真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「をばさん家政婦 肉づきたつぷり」(1994『どスケベ家政婦 下半身拭ひ』の2010年旧作改題版/企画:セメントマッチ/製作:オフィスバロウズ/提供:Xces Film/監督:池島ゆたか/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:隅田浩行/編集:酒井正次/音楽:平岡きみたけ/助監督:高田宝重/監督助手:森山茂雄/撮影助手:小山田勝治/照明助手:藤森玄一郎/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:沢田杏奈・井上あんり・杉原みさお・平岡きみたけ・神戸顕一・山の手ぐり子・池島ゆたか・野上正義)。出演者中、山の手ぐり子(=五代響子/現:五代暁子)は本篇クレジットのみ。
 テレクラを介して、江崎恒(池島)が森永聖花(沢田)と出会ふ。早速ホテルに直行、何処か地に足の着かないのと同時にセックスは好きさうな聖花と恒が楽しく遊んだのも束の間、江崎家を激震が襲ふ。同居する恒の父親・新造(野上)が倒れてしまつたのだ。看護婦(山の手)を連れ往診に訪れた医師(神戸)は、入院にまでは至らない新造の自宅療養と、介護の要とを恒に告げる。ところが、恒の後妻・栗子(井上)が新造の介護を無体に拒否。困り果てた恒は両親不在の実家で祖父の面倒を見てゐたとの聖花の申し出に乗り、愛人を住み込みの家政婦として家に入れるとかいふ、画期的に大胆な奇策を実行する。平岡きみたけは恒の息子で、義母を通して女全般に憎悪に近い嫌悪を抱くフリーターのバンドマン・真。髪を金髪メッシュに染め上げると、元来ディフェンシブな童顔も案外それらしく見える。当然恒はスリリングな自宅不倫に戯れる一方、血は争へないとでもいふ方便なのか新造も新造で、身の回りの世話をして呉れる聖花に対しセクハラがてら、病躯に鞭打ち最後まで一戦交へる。祖父の冷や水を目撃した真はバンドのグルーピー、兼一応彼女の成沢まゆみ(杉原)との逢瀬に際し乱暴なプレイの挙句怪我を負はせ、栗子も栗子で、矢張り家の中に自分以外の若い女がゐる状態に嫉妬心を燃やす。聖花を家政婦として家に入れた結果新造の介護問題が解決するどころか、案の定江崎家は更に揺さ振られる。こゝで、映画本篇が与り知らぬところでちぐはぐなのが、栗子が女のライバル心を刺激されるやうに、どう転んでも二十代後半にしか見えずしかもスレンダーな沢田杏奈を捕まへて、一体エクセスは何を気迷ふてか「をばさん家政婦 肉づきたつぷり」だなどと、“家政婦”以外はまるで明後日な売り方をしようと思ひたつたのか。
 淫蕩な小悪魔、といふよりも今作に於ける聖花の描かれ方は寧ろ、逆の意味で純真な奔放な天使、といつた方がより適切であるのかも知れないが、兎も角性的にフットワークの軽過ぎる第三者の介入により、動揺するひとつの家族。洋の東西を問はず、この手の裸映画に於いては麗しく定番の設定といへる。と同時に、今作がさりげなく優れてゐるのは、様々な問題を抱へた一家が、一回卓袱台を完全に引つ繰り返す荒療治により新たな安定状態を取り戻す。大らかに万事がセックスに直結する、範疇特有のデフォルト的傾向を差し引けば、実は実にホーム・ドラマ的にも全く定番の物語構造を採つてゐる点。それゆゑ一見すると沢田杏奈と井上あんりの綺麗処2トップが軽やかに牽引する、ポップなピンク映画といふ印象に止(とど)まりかねないが、よくよく吟味してみるならば、娯楽映画としての意外な安定感も誇る地味に堅実な一作。強ひて贅沢をいへば、オーラスの再起を果たす江崎家の風景に、実際には一人零れ落ちたまゆみも差し込み処遇を回収してあれば、大団円がより一層磐石なものとなつたのではなからうか、といふ贅沢は残る。

 真が聖花と情を交す現場に恒・栗子・新造が駆けつけ、一旦家族がそれぞれ持つ秘密が暴露されるクライマックス。シークエンスとしての手堅さについては先に述べた通りだが、ひとつ奇異に映つた点がある。床に臥せつてゐる筈の新造までもがその場に結構元気に現れてゐるどさくさ紛れに対しては、流れ的に当然の如く恒か栗子が、ツッコミを入れるべきポイントではあるまいかとも思へるのだが。


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