レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『不如帰』

2008-06-21 05:38:06 | 
5月31日に言及したこの小説、読んだ。地の文が文語で会話が口語、さほど長いものではない。岩波文庫1冊。
 薄幸のヒロインの、もう女に生まれたくない、という言葉に対して私は、
>彼女の不幸の元凶の姑だって女ではないか。こいつを恨むほうがスジというものだろう。(小説に書かれているのかもしれないけど
ーーと書いた。そして小説ではどうかといえば、
「心一たびその姑の上に及ぶごとに、われながら恐ろしく苦き一念の抑うれどむらむらと心にわき来たりて、気の怪しく乱れんとするを、浪子はふりはらいふりはらいで、心を他に転ぜしなり。」
と、これだけである。そりゃまぁ、恨んで心を騒がせても空しいものではあるけれど・・・ものたりない。第三者の私が納得できない。
 百歩譲って、人を恨まないのはよしとしても、「女」の身を嘆くのはどうしても納得できない。婿に行った男が病気で離縁だってありうるし、家に縛られているのは男も同様だろうに。でも、実在のモデルがほんとにこういう言葉を吐いているそうだ。そして、多くの読者が違和感もなく受け入れて泣いてきたのだろう。ますますすっきりしない。
 また女に生まれて、こんどはうんと丈夫になって、オニのような姑ならば断固討ち倒してやる!という、そんな意気込みが欲しい・・・。
(嫁になんか行かない、尼になる!というならば共感するんだが)

 夫婦の純愛にほろりはくるけれど、・・・上記セリフに対してはやはり抵抗があるのだった。
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