レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

レックバリ『悪童』

2011-03-24 13:30:26 | 
 集英社文庫から出ているスウェーデンのミステリー「エリカ&パトリックの事件簿」シリーズの第3弾。
 スウェーデンの海辺の町で、作家のエリカと刑事のパトリックが出くわす数々の殺人事件と共に、様々な人間模様が描き出される。
 エリカは産後まもなく、育児ノイローゼ気味。「ママ友」のシャロットの娘の遺体があがり、殺人事件としてパトリックがその捜査にあたる。シャロットの母と隣人との執拗ないがみあい、シャロットの夫である医師ニクラスにも父との確執がある。
 各章の冒頭に置かれている過去話、甘やかされた令嬢アグネスが、本編にどうからんでくるのかという関心が今回はたいへん強かった、もっと言えば、この最悪な女にいつ天罰が下るのかという期待!
 --ほんと、フィクションにおいて私の出会った女たちの中で、あぜんとするほど道徳心のカケラもない、「悪女」などという言葉では足りないワースト3は、『エデンの東』(原作)のアロン&キャルの母ケイト、『ローマ』におけるアティア、そしてこの『悪童』のアグネスである。 キライというレベルとはまた違う、凶悪女ども。
 (ついでに言えば、嫌いな女は、チョーサー『カンタベリー物語』の『学僧の話』のグリゼルダ、『狭き門』のアリサ、だいぶニュアンス違うけど永井路子『茜さす』の山城楓である)

 ところで、読んでいてヘンに思ったのは、エリカに対するパトリックの言葉遣い。「おまえ」「俺」? 前作までは「君」だったような気がするんだが。--訳者が変更になってるんだな。アマゾンで見ると、1作目の読者レビューで翻訳が読みにくいという感想がいくつもあった。そのせいだろうか。でも、言葉遣いには統一が欲しいものである。かつで『修道士カドフェル』が、3人が邦訳にあたっていて、ところどころ代名詞が違っていた。同じ人間関係の間での代名詞なんて話し合って統一しておくべきだろうに。

 この『悪童』、一難去ってまた一難、という幕切れ。エリカの妹のDV夫がいつ罰を受けるのかとも期待していたのだけど、これまた悲惨で、反面ザマミロの展開に。 こりゃ早いところ次巻を出してくれ。

 『エデンの東』はハヤカワ文庫全4巻、これはお勧め。

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