レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

LとRの発音

2006-06-01 13:23:33 | ドイツ
 デュッセルドルフといえば、ライン河畔のわりに大きな都市、ノルトライン・ヴェストファーレン洲の州都であり、日本企業がたくさん進出していることでも有名で、「日本のコロニー」とも言われる。ここデュッセルに、私がお世話になっている日本人Fさん一家がお住まいである。このFさんからきいた話。別の日本人のオフィス宛ての嫌がらせFAXが間違って届いたことがあり、この内容が ”Albeit macht flei、、 ドイツ語を知っている人ならばなにがヘンはわかるだろう。正しくは Arbeit macht frei である。ナチ時代の強制収容所の「労働は自由をもたらす」という欺瞞に満ちたスローガン。この文の、Rの部分をLで置き換えてあるのだ。日本人がこの区別の苦手なことは結構知られていることのようだ。
 英語ではLは「エル」、Rは「アール」とよむことになっているが、ドイツ語ではRも(敢えてカナ書きすれば)「エル」である。「のどびこをふるわす」とか「うがいをするように」とか、「巻き舌のエル」とか言われる。私の耳には、このエルの「ル」には濁音をつけて表したほうがいいように聞こえる。Lのほうが音が軽く、日本語のラリルレロはむしろLのほうに近い。そう思うのは私だけではないようだ。というのも、とあるドイツ人用の日本旅行ガイドブックでは、日本語のローマ字表記(それは、極力彼らのスペル習慣から誤解のないように、「ジ」はji でなくdschiとか)のラ行の音をRでなくLで書いてあったからだ。 しかし、日本人の名前にLを使うことは禁止されているらしいので、奇妙なものである。
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陰謀をめぐる夫妻の会話

2006-06-01 13:18:01 | Caesar und Calpurnia
最終章・第12章①

3月14日、悪天候。レピドゥスのところでのパーティにカルプルニアは行く気がしない。陰謀について、カルプルニアはヒルティウスからもポルキアからも聞いている。「こんなに大勢が知っているのはおかしくないかね?そもそも「陰謀」という言葉がもうふさわしくないな」「ローマとは町ではない、ローマは唯一の劇場なのだ。そこですべての人々が舞台の上の、または一冊の本の中の登場人物のように語りふるまっている。あるいはたくさんの本か、喜劇、悲劇、歴史書。そして彼らのすべてが救い手だ:クレオパトラはエジプトを、ブルートゥスは我らの父祖の祖国を、ヒルティウスは私を。誰もが自分の役をよく知っている・・・」 「私が興味を持っているのは、貴方が明日の朝、ご自分にどんな役をふるのかです、ローマの紳士たちが歴史書に新しいぺ一ジを書く、あるいは芝居に新しい場面を加えるときに」「それで君はどんな役を私に勧めるかね?」 「貴方は芝居の人物ではありません、自分でお言きになるといいわ」 「君が指示をくれたら自分で言こう」「私はほんの数日前に、本を書<忠告をしたぱかりです。貴方は拒絶なさった。どうして突然の心境の変化ですの?」 「私は単に助言を求めているだけだ。君の望みを知りたい」 「貴方は私に助言を求めたりなさらなかった。政治のことには全く。それは正しいことでした。それなのになぜ今、この時に?それで貴方は私に重過ぎる荷を負わせるの?私は貴方にとってほとんど他人ですのに」「君は私が、元老院の紳士たちのくれた役を漬じることを望むのかね?」「そんな問いは侮辱です」「なせ、考えていることを言おうとしないのだね?」 「貴方は、ガリアを征服して無数の人々を死と隷属に追いやろうというとき、私にきいたりしませんでした。ルビコンを渡って、数百年の共和国にとどめをさそうというときにも。どうして今私にお尋ねになるの?」 「私は、明目どんな役を演じるべきかを知りたい。なにがそんなに難しいのだね?」「私はこの15年、『高潔な主婦』の役を自覚して演じてきました。私は私の生活をおくり、政治とは常に距離をおいてきました、政治は男も女も破減させるからです。貴方は、こんなに長くたってからでも私の生活に踏みこむことはできます、しかし、15年もたってから貴方の政治に私を引き入れることはなりません」
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オクタヴィアヌス唯一の出番

2006-06-01 13:12:44 | Caesar und Calpurnia
第7章から。 養子になったオクタとカルプルニアの会話の場面です。彼はじきアポロニアヘ行くことになってます。

「まだ貴方に、マギステル・エキトゥムになったお祝いを言ってなかったわね。高い地位で大きな役目よ」''オクタヴィアヌスは疲れたように微笑んだ、「確かに高い地位です、しかしむなしいものでもあります。僕はまだ戦場の経験がありません。ほんの少し陣地の生活を学んで、武器の扱いを習って、偉大な行軍の歴史を本で読んだ、それ以上ではありません。僕は軍事的には無価値です」「まだ戦闘をしていないならぱそれを知ることはできないでしょう」「知るべきことは多くはありません」「貴方は自分の新しい地位 が気に入っていないようね。
ローマ中の若者たちが貴方をうらやんでいるでしょうに」 「そもそも僕がそれを望んでいたかもきかれませんでした。そして僕自身自分に問いは しなかった。僕は自分の運命へと生まれつきました、貴女が結婚によってそうなったように。その運命とはカエサルです。そしてカエサルとは戦争です。いまや僕もカエサルだ」「たいていの若者は戦争が好きだわ、戦闘のざわめき、角笛の響き、野営のたいまつ、戦友のつきあい、荒っぽい陣地生活、冒険、富、名声の望み」「…飲んだくれ、略奪。僕は平和のほうがいいです」"カルプルニアは好奇心を持って彼を見た、しかし何も言わなかった。「もちろん僕だってカエサルの偉大な征服には感嘆しています。彼の軍事行動はただの向こう見ずとは違います」「謝ることないのよ。貴方が本当に考えていることは面白いわ。私の戦争への愛も決して大きなものではないもの」『カエサルはきっと、僕に軍事の才が欠けていることや戦闘好きでないことがわかってしまうでしょうね』「きっととうに知っているわよ。そんなこと見逃すはずないもの」「ではどうして僕を養子にしたんでしょう?どうして、たった19才の僕を戦場につれていって、第二の地位につけるのでしょう?」「きいてごらんなさい」「僕が一緒に行けば、もう後戻りはできません」



 立場の変化にとまどっているオクタは普通のひとのようです。直接の出番はここだけです。
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