真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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エレベーター暴行魔/エク動戦
さ行
/
2023年04月12日
「
密室暴行魔 剥き出せ
」(1994『エレベーター暴行魔』の2000年旧作改題版/企画・製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:小渕アキラ/プロデューサー:高橋講和/撮影:紀野正人/照明:斉藤久晃/編集:金子尚樹/製作担当:堀田学/助監督:佐々木乃武良/音楽:伊東善行/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/撮影助手:塚園直樹/照明助手:新井豊/メイク:大塚春江/スチール:小島浩/現像:東映化学/出演:森田美保・摩子・本城未織・樹かず・真央元・平賀勘一)。
夫婦の寝室に俳優部先行でクレジット起動、夫の平賀勘一が床を離れる。タオカ?マサキ(平賀)が手鞄から、恐らく勤務先にでも届いた匿名の手紙を取り出す。粗いコラージュの、形式以上にぞんざいな文面は“妻道子犯した”、“女二人ウラ切り”、“お前笑ひ者”―原文は珍かな―とかいふもの。実に怪文書な怪文書を握り潰したマサキが眠る妻を見やり、道子も暗がりの中目は覚ます。職業婦人のサトミ(摩子)が颯爽と歩く、オフィス街の往来にスタッフ、自宅マンションのエレベーター扉に坂本太のクレジット。降りかけたサトミが、お面で顔を隠した暴漢に襲撃されるタイミングで暗転タイトル・イン。坂本太の急逝からかれこれ十一年、気づくと当サイトは享年に追ひ着いてゐた。
改めて、剥かれた勢ひで悩ましく躍る、摩子の乳房がエクストリームなエレベーター暴行。顔面面積の広さを際立たせる、アップの髪型は必ずしも似合つてゐないけれど。実は張形でしたのトリックで茶を濁すでなく、最後は顔に精を放ちお面レイパーは立ち去る。乗降口に倒れ込んだ、サトミのお胸で折り返す自動ドアがエモい。サトミはその体験を、飲食店を経営する友人・カオリ(本城)に相談。サトミとカオリは二年前、当時二人が好きだつたマサキが、矢張り共通の友人である道子(森田)を選んだ一般的な失恋に岡惚れを暴発。各々の男を駆り出し、マサキの眼前道子を凌辱させてゐた。こゝで、厳密には輪姦でなく後述するヒロシは、道子に挿れてゐない。サトミが疑ふマサキによる復讐を、カオリは否定。一件といふか立派な事件を経てなほ、マサキは道子と結婚した、ものの。以来マサキが不能であるのを、道子からカオリは聞き知つてゐた。どれだけ仲がいゝのか、それ他人にいふかね。といふ疑問はさて措き、更にもう一箇所、より本質的であるのやも知れない、神を宿しかねない些末。あとの二人は何れも昇降機に乗らうかとしたところ、中から出て来た暴行魔に犯されてゐるゆゑ、実際狭い箱の中で事が行はれるのは、二番手のみである。
配役残り、真央元は店も二人でやつてゐる、カオリの恋人・タカユキ。厨房の奥で佳境の二人を、客席側から抜く本城未織第一戦。複雑な動線の予想される、撮影部が如何に寄つて行くものかある意味固唾を呑んでゐると、いはゆる駅弁の体位で俳優部の方から近づいて来る、逆カメラワークには意表を突かれた、単なるフィックスともいふ。樹かずはサトミの彼氏・ヒロシ、数が途方もなさすぎて数へる気にもならない、神戸軍団ワンペアをマオックスと形成す。
エク動に未配信作が飛び込んで来た、坂本太1994年第二作、通算第三作。次作の「
若奥様《秘》宅配便
」(主演:赤木佐知)にも脚本を提供してゐる、小渕アキラのピンク参加は多分その二本きり、二つ以上名義を持つなら知らん。
密室暴行の連鎖は、果たして怨嗟が生んだのか。確かにマサキが勃たないタオカ家の夫婦生活―未遂―と、離婚すら検討しなくもない苦悩を、道子がサトミとカオリに告白する件まで盛り込み、兎に角マサキではない筈の、サトミに続きカオリもレイプした暴行魔の正体や如何に。要は<
マサキがエレベーターの中で回春を遂げた
>、腰も砕ける馬鹿馬鹿しさと紙一重の、力業で捻じ込む底の抜けた大団円。を大人しくか臆面もなく振り抜いてみせれば、まだしもそれはそれでそれなりに、始終が落ち着きもしたものを。何れにせよ最初、もしくは二年前の凶行に関して、マサキにサトミとカオリを告発したコラテラル、もといコラ手紙の主は誰なのよといふ、豪快な謎が依然放置されるにせよ。
にも、関らず。よもやのまさか、締めの濡れ場から一転、道子が居間にてうたゝ寝から覚める。驚天動地なり急転直下―もしくは垂直落下―の夢オチ風カットから、ホラーでありがちな無限イマジンに雪崩れ込む。藪蛇なオーラスで逆の意味で見事に、劇映画としては木端微塵に爆散した印象の強い、といふか感触しか残らない。反面、撮りやうによつて超絶美人にも、壮絶な馬面にも映る。ニュートラルな姓名でその他活動の痕跡を追ひやうのない主演女優が、摩子に正しく勝るとも劣らないヤバいオッパイを誇り、“最も美人の三番手”、本城未織(a.k.a.林田ちなみ)が最も得意とする位置をガッチリ守る女優部は盤石にして完璧。平勘に重たいあるいは暗い芝居が比較的柄でない点にさへ目を瞑ると、介錯する男優部も手練れを揃へ、三番手ですら二回戦。ビリング頭二人は堂々と三戦づつ―正確には二番手はプラス0.5戦―戦ふ、頑丈な絡みが矢継ぎ早に繰り出され続ける、終始高いテンションを保つ裸映画的には全く以て申し分ない。エクセスこゝにありを叩き込む、フラッグシップ的な一作。四の五の小癪な能書なんぞ垂れず、黙つて女の裸に滾れ。さういふ姿勢も時に、あるいはさういふ態度こそピンク映画には必要なのでなからうか。
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