ナンキンハゼの水玉。
近隣の山の農園で、ナンキンハゼの木が大繁殖して困り、重機で根こそぎ抜いている…という話を聞いた。
紅葉の美しいナンキンハゼは、わが家のそばにも(ぎりぎりお隣の土地)大きなのが1本あり、庭にも小さいのが2本ある。どちらも植えたものだ。
大きいほうは、秋にたくさんの実がつくけれど、落ちた実から芽生えたものは見かけたことがない。植木鉢にまいた種も、発芽率は高くなかったし、そんなに繁殖力が強い植物だとは思っていなかった。
不思議なことが2つある。
ナンキンハゼは街路樹や公園などによく植えられるけれど、中国原産で、もともと日本には自生しない。それがどうして山の中に生えているのか。
そして、どうしてそれほど大量に増えたのか。
冬に、ナンキンハゼの実を小鳥(カワラヒワ?)が熱心に食べているのを見た。種子の外側の白い脂肪分をくちばしでちびちび削り取るようにして食べていた。
ヒヨドリ、ムクドリ、キジバト、カラスなども、この実を食べるそうだ。ヒヨドリ以上の大きさの鳥なら、ちびちびでなく、丸のみかもしれない。かたい種子は消化されず排出される。
もしかしたら、農園の裏山は、冬にカラスか何かの集団ねぐらになっていて、彼らがあちこちから種子を持ち帰ってきたのではないだろうか。
調べると、ナンキンハゼは日照を好み、日あたりが悪いと発芽しないそうだ。樹木におおわれた山の地面は日があたらない。だから、種子がたくさん落ちたとしても、そんなにわんさと芽が出るわけではない。出ても日照不足でじきに枯れてしまう。
ところが、ナンキンハゼの種子は、条件が良くなるまで数年間は土の中で「待つ」ことができる、というのだ。
農園のある場所は、もとはみかん山だった。地主が高齢でみかん栽培に見切りをつけたあと、若い人が引き継いで養蜂を始め、周囲の雑木を切り払って、蜜源となるレモンの木などを植えている。
木を伐ったので地面に光が届くようになり、たまたまそのタイミングがよかったのだろう。待っていた種子が一斉に発芽した。
さらに一役買っているのが、鹿だ。
木を伐ると、そのあとにどっと草が生え、さらに小さい木が生える。それらを鹿は喜んで食べる。たいていの植物(人間には有毒とされている水仙や彼岸花も含め)を鹿は平気で食うけれど、ナンキンハゼはなぜか食わない。(だから奈良公園はナンキンハゼの紅葉の名所になっているらしい)
つまり、これは、人間と鹿が共同でナンキンハゼを育てているようなものではないか。
ナンキンハゼは根が横に張る性質があるし、大木になれば下は日陰となってしまうから、農業には邪魔モノでしかないだろう。でも、夏に咲く花には、びっくりするほど多くの虫が集まる。蜜蜂にとっては絶好の蜜源になるはず。養蜂園でこれを駆除してしまうのは、他人事ながら、もったいないんじゃないかなあと思う。
ナンキンハゼに限らず、外来植物は自然の生態系を壊すという理由で、駆除に躍起となる人がいるけれど、外来というなら古くは梅だって大陸から渡来したのだし、野菜、果物、花壇に植える園芸植物のほとんどがすでに外来種で占められている時代だ。
そもそも国境なんて、ヒトが勝手にひいた図面上の線にすぎないんだから、誰かが気まぐれでひょいとひき直せば変わってしまう、その程度のものなのだ。そう考えれば、在来も外来も、たいして意味をもたない。ヒトの支配する場所では、ヒトにとって有用なものは残り、無用(あるいは有害)なものは淘汰されて消えていく。それを「共存」と呼ぶのは、もちろん言葉をもつヒトの側だけで、むこうが何と思っているかはわからない。
本日の「いいね!」
砂漠の夜の夢
旅する画家ayakaさんのアニメーション作品。
おまけ。
「夏への扉」映画化
日本の映画はほとんど見ないのですが、ピートファンとしては、ちょっと期待しようかな。
(だけど、原作は「伝説」じゃないでしょ? いまでも普通に読めるでしょ?)