レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『大奥』2巻

2006-12-10 17:28:27 | マンガ
 去年出た1巻は、世間でも大評判だった。ベストセラー入りした少女マンガの中で、私も買った珍しい作品。
 江戸時代の初期、若い男だけかかる奇病が猛威をふるい、男の人口が激減。働き手の中心は女になり、婚姻制度は崩壊、婿をとるのは一部の特権となる。そんな中で「大奥」のみ、一人の将軍(女)に「美男三千人」の後宮を抱える特権世界となっていたーーという奇想天外な設定。
 1巻は、そういう大奥に飛び込んだ貧乏旗本の息子の奮闘、そして、新将軍吉宗(女)はなぜこの国がこういう有様になったのかその歴史をひもとこうとするというところまで。
 2巻は、時代を遡って、3代将軍の時代。実は家光は例の病で死んだが、春日局の裁量でそれは伏せられ、家光が町娘をてごめにして生ませた娘を男装させて身替りに立てた。少女・千恵はただ「上様」として城に閉じ込められる身になる。そして、春日のたくらみで無理矢理還俗させられた美貌の公家の息子は「小姓」として仕えることになり、「お万」と呼ばれる。
 家光が美しい尼僧を寵愛したことは事実で、細かい点で史実を押えている点も興味深い。働き手の男が死んで、否応無く女たちが労働を担うことは、戦争の際にもあったことでリアル。何重にもねじれた性別役割の世界で、強いられた男装の美少女将軍と、元僧侶の美青年の恋を、そしてそれが後世に残したひずみ(たぶん)を、BL作家でもあるよしながふみがどこまで見せてくれるだろうか。
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