

午後も喉頭内視鏡検査と関節鏡手術の予定が入っている。

                      -

それでも9時半にやってきた。

血液はPCV39%、乳酸値は4mmol/lを超えている。

半日以上小腸閉塞をしているのに脱水が進んでいないのは不思議なくらい。

超音波検査で完全膨満した小腸と肥厚した小腸が確認できた。

「開腹した方が良いです。」

                      -

回盲部あたりの単純な閉塞かと思っていたら、りっぱな網嚢孔ヘルニアだった。

絞扼はひどくなかったのか引張ると抜けてきた。

入り込んでいた部分は変色し、斑に出血もしている。

1.5m切除して、空腸と回腸を吻合した。

半日放っておいてこの程度で済んだのは不幸中の幸いだった。

網嚢孔ヘルニアを半日も経過を観てしまうと、たいていは予後不良になるだろう。

                       -

前日の夜から結腸便秘の馬も入院していた。

夜中に「分娩予定日を過ぎた繁殖雌馬が、様子がおかしいので診て欲しい。帝王切開も考えている。」との依頼。

朝4時から、3頭の入院馬を視る、観る、診る。

やれやれ、そろそろ繁殖シーズンが始まったようだ。

                      //////////

まだまだ寒いのに、ね~