桜バトンは、アンカーのひとつ前。
今年も「風のゆうびんやさん」が(臨時アルバイトをおおぜい雇って!)大量のちっちゃな桜色の葉書をそこらじゅうに配ってまわり、そのうちの何枚かは猫にくっついて部屋の中まで入ってきた。
毎朝、起きて窓の外を見るたびに、緑の量が倍に倍に増えていくようでびっくりする。
何年暮らしていても、このびっくりする感じは変わらない。
せっせと猫毛をあつめに来ていたヤマガラとシジュウカラが、姿を見せなくなったと思ったら、高い木の上で「ツーピーツーピーツー」とのびやかにさえずる声がする。もう巣作りを終えて、奥さんは卵を抱いているのかもしれない。
鳥のさえずりを、これまで「なわばり宣言+嫁さん募集キャンペーン」というふうに漠然ととらえていたけれど、ヤマガラたちをみていると、巣箱が決まり、内装工事が終わり、メスが抱卵に入るころ、ひまになったオスがさえずり始める…ような気がする。
(しっかり確認したわけではないので、「気がする」だけです)
もしそうだとすれば、この「ツーピーツー」は、誰に何を知らせているのか。
外に向かっては「ここ、うちの庭だから。もうじき子ども生まれたら、このへんで餌を採るんで、よろしく」と。
巣にこもっている嫁さんには「だいじょうぶだよー、ボクがここで見てるからねー」と。
そんな感じでしょうか。
<追記>
シジュウカラに関する本を読んだら、繁殖シーズンの初めにさかんにさえずり、巣作りが始まると鳴かなくなる…と書いてあった。
うーん、やっぱり、そう?
鳥類学者が言うんだから、そうなんでしょう。
じゃあ、いまごろ鳴いてるのは、出遅れたシングル男子ばかりなの?
桑の花に、
ぐみの花。
コナラの花。長く垂れ下って見えるのは♂花。
どんな木でも、ひらいたばかりの新芽は柔らかくて可愛い。
早く咲いた山桜は、もうすっかり葉桜に。
今年もヒメハギさんに会いに行く。
昨年の場所から3メートルほど横にずれてたけど、健在でした。
ヒメハギのほか、スミレ、ハルリンドウなど「背の低い紫系の花」を毎年見られるのはとても嬉しい。しかし、こういう花が増えたといって、単純に喜んではいられない。
つまりこれは、鹿が黄色と黄緑色のものを優先して食ってしまった結果、残ったものが相対的に目立っているという状況だからだ。
柵の外には見渡す限りタンポポやノゲシなど黄色い花はひとつも咲いていないし、斜面にいっぱいあったヤクシソウも見なくなって久しい。
それでも、スイセンとシャガの葉が、この春はまだ食われた形跡がないので、昨年からMが山の中にコツコツ作っている(万里の長城プロジェクト!)鹿柵の効果があらわれてきたのかもしれない。
クマガイソウ。
この名の由来は、平家物語の熊谷次郎直実…が背中にしょってる母衣(ほろ)に似ているから。
近縁種にアツモリソウ=平敦盛もある。
ということは前に書いたと思うけど、絵を見たら確かに似ていて、名付けた人のセンスは素晴らしい。
歌川国貞「熊谷次郎直実と無官太夫敦盛」(1850年)
手前が熊谷さんで、むこうにいるのが敵方の敦盛。
母衣の用途は、矢をよけるためとか、身体を大きく立派に見せるためとか(クリノリンを入れたりもした!)、遠目に誰だかわかるよう目印にしたとか、いろいろあるらしい。
武者絵というのは、現代のガンダムみたいなもので、あれもこれも盛りに盛って華やかにしてあるんだろうと思うけど、鎧兜のフル装備で、太刀持って弓矢持って、その上こんなパラシュートみたいなものまで背負ったら、馬に乗り降りするだけでも一苦労ではないかしら。向かい風では難儀しそうだし。
ちなみに、クマガイソウのような袋状の花をもつランのなかまを、英名では lady's slipper (貴婦人のスリッパ)というそうで、いかつい武将とはえらい違いである。
本日の亀さん。
花びらまみれ。こっちは平知盛というか、なんというか。