真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「マイアミ・バイス」(2006/米/監督・脚本・製作:マイケル・マン/撮影:ディオン・ビーブ/出演:コリン・ファレル、ジェイミー・フォックス、コン・リー、ナオミ・ハリス、ジョン・オーティス、バリー・シャバカ・ヘンリー、ルイス・トサル、エリザベス・ロドリゲス、他)。
 南米の巨大麻薬コネクションへの危険極まりない潜入捜査に挑む、マイアミ警察特捜課(が、“マイアミ”の“バイス”)の二人の刑事を描く。80年代後半の伝説的TVシリーズは殆ど未見なので、今回は「マイアミ・バイス」の映画版リメイクといふことではなく、潔く新作アクション映画の一本として臨んだ。因みに、TV版「マイアミ・バイス」に於いてはマイケル・マンは製作だけで実は未監督。今作が、マンの「マイアミ・バイス」初監督作品である。
 TV版の「マイアミ・バイス」を一切考慮に入れずに観てみたところ、シリアス目の「バッド・ボーイズ」とでも思へば、まあ普通に観てゐられもするのではなからうか。ドラマは中盤、猛烈に中弛むが。ジェイミー・フォックスと危険な潜入捜査に挑むコリン・ファレルと、組織のトップの懐刀のコン・リーとの絡みは、丸々不要。ラストのドンパチ・シーンでのエモーションにも、恐らくはマイケル・マンが狙つてゐたであらう程には全く寄与してゐない。この部分を削ると、丸々二十分は切れる。
 「トラフィック」にでも向かうを張つたつもりなのか、それとも何某か大人の事情でもあるのかも知れないが、物語にリアリティーを与へるだとかの名目で、ウルグアイ、パラグアイ、ドミニカ、その他。矢鱈と中南米のあちこちでロケを張り過ぎ。プロダクションの無駄遣ひだ。ここも全部端折つて、浮かせた時間と予算とをドンパチに注ぎ込む。さうした方が、世間的な体裁や評論家連中のどうでもいい評価は兎も角、絶対に映画は面白くなる。コリン・ファレルが、コン・リーのあるかなきかの微妙な色香に何故か惑はされ、ミイラ取りがミイラになりかけるやうな物語は、どうしたところで大して高尚なものになる訳でもなからう。それならば、そこだけは本当に見応へがある、観てゐて恐怖すら覚えてしまふくらゐ迫力があるドンパチに特化した方が、潔い正解であるやうに思はれる。
 とはいへ、今作の最凶のウイーク・ポイントは、どうやらマイケル・マンは。殆ど全く映画をフィルムで撮る気が無いらしい。この期に改めていふやうなことでもないのかも知れないが。当人は観客に臨場感を与へられるつもりでゐるやうだが、HD(高解像度)ビデオ・カメラによる映像は、特に夜の実景が酷い。「コラテラル」(2004)の時にはそれ程気にはならなかつたから、技術的には後退してゐないか?今「コラテラル」を同じ劇場で再見してみた訳ではないので、ハッキリしたことは言へないが。コリン・ファレルが、コン・リーを乗せてパワーボートをマイアミからキューバにまで、昼間の海を走らせるシーンも木端微塵。ボートを上から撮ると、白いボートが太陽光を反射して、ピントを合はせようにもどうにも合はせられない。勿論、カメラマンがファインダーを覗いてゐる時点では合つてゐるのであらうが、出来上がつた映像からは、色が割れてピントが合つてゐないやうにしか見えない。
 雷にでも打たれない限り、マイケル・マンが考へを改めることもなからう。そろそろこの人の次の映画といふのは、パスする潮時なのかも知れない。

 後「マイアミ・バイス」。クールでスタイリッシュなアクション映画、としてプロモートするつもりのフライヤーの文面のダサさは、最早ギャグなのかと思へてしまふ程に必見である。


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