チムどんどん「明石通信」&「その後」

初孫との明石暮らしを発信してきましたが、孫の海外移住を機に七年で区切りに。現在は逗子に戻って「その後」編のブログです

2011甲子園熱球譜-あとがき

2011-08-22 09:50:22 | スポーツ観戦等
8月22日(月)

 夏の甲子園が終わるのに合わせて、急に秋の気配が漂って来た感じになりました。

 終わってみれば、優勝候補筆頭の日大三高が順当に頂点に上りつめた大会でしたが、前々回の記事で触れたように、今年は波瀾続きと言うか、負けた気がしない無念さで甲子園を去って行った球児が多かったような気がしてなりません。


 その始まりは開幕ゲームだったのかもしれません。

 今治西が8回まで6-4でリードをしていましたが、9回表の土壇場で健大高崎が連打で3点をもぎ取り逆転、そのまま7-6で逃げ切りました。
 終盤の逆転劇と言うと、9回裏のサヨナラとか延長での点の取り合いを想像しますが、今年はどうも様相が異なりました。終盤の表の攻撃でのドラマです。

 今大会最も印象的な結末になったゲームが二回戦の帝京高校-八幡商業。
 優勝候補の帝京の前に8回まで2塁も踏めなかった八幡商業が9回表に3連打と失策で1点を返した後に満塁ホームランが飛び出して大逆転。そして狐につままれたような茫然とした感じで進んで行く9回の裏・・・、そして終了を告げるサイレン。

 実は、その三日前の平安高校-新湊高校の試合もちょっと似た流れだったのです。前の記事で触れたとおり、この試合は球場にいたのですが、とにかくものすごい盛り上がりの新湊への大声援。バックネット裏からアルプス席までファンに埋めつくされたかのよう。この声援に押されるように、新湊は1-1で迎えた終盤の8、9回表に見事な攻撃で3点取って逃げ切りました。

 新湊が平安を下した試合が伏線になっていたのかどうか、今年はどうも先攻めのチームが波瀾を起こしそうと実感したのが、二回戦の横浜高校-健大高崎戦でした。
 横浜が序盤からそつのない攻撃で5点リード。ところが6回表に健大高崎が連打で一挙に同点にしてしまったのです。この試合はそのまま延長戦にもつれ込み、なんとか地力に勝る横浜が振り切りましたが、下馬評の高い後攻めのチームが先攻めのチームの猛攻に会うという展開となりました。

 そしてその翌日に、名将と言われる百戦錬磨の監督をして「あまりにも残酷な結末」と言わしめた先述の試合があり、帝京高校が敗退したのです。

 スポーツの世界では、最後に勝敗を分けるのは精神力ということになりますが、野球の世界でも、勢いに乗るのも相手の勢いを止めるのもやはり精神力です。どこかにスキがあるとつけ込まれ、悪い予感を抱いたりすると、よもやの敗退ということになりかねないのです。

 9回表の奇跡のドラマは一度ではありませんでした。信じ難い苦渋を味わったのが三回戦の横浜高校のナインでした。
 4-1と3点リードで迎えた最終回の9回表。なんと智弁学園に一挙8点も取られってしまったのです。
 もちろん、後攻めの横浜高校の選手たちの心の中に「先攻のチームが終盤に大反撃をする」という暗示があったとは決して思いません。
 しかし、甲子園は不思議な所なのです。満員の大観衆の多くが「今年はこういうドラマが起こっている。そういう傾向がある」と知っていて、それを期待したり不安に思ったりしながら見つめているのです。そして、その空気が喚声やどよめきの中から確実にそして不気味に流れて来るのです。

 何の打算もなく純粋に勝利に向かって目の前の白球に集中している選手に襲いかかってくる、なんとも言い難い大観衆のざわめき・歓声・悲鳴。
 得体の知れない空気が9回表の智弁学園先頭打者のセンター前のヒットで頭をもたげ始めたのです。忍び寄る負の暗示を振り払うべく、名将の監督が機先を制して投手交代の策に出ましたが、その魔力を押さえ込まんとする力づくの策が逆に裏目に出て、怪物はさらにその力を発揮せんとする勢いで襲いかかって来てしまいました。結果は、その得体の知れない魔力に押しつぶされたかのような形に。

 その三日後、準々決勝で今度はその智弁学園が1点リードの9回表に作新学院に逆転を許して敗退してしまいました。

 勝負どころで流れて来る不思議な空気。それに乗じて勢いを得るのも、その流れを断ち切るのも、勝者には欠かせない精神力ということになるのですが、一方に流れを呼び込む力があれば、それを断ち切るほうがはるかに難しいのです。


   腑に落ちぬ思いも乗せて夏果てぬ  弁人


 プロ野球選手も興味深く高校野球に目を向けていますから、もしかしたら、こんな状況が伝染してしまったのかもしれません。
 先週、とんでもないゲームが二試合ありました。初回に8点取ったベイスターズがヤクルトの反撃に会って最後は10-10の引き分けに。同じように、2回に8点先制したロッテに日本ハムが追いすがり9-9の引き分けになった試合です。
 「何が起こるかわからない」という暗示に、追い付いたほうはうまく乗っかり、追い付かれたほうはその暗示を振り切れなかっということでしょう。

 さて、優勝した日大三高。二回戦で島根の開星高校相手に、序盤の5点リードを守れず一度は逆転されましたが、その裏の攻撃でその6点を一挙に奪い返しました。三回戦でも智弁和歌山に5点のリードを1点差まで詰め寄られましたが突き放しました。得体の知れない流れをものともしない精神力。やはり強い。納得です。


 球場で見た心に残る試合。準々決勝の光星学院-東洋大姫路です  
  
 やはり、先攻のチームが追い付いて逆転した試合ですが、こんな好ゲームもあったということで。

 東洋大姫路の原投手。大会屈指と言われる剛速球とスタミナを兼ね備えた何人かの投手には及ばないかもしれませんが、非のうちどころがないきれいなフォームに、兵庫県予選の時からすっかり魅了されてしまいました。体格もスマートで雰囲気も抜群です。その原君、甲子園でも実に爽やかに3試合マウンドに立ってくれました。
 最初の2試合はテレビ観戦でしたが、上の写真の準々決勝の光星学院との試合、彼の晴れ舞台での投球を一試合ぐらい生で見ておきたいと早起きをして球場に行きました。
 相手は強打の光星学院。おそらく打ち込まれてしまうだろうと思って見ていましたが、とうとうタイムリーヒットを一本も打たれずに投げ切ってくれました。失点は2点とも3塁に走者を置いての内野ゴロの間に入ったもので、まずまずの投球。

 コントロールは抜群。ストレートは140キロ半ば。3試合目の敗退ということで、幸い炎天下での連投も避けられました。でも県大会の決勝で15回投げて、翌日の再試合も完投しています。ここは肩を十分に休めて、下半身をしっかりと作って、もう少し球速を伸ばして、上のレベルでの野球で活躍してほしいものです。あのダルビッシュだって、高校生の時は今よりずっとスマートな体格だったのですから。

 好投手目白押しの甲子園でしたが、プロが注目する投手の中で、おそらくイチオシは香川英明高校の松本君でしょう。彼はタイガースがリストアップするそうですが、原君には鯉のぼりが似合いそうな感じもしないわけではありません。


    白球を投げ込む頬に汗きらり  弁人

コメント
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