真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「セクシー変化 たまらない生尻」(2012/製作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手: 山田勝彦・広瀬寛巳/撮影助手:宇野寛之・玉田詠空・西野雪夫/編集助手:鷹野朋子/協賛:ウィズコレクション/出演:Maika・小滝みい菜・山口真里・なかみつせいじ・久保田泰也)。どうしてもクレジット終盤に力尽きる。
 自宅手洗ひの中で自身の検査結果に消沈する星野蹴(なかみつ)を、オーピー病院の女医・杉本みゆき(小滝)が訪ねる。みゆきは担当医ではなかつた―担当医でも夜中に白衣で患者宅には来んけどな―が、半年の余命宣告を喰らつた星野を慮りあれよあれよと事に及ぶ。のは、星野がそのまんまな店名の「コスプレ天国」から呼んだデリヘルの一幕。事後、星野が余命半年はネタではないことと、離婚したゆゑ数千万の生命保険の受取人が年老いた父親になつてしまつたことを仄めかすと、みゆきは商売女の相をかなぐり捨て現金に星野になびく。のはのは、已まぬ風俗遊びが祟り女房に逃げられたことに加へリストラ寸前であつたりもする、ろくでもない星野の懲りない方便。ところで、みゆきに話を戻すと小滝みい菜の化粧は厚いのも通り越して最早白い、殆ど白塗りだ。
 みゆきを篭絡しほくそ笑む星野は、児童公園に描かれた女陰マークを若干アレンジしたサークル―ママ激怒―に足を踏み入れ奇異に立ち止まつたタイミングで、CA姿の奇怪な女(Maika)と出会ふ。心許ない口跡を誤魔化す苦肉の策か、Maikaは片言の日本語で、自分は性病の蔓延を原因に性交渉の行はれなくなつた星から、地球の性文化を研究しに来た宇宙人であると仰天自己紹介。初めは、みゆきから金の匂ひを聞きつけたデリ嬢仲間かと早とちりしかけながらも、当然といふか何といふか「病棟に帰れ」とまるで取り合はぬ星野の、家にまで自堕落な勢ひでMaikaは押しかける。Maikaの名前は地球の言語では発音不能だとかいふことで、星野の初恋の人の名前を拝借し、Maikaはマキと名乗ることに。何だかんだでウィズ提供のセクシー衣装を適宜ふんだんに投入した上での、星野とマキの正しく奇妙な共同生活がスタートする。
 山口真里は滞る慰謝料の催促に現れる、星野の元妻・佐藤優子。この人も余命半年×生命保険にコロッと騙され復縁夫婦生活を終へたところに、みゆきも現れ油の注がれた火に、当然マキが止めを刺す。その際の、星野ことなかみつせいじの名台詞、「また面倒臭いの来ちやつたよ」が笑かせる。ところでところで、山口真里は山口真里で、申し訳ないが少し絞らないと胴回りがヤバい。肉感的の土俵を、完全に踵が割つてしまつてゐる。登場順は前後して、後述する女忍者に斬捨御免される可哀想な人はひろぽん。野外冬支度につき、円熟のTシャツ芸は不発。
 渡邊元嗣2012年第二作は、なかみつせいじ・ミーツ・異星人といふと、脊髄反射で想起されるのは「桃尻パラダイス いんらん夢昇天」(2008/主演:早川瀬里奈)の意外とSF的にも分厚いエモーション、ではあつたのだが。ナベシネマ前作「いんび巫女 快感エロ修行」(主演:眞木あずさ)に於ける三番手から一段飛ばしで華麗にビリングトップの座に躍り出たMaikaは、設定の衣に隠したお芝居は何処まで譲つてもたどたどしいのと同時に、本来大して属性を持ち合はせるものでは個人的にない昨今いはゆるアヒル口が、尺が進むにつれ次第に愛ほしくて愛ほしくて堪らなくなつて来もする辺りには、確かに映画の魔法が作用してゐはしよう。とはいへ、展開の雲行きをみるみる怪しくするのは、白のダウンベストに水色のパーカとバミューダ、更にピンク色のウィッグに、挙句にカチューシャでハートの二本角。だなどと凶悪に憎たらしい扮装で登場する久保田泰也が、B612星人と称してマキと宇宙人同士を気取り始めた時には、おいおいおい今回のナベシネマは大丈夫かよと本気で心配した。散発的ななかみつせいじの孤軍奮闘も虚しく、そのまま軌道が修正されることは何時まで経つてもないままに、渡邊元嗣の地力からいふと断じて“案の定”といふ言葉は当たらない筈なのだが、終にお話は右往左往に終始し欠片も片付きはしなかつた。互ひに徐々に情を移したマキと星野とのストレートな恋愛模様に、この星の上に居場所を喪失した星野が、マキの母星に憧れを馳せる。即ちネガティブなフロンティア・スピリッツと、持ち直しの契機は二本決してなくはなかつた反面、最後まで星野を半信半疑の状態から半歩前に進め、させなかつた、不用意なストイックさが素直なエモーションの喚起に禍したやうに思へる。私見では2006年終盤にナベ・ゴールデン・エイジの第二章に突入した渡邊元嗣が、結局斯くも始終を纏められなかつた散らかり、あるいは仕出かし具合も、相当久し振りにお目にかゝつたやうな気がする。

 そんな今作の白眉は星野の部屋にマキが転がり込んだ次の朝、出勤する星野を隠密行動だといふことでくの一にセクシー変化したマキが尾行する件。オフィス街をスーツの上から適当な上着を羽織りくたびれ気味に歩くなかみつせいじの背後少し離れて、およよおよよと覚束ない忍者走りでマイクロミニのくの一装束のMaikaがついて来るロング・ショット!馬鹿馬鹿しいことチープなことこの上ないが、こんな画を臆することなく渾身の力で撃ち込めるのも、渡邊元嗣を措いて果たして誰がゐよう。ナベシネマの清々しさに、腹を抱へつつ心の底から感動した。それにしてもなかみつせいじや周囲に見切れる通行人の格好から推し量るに、Maikaは大概寒かつたのではないか。渡邊元嗣は狙つたキュートさの為には、時に現場レベルでは結構非情な演出も厭はない、アイドル映画の鬼たる所以である。
 最後に、マキが持ち出す電子波動銃のプロップが、あれ何の玩具だ?決して知らないブツではないのだが、どうしても思ひ出せない。ディクテイターぢやないんだよな、古過ぎるよ。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (山口真里)
2013-02-03 03:51:51
胴回り太くてスミマセン
もう 30も後半なもので…
 
 
 
>山口真里様 (ドロップアウト@ピンクス無職)
2013-02-03 14:32:47
 御心配なく、粗忽者の管理人は不惑と書いてFUCKと読むも
 跨いで目下非大絶賛無職です、全然大丈夫。

 それと、この男はデス後は謹んで地獄に堕ちるので、お気になさらず。
 
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