83~84年、「週刊マーガレット」連載(そう、あのころは週刊だった)。
BY川崎苑子(現・北村夏)私が単行本を全部所持しているただ二人の漫画家の一人。ありがたいことに、ソノラマから今月復刊してくれた。
就職浪人の川風そよ子さん18才は、おさんどん生活にウツになっていたところ、ゆきずりの青年に家事の腕を賞賛されたことから「お手伝いさん」を天職と見定め、まずは自宅で姉たちから給料をもらって働くようになる。大工の父、熱血教師の姉1サラ、漫画家の姉2スウ、幼稚園児の妹ふう子、そして、そよ子さんに惚れて押しかけ、そよ子さんも「女の見栄」でなしくずしにつきあい始めた沢くん。どこかボケてたり、それなりに変人だったりする人々のささやかな日常を、時にシビアに、時に優しく描き出す。たくましさと無垢さの同居する世界、お天道様に顔を向けて笑う時も、足元の草木に心を和ます時もある。それが苑子ワールド。
併録の『野葡萄』はシリアス読みきり。母の再婚を受け入れられない少女が、両親の旧友の経営する山のホテルを訪問する。この夏に閉鎖するので最後に昔の仲間で集まったという人々に、彼女はたいそう優しく迎えられるが、彼らには秘密があったーー。
イントロ(正確には4ページめ)はこう:その日あたしは泣きたい気分で列車にのっていて それでも 気分とは別にお腹がしっかりすいてきていて 高原弁当を買おうとしたのですが 前の席の人がふたつも買ってお弁当はそれで売り切れで ますます泣きたい気分になって ティッシュペーパーをさがしたらさっき鼻をかみすぎてもう在庫がなく 一番いいハンカチで鼻をかみいよいよ泣きたい気分になっていた時ーー彼が声をかけたのでした
シリアスな中にもどこかおとぼけ風味、これも苑子テイスト。
「ポテト時代」
BY川崎苑子(現・北村夏)私が単行本を全部所持しているただ二人の漫画家の一人。ありがたいことに、ソノラマから今月復刊してくれた。
就職浪人の川風そよ子さん18才は、おさんどん生活にウツになっていたところ、ゆきずりの青年に家事の腕を賞賛されたことから「お手伝いさん」を天職と見定め、まずは自宅で姉たちから給料をもらって働くようになる。大工の父、熱血教師の姉1サラ、漫画家の姉2スウ、幼稚園児の妹ふう子、そして、そよ子さんに惚れて押しかけ、そよ子さんも「女の見栄」でなしくずしにつきあい始めた沢くん。どこかボケてたり、それなりに変人だったりする人々のささやかな日常を、時にシビアに、時に優しく描き出す。たくましさと無垢さの同居する世界、お天道様に顔を向けて笑う時も、足元の草木に心を和ます時もある。それが苑子ワールド。
併録の『野葡萄』はシリアス読みきり。母の再婚を受け入れられない少女が、両親の旧友の経営する山のホテルを訪問する。この夏に閉鎖するので最後に昔の仲間で集まったという人々に、彼女はたいそう優しく迎えられるが、彼らには秘密があったーー。
イントロ(正確には4ページめ)はこう:その日あたしは泣きたい気分で列車にのっていて それでも 気分とは別にお腹がしっかりすいてきていて 高原弁当を買おうとしたのですが 前の席の人がふたつも買ってお弁当はそれで売り切れで ますます泣きたい気分になって ティッシュペーパーをさがしたらさっき鼻をかみすぎてもう在庫がなく 一番いいハンカチで鼻をかみいよいよ泣きたい気分になっていた時ーー彼が声をかけたのでした
シリアスな中にもどこかおとぼけ風味、これも苑子テイスト。
「ポテト時代」