真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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やくざ観音・情女仁義
か行
/
2019年01月12日
「
やくざ観音・情女仁義
」(昭和48/製作:日活株式会社/監督:神代辰巳/脚本:田中陽造/企画:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:川原資三/録音:高橋三郎/照明:高島利隆/編集:岡安肇/音楽:あがた森魚/助監督:海野義幸/色彩計測:田中正博/現像:東洋現像所/製作担当者:古川石也/出演:岡崎二朗・安田のぞみ《新スター》・絵沢萠子・丘奈保美・坂本長利・松山照夫・高橋明・薊千露・永井鷹男・宝京子・五條博・中平哲仟・田畑善彦・橘田良江・水木京一・溝口拳・吉野あい・北上忠行・氷室政司・小見山玉樹・谷文太・吉田朗人・佐藤了一・庄司三郎・山岡正義・賀川修嗣/刺青:河野光揚/技斗:田畑善彦)。出演者中、宝京子以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
見世物小屋の口上と、パーマ頭に鼻髭を蓄へた精悍な顔立ち、JAC(現:JAE)感溢れる旅の僧・雲水嵐雪(松山)が川に釣り糸を垂れる。仏の御心か、雲水が釣り上げたのは臨月の土座衛門(多分宝京子)。念仏を唱へかけ、胎児はまだ生きてゐるのに気づいた雲水は、男児を取り上げる。二十三年後、阿弥陀寺に預けられ成人した清玄(岡崎)の、滝行の画にタイトル・イン。明けて「おおい清玄、女を買ひに行かう」と捧腹絶倒の本篇開巻パンチをカマすのが、我等がコミタマことロマポの座敷童・小見山玉樹、ピンクの妖精が広瀬寛巳。庄司三郎も格子越しに見守る中、観音様と出生を茶化した生臭坊主(小見山)をシメる清玄を、窘める阿弥陀寺の庵主・阿闍梨(賀川)曰くに「クソだよ、仏とはクソだ」。禅問答が、パンクの領域に突入する。引き続き汲み取りに従事する清玄挿み、安田のぞみを乗せた車のハンドルを握る五條博が、「後ろ走つてるのは藤原興業の車ぢやないですか?」。土着の斉田組組長の一人娘・斉田美沙子(安田)が、五條博をお供に母親の三回忌で阿弥陀寺をお参り。そこを斉田組と対立する新興の藤原興業の、桃井か百井(溝口)・風間(不明)・ヒデ(中平)が襲撃。美沙子を拉致しようとする桃井らと、肥桶を担ぐ清玄が鉛と糞の銃撃戦。一旦撒いたところで、お礼にと美沙子が清玄に膳を据ゑる十三分半、遅れ馳せるにもほどがあるクレジットが漸く起動。事後美沙子の父親が、斉田組組長・斉田清明であると聞かされた清玄は絶望する。二十三年前、清明が手をつけた通ひの女中・チヨコ(が土座衛門)を、美沙子の母である本妻(遺影も見切れず)は川に突き落とす。チヨコは死にながらも雲水に取り上げられたのが、清玄即ち美沙子の異母兄であつたのだ。「お仕舞ひだ」、「私の中の仏が死んだ」と捨て鉢になつた清玄は、因縁をつけるべく再び現れた桃井らを手鎌で返り討ち。右手を手首から落とされたヒデが、まんまフック―船長―化して後半再登場するのには驚いた。
辿り着ける限りの膨大な配役残り、永井鷹男は、斉田組若衆頭の中谷、美沙子とは男女の仲。田畑善彦は、美沙子を訪ねた門前、清玄と悶着になる斉田組の衆。そして坂本長利が、兄妹の父親・斉田清明。清明が美沙子に衝撃の事実をサクッと告げたのち、超絶唐突なものの弾みで右目を失明する件にも度肝を抜かれた。結論を先走ると、抜かれてばかりの映画ではある。気を取り直して絵沢萠子は、彷徨する清玄と懇ろになる、民謡酒場「満月」のホステス・多恵。そして張りのある発声が映える高橋明が、彫師(矢張り不明)の下で菩薩を背負つた清玄とミーツする、藤原興業組長・藤原銀三。丘奈保美は、藤原興業に草鞋を脱いだ格好の清玄が抱く芸者。満月にて、清玄が斉田清明を射殺する一幕。組長の傍らに控へる清水国雄は恐らくクレジットレス、変名臭い謎名義も見当たらない。a.k.a.恵千比絽の薊千露は、美沙子の幽閉先を教へたのに清玄にブチ殺される、斉田邸の現女中・友子。シャワー中に襲はれ一貫して全裸―with前貼り―での出演、これぞ裸一貫、
黙れ
。ヒデのフックを装ひ、藤原邸も襲撃した清玄に瞬殺されるのは佐藤了一。最後に吉野あいが、助けた瀕死の清玄に凌辱されるおさげ髪の少女。事後水面に散る花弁がありがちな破瓜のメタファーかと思ひきや、大量に数が増えるゆゑ死かもと面喰ふ。見れば判る筈の水木京一を、ロストしたのは重ね重ね残念無念。
尺が八十四分もある、神代辰巳昭和48年第三作。ポスター全面を飾るのみならず、本来ならば裸映画のビリング頭に意表を突き飛び込んで来る岡崎二朗(東映から日活に移籍するも、ロマポ路線に厭き杯を返す)の、絡みは正直アップアップ。妹と乳繰るため破戒を通り越した破滅僧が最終的には二つの組を壊滅させるに至る破天荒な物語は、どちからかといはずとも裸映画どころかオーバーキル系のアクション映画。確かに所々では絵画的かつ叙情性の爆裂するショットも抜きつつ、絵具みたいに赤い血糊をジャブジャブ使用するインパクト勝負の、支離滅裂スレスレにガッチャガチャな展開でショッキングなシークエンスを連ね倒すに終始する一篇は、頭に三角マークをつければそのまゝ通るやうにしか映らない。寧ろ、コミタマとサブが辛うじて今作を、日活に繋ぐとさへいへるのかも。死体の山を築いてなほ飽き足らないラストも大概なのだが、清玄が美沙子をシャブ漬けにした藤原の首に、ゴロンと断頭するまで連射を撃ち込むのには流石に頭を抱へた。面白い詰まらないでいへば闇雲に面白くはある、本隊ロマポに毒々しく狂ひ咲いた徒花と目して宜しいか。名作と世評は高い昭和52年第一作「
悶絶!!どんでん返し
」(脚本:熊谷禄朗/主演:谷ナオミ・鶴岡修)と二本きりしか観てゐない上に、悶どんはサッパリ理解出来なかつた与太者につき、神代辰巳を如何に評したものか未だといふかこの期にといふか、兎も角完ッ全に手探り。
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