レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『ポテト時代』

2006-06-26 14:33:52 | マンガ
83~84年、「週刊マーガレット」連載(そう、あのころは週刊だった)。
BY川崎苑子(現・北村夏)私が単行本を全部所持しているただ二人の漫画家の一人。ありがたいことに、ソノラマから今月復刊してくれた。

就職浪人の川風そよ子さん18才は、おさんどん生活にウツになっていたところ、ゆきずりの青年に家事の腕を賞賛されたことから「お手伝いさん」を天職と見定め、まずは自宅で姉たちから給料をもらって働くようになる。大工の父、熱血教師の姉1サラ、漫画家の姉2スウ、幼稚園児の妹ふう子、そして、そよ子さんに惚れて押しかけ、そよ子さんも「女の見栄」でなしくずしにつきあい始めた沢くん。どこかボケてたり、それなりに変人だったりする人々のささやかな日常を、時にシビアに、時に優しく描き出す。たくましさと無垢さの同居する世界、お天道様に顔を向けて笑う時も、足元の草木に心を和ます時もある。それが苑子ワールド。
 併録の『野葡萄』はシリアス読みきり。母の再婚を受け入れられない少女が、両親の旧友の経営する山のホテルを訪問する。この夏に閉鎖するので最後に昔の仲間で集まったという人々に、彼女はたいそう優しく迎えられるが、彼らには秘密があったーー。
 イントロ(正確には4ページめ)はこう:その日あたしは泣きたい気分で列車にのっていて それでも 気分とは別にお腹がしっかりすいてきていて 高原弁当を買おうとしたのですが 前の席の人がふたつも買ってお弁当はそれで売り切れで ますます泣きたい気分になって ティッシュペーパーをさがしたらさっき鼻をかみすぎてもう在庫がなく 一番いいハンカチで鼻をかみいよいよ泣きたい気分になっていた時ーー彼が声をかけたのでした

 シリアスな中にもどこかおとぼけ風味、これも苑子テイスト。

「ポテト時代」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ローマものミステリー

2006-06-26 14:30:30 | ローマ
『ファルコ』のほかにもちらちらとある。

 川田弥一郎『ローマを殺した刺客』  主人公の「私」の正体が途中で見当つくけど、それで興趣がそがれるというわけでもないです。一番の腹黒はやはりあの男ということでモンクはあるまい。
 同じ川田『アテナイの惨劇』所収の『ローマ詩人の死』 「私」は医者で、第二次三頭政治の初期。ここで少し出てくるアントニウスもやはりバカっぽい。アントニウスを「陽気な残酷さ」、オクタを「陰気な残酷さ」と評していることは言いえて妙かも。 表題作は、アテナイで産婆(若いけど)をする「私」が、ある名家の殺人事件の真相を探る。ほかに、大戦前夜の欧州(ドイツだったか?)で日本人青年が知人の娘の失踪を追う話、19世紀の英国で、ガヴァネス(住み込みの家庭教師。当時の、ある程度いい家の教育のある娘の代表的職業)が雇い主の家の醜聞に巻き込まれる話、計4編。時代背景が大なり小なり影を落としてます。語り手が女性であると、当時の女の置かれた立場の不平等への批判がそれとなく反映されている点が面白い。
 (歴史上の人物が登場するとき、名前が出てくるまえにそれが誰だか当ててみせるというのは実に快感)

 ジョン・オヘイガン『若きローマ人の死』早川書房 
共和制末期、挙式間近の青年が殺される。見てくれ以外には甚だ感心しない男だったので、花嫁の身内は反対しており、母親が毒殺の疑いをかけられる。キケロが探偵役です。 犯人は見当ついたですけど。

 ジョン・マドックス・ロバーツ『古代都市ローマの殺人』『青年貴族デキウスの捜査』  ハヤカワ文庫SPQRシリーズとして総称されるけど、この邦題あんまりだ、入れ替えたって同じじゃないか~!どちらも、青年貴族デキウスが古代都市ローマの殺人を捜査するんだから。実は筋をまったく覚えていません。デキウスの一族では、彼の父と彼以外の男はみ~んな「クウィントゥス」という名前で、「デキウス」は神々のお告げによるというエピソードだけ。2作目はカティリーナの陰謀が背景にあるけど、その年の検察委員の「ガイウス・オクタヴィウス」なる人が、あのオクタパパなのかがたいへん気になります。続きが訳されたならばそのへんがはっきりしたのだろうか。 少し出てくるアントニウスがやたらと美形設定なのが、むっ、ナマイキな・・・。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする