ALQUIT DAYS

The Great End of Life is not Knowledge but Action.

決心速度

2012年04月04日 | ノンジャンル
出張が多いせいで、飛行機に乗る機会が多い。

もう何度となく乗ってきたが、いまだに飽きることはない。

順風満帆というのは船の話である。
真艫の風、つまり追い風によって帆船は楽に進める。
無論、横風、向かい風であっても、間切りをして
前へと進むこともできる。

飛行機において最大の力とエネルギーを要するのが
離陸である。
また、最も危険な要素をはらんでいるのが、
離着陸時である。

さて、いずれの場合も、追い風ではなく、向かい風において
離陸、着陸の力を得る点が、帆船とは異なる。
正確に言えば、追い風では離陸時の力のロスとなり、
着陸時に減速できないことになる。

逆風が、飛行機が飛び立つ力になるとは、何とも人の
生き方にも似ていて興味深いではないか。

もちろん、上昇して巡航高度に達すれば、追い風に
乗った方がスピードは増す。

さて、離陸時に滑走を始め、スピードが上がっていくが、
なにかの異常があった場合に、離陸を中止するか、
そのまま離陸をするかの判断基準となる速度設定がある。

ある速度までなら中止ができるが、一定の速度を超えると
ともかくも離陸をすることになっている。
それを決心速度という。

この速度に達して離陸を中止すれば、オーバーランなどで
必ず事故に繋がる。

決心速度を越えたなら、もう離陸するしかないのである。
これは、人の決意というか、覚悟にも似ている。

決心速度に達する前に、離陸を中止してしまうということが
日常においてもありはしないか。

離陸を恐れ、離陸の後の上昇の苦しさを恐れて、
途中で中止することを繰り返していては、雲の上の
見たこともない眩しい空を見ることはできない。

つまり、それは自身の決意、覚悟という意味で、
まだ本当には決心速度に達したことがないのである。

そこに達すれば、もう理屈もへったくれもなく、
離陸するしかない。やめれば墜落死である。
逆風を力として離陸すれば、上昇もまた逆風を力として
苦しくとも飛んで行ける。

離陸の苦しさに比べれば、上昇の苦しみはいかほどの
ものでもない。
そして、いつまで続くのかという苦しさの中で、
突然明るい世界がひろがる。巡航高度である。

あれほど苦しみ、力を出し尽くしたかのような
離陸、上昇に比べれば、まるで力のいらない楽な、
楽しい空の旅が始まる。

「この素晴らしき世界」の歌が、心に響く世界が
あるということ。 そして、必ず自分自身もそこへ
辿り着くことができるということ。
そして、その始まりは、決心速度に達するということ。

飛行機に乗るたびに、離着陸のたびに、そんなことを
窓の外を眺めながら考えている。




最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (taka)
2012-04-05 22:42:06
こんばんは。
何だか眩しい空が見えるような気がします。

私は飛行機でなく最近はバスで移動ばかりしていますが、最近は寝てばかりです。。。
次回は窓から空を見上げて見ようと思います。
返信する
Unknown (jetlinks)
2012-04-06 10:31:08
私も、離陸して巡航高度に達した後は、
窓の外を眺めながらいつの間にか眠っています。 ^^

でも、機内サービスの時には目が覚めます。 ^^
返信する

post a comment