レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

映画『ベルンの奇蹟』

2006-06-11 10:23:51 | ドイツ
 2004年、ドイツ映画。1954年のワールドカップでのドイツの優勝を背景に、長いソ連抑留から帰ってきた父と、サッカー好きの息子との葛藤と和解を描く作品である。
 いまの日本でも、単身赴任から帰ってきた父親が家庭で居場所がなくなっていたなんて事態がありがちだが、戦争・捕虜生活を経て帰還した兵士と妻子に溝ができていたという例もたぶん少なくなかっただろう。(『ドイツ・蒼ざめた母』もだったか。)世代ギャップもあるし、それなりに鍛えられてしまった妻も大人しくなかったり。おまけに先の大戦の場合、ドイツは戦争じたいの意義が批判されたのだし(日本もか)、苦労をいたわることもストレートにできないという面もあったかもしれない。
 この話の舞台はルール工業地帯のエッセン。父が抑留中に生まれたマティアスは父とは初対面だった。父はまた炭鉱で働こうとするが、戦争の後遺症でそれができなくなっており、恩給ももらえず、そういう焦りもあって子供たちに高圧的に「家父長的」にふるまう。長男は東ドイツへ家出してしまう。(向こうでどんな思いすることになったんだ~?) 神父に相談し、子供たちの粗末なサッカーボールをけってみて、妻子にそれまでの苦しみを素直に吐露して、和解が進んでいく。クライマックスは、マティアスがカバンもちを務めている地元出身選手ヘルムート・ラーンの応援に、父の協力で駆けつけ、競技場に入り込んでラーンと顔をあわせ、それがパワーアップにつながるくだり。
 決勝戦をテレビで見に神父さんまでバーに来ているのがなんだか可愛い。町中がかたずをのんでいる光景がうつるけど、教会だか修道院だかでまで坊さんたちがラジオにかじりついてるんだもんね・・・。一応パンつくりの最中のようだけど。
 この優勝は、敗戦国ドイツに大きな励みを与えたそうだ。そういえば、戦後の混乱期をしたたかに生き抜いていく女を主人公にした『マリア・ブラウンの結婚』は、ガス爆発事故(?)で最後に彼女が死ぬけど、ラストシーンでこの試合の様子がラジオから響いていた。苦難の戦後に一区切りつける意味で象徴として使っていたのだろう。(日本ならば東京オリンピックなのか?)

 今週のドイツ語の授業では、時節がらこれを見せた。(本編2時間弱プラス映像特典約30分。)好評だったようでよかった。
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ローマ史小説邦訳希望!

2006-06-11 10:17:52 | たのみこむ・復刊ドットコム
 これまで「カテゴリー」設けて紹介していたローマ史小説の邦訳を「たのみこむ」へリクエストしましたーーという報告を先日ここでしました。その後、サラさんから、ブックマークのほうへ入れてはという提案を頂き、それもそうだと考えたので、3つを「ブックマーク」へ移しました。早速の投票ありがとうございます。
 この先、私も協力したい復刊企画があればこちらで載せていきたいと思います。

 こういう登録は確かに少々めんどくさいのですが、少なくとも、外国語で原書を読んだり、サイトを運営するよりはラクなはずです。
 皆様、読んでみたい!という思いはぜひ行動に移して下さい!
 請協力!
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