副題が『カエサルとクレオパトラの物語』になっているのは看板に偽りあり、パトラの出番はそんなにはありません。エジプトにポンペイウスを追ってきたカエサル、しかし彼の首を見せられて嘆き、犯人たちへ怒る。
パトラはカエサルに、神々の意志を盾にして迫ります。カエサルはロリ趣味ないので、やせっぽちの体を抱くことは正直苦痛、なんて描写があります。たいていクレオパトラは小柄で豊満なイメージがあると思うのですが、マクロウのこの設定はけっこう意外。
荒れた街を見て、神殿を再建しようと熱心に言うパトラに対して、まず市民の食と住まいが先だ、とアドバイスするカエサル。根っからの王族でどこか感覚のずれたクレオパトラ、こういう描き方は私は嫌いじゃありません。ここではカエサルxパトラというよりも、パトラ→カエサルといった感じで、彼女のほうが断然のぼせています。簡単にカエサリオンをつくってしまって、あとで彼女は妹をつくってめあわせなければと思うけど、ローマ人のカエサルにとっては、自分の子同士の結婚なんておぞましいからつくらないように留意します(どうやって?)。暗殺のあと、念願かなわず身ごもらなかったパトラは、プトレマイオスかユリウスの血の男を捕まえて子を産もうと計画。オクタヴィアヌスに狙いをつけて招待しようとするが、物見遊山の旅をする気はないと拒否される。まー朴念仁!と思ってほかを考えるのでした。・・・・・・なるほど、これがあとでアントニウスにはしる動機に結びつくのですな。あれだってユリウスの血縁者だし。
この本の半ばでカエサルは暗殺されて、後半はオクタヴィアヌスが主人公となります。バカのくせにしゃしゃり出てくるアントニウスと張り合いながら、見かけと遠いしたたかさで立場を固めていく。暗殺犯たちを一掃して、アントニウスとの次の戦いを腹におさめている時点で幕。後書きで、「ここで終わらないと永遠に終われない」と書いてますが、塩野さんのように対アント&パトラ戦の勝利までやってくれてもよかったのに。
美貌の描写は相変わらずです。
、「そして彼の華やかな髪の房!「豊かな髪」を意味する「カエサル」なんて名前の男にとって、頭の薄くなっていくことは良からぬ運命だ。彼は髪を失わないだろう、父親のたてがみを受け継いでいるならば。彼の父と私はいい友だちだった、だから、オクタヴィウスが私の姪と結婚したときは嬉しかったものだ」
「豊かな、軽く波打った黄金の髪を少し長くして、唯一の欠点である耳を隠している」 「眉毛と睫毛は濃い色」 「明るい輝く灰色の目」は温かみがあるが、心のうちをのぞかせていない、とか、胸板や肩の細さに不安を感じて、エジプトから連れてきた医者に相談しようとかカエサルは思ってます。情事相手の女たちに対して根が薄情らしいですが、少なくともオクタに対しての心遣いは本物に思えます。そしてここでは、オクタの側からもカエサルへの崇拝は激しいです。だからこそ、暗殺犯たちへの憎悪も激しくなるのですが。そしてクレオパトラに対しても、カエサルを取られたみたいに感じて嫉妬する。エジプトの神々が動物の頭をしていることにひっかけて「獣の女王」なんて呼んでます。
心配性な母アティアの反対を押し切って、スペイン遠征中のカエサルのもとに赴いたオクタは、ここで受付(?)にいたアグリッパと対面する。(意訳)男らしくて軍人らしくてカッコイイ!と思うオクタ、アグのほうでは「アレクサンドロスタイプだ」と思う、「彼の語彙では、男に美しいという表現はなかった」。この作品でも、アグは世話焼きな役どころです。あとで、対ブルートゥスの時期、船酔いで弱ってる状態のオクタを、兵たちに対して、「彼が災いを身に引き受けているから我々は酔わずにすんでいるんだ」とうまいことだまくらかしてくれたりする。頼もしい奴です。
この話で一番のかわいそう大賞は、ペディウスでしょう。二十歳にもなっていないのに強引に執政官になったオクタ、身内のペディウスを同僚に選ぶけど、彼はそもそも気乗りしてなかった。粛清の企てに怯えて反対するけど逆に脅されて自殺する。そしてキケロを始めとする多くの犠牲者。こういう展開のあとなので、上流夫人たちからの税の取立て案が、ホルテンシア率いる婦人たちのデモンストレーションによってつぶされたというエピソード(塩野さんの『ローマ人への20の質問』で紹介されてる話ですね)はむしろ息抜きに見えます。
パトラはカエサルに、神々の意志を盾にして迫ります。カエサルはロリ趣味ないので、やせっぽちの体を抱くことは正直苦痛、なんて描写があります。たいていクレオパトラは小柄で豊満なイメージがあると思うのですが、マクロウのこの設定はけっこう意外。
荒れた街を見て、神殿を再建しようと熱心に言うパトラに対して、まず市民の食と住まいが先だ、とアドバイスするカエサル。根っからの王族でどこか感覚のずれたクレオパトラ、こういう描き方は私は嫌いじゃありません。ここではカエサルxパトラというよりも、パトラ→カエサルといった感じで、彼女のほうが断然のぼせています。簡単にカエサリオンをつくってしまって、あとで彼女は妹をつくってめあわせなければと思うけど、ローマ人のカエサルにとっては、自分の子同士の結婚なんておぞましいからつくらないように留意します(どうやって?)。暗殺のあと、念願かなわず身ごもらなかったパトラは、プトレマイオスかユリウスの血の男を捕まえて子を産もうと計画。オクタヴィアヌスに狙いをつけて招待しようとするが、物見遊山の旅をする気はないと拒否される。まー朴念仁!と思ってほかを考えるのでした。・・・・・・なるほど、これがあとでアントニウスにはしる動機に結びつくのですな。あれだってユリウスの血縁者だし。
この本の半ばでカエサルは暗殺されて、後半はオクタヴィアヌスが主人公となります。バカのくせにしゃしゃり出てくるアントニウスと張り合いながら、見かけと遠いしたたかさで立場を固めていく。暗殺犯たちを一掃して、アントニウスとの次の戦いを腹におさめている時点で幕。後書きで、「ここで終わらないと永遠に終われない」と書いてますが、塩野さんのように対アント&パトラ戦の勝利までやってくれてもよかったのに。
美貌の描写は相変わらずです。
、「そして彼の華やかな髪の房!「豊かな髪」を意味する「カエサル」なんて名前の男にとって、頭の薄くなっていくことは良からぬ運命だ。彼は髪を失わないだろう、父親のたてがみを受け継いでいるならば。彼の父と私はいい友だちだった、だから、オクタヴィウスが私の姪と結婚したときは嬉しかったものだ」
「豊かな、軽く波打った黄金の髪を少し長くして、唯一の欠点である耳を隠している」 「眉毛と睫毛は濃い色」 「明るい輝く灰色の目」は温かみがあるが、心のうちをのぞかせていない、とか、胸板や肩の細さに不安を感じて、エジプトから連れてきた医者に相談しようとかカエサルは思ってます。情事相手の女たちに対して根が薄情らしいですが、少なくともオクタに対しての心遣いは本物に思えます。そしてここでは、オクタの側からもカエサルへの崇拝は激しいです。だからこそ、暗殺犯たちへの憎悪も激しくなるのですが。そしてクレオパトラに対しても、カエサルを取られたみたいに感じて嫉妬する。エジプトの神々が動物の頭をしていることにひっかけて「獣の女王」なんて呼んでます。
心配性な母アティアの反対を押し切って、スペイン遠征中のカエサルのもとに赴いたオクタは、ここで受付(?)にいたアグリッパと対面する。(意訳)男らしくて軍人らしくてカッコイイ!と思うオクタ、アグのほうでは「アレクサンドロスタイプだ」と思う、「彼の語彙では、男に美しいという表現はなかった」。この作品でも、アグは世話焼きな役どころです。あとで、対ブルートゥスの時期、船酔いで弱ってる状態のオクタを、兵たちに対して、「彼が災いを身に引き受けているから我々は酔わずにすんでいるんだ」とうまいことだまくらかしてくれたりする。頼もしい奴です。
この話で一番のかわいそう大賞は、ペディウスでしょう。二十歳にもなっていないのに強引に執政官になったオクタ、身内のペディウスを同僚に選ぶけど、彼はそもそも気乗りしてなかった。粛清の企てに怯えて反対するけど逆に脅されて自殺する。そしてキケロを始めとする多くの犠牲者。こういう展開のあとなので、上流夫人たちからの税の取立て案が、ホルテンシア率いる婦人たちのデモンストレーションによってつぶされたというエピソード(塩野さんの『ローマ人への20の質問』で紹介されてる話ですね)はむしろ息抜きに見えます。