何の予兆もなく、突然何かが引っ掛かったように
咳き込むことがあるのだが、ある日、咳き込んだ後に
口中に異物を感じた。
出してみると、Bの形状をした針金のようなものだった。
歯科で治療してもらった時のものが外れたのかと思ったが、
ここ何ヶ月もそんな治療をした覚えはない。
よく見ると、Bの形状は、明らかにホッチキスの針のように
なっている。
ということは、手術の時に縫合したステープルということだ。
数日、一つ、また一つと咳き込むたびに出てきていたが、
ついに、縫合部がそのままいくつものステープルとともに
出てきた。
縫合部の傷が治り、今度はステープルを異物とみなし、
排出できる部位のところは、痰などとともに排出しようと
しているのだそうだ。
外面の切開した傷は随分きれいに治ってきた。
内面もそれなりに回復しつつあるようだ。
今更ながら、内部も切開、縫合した手術の事実を、
思い知らされるようである。
身体も、あるべきものがもうないことを認識したようで、
しきりにその腔を埋めようとするのか、痛みはないものの
締め付けられるような、絞られるような感覚がずっとある。
梅雨というのに、大して雨も降らずに梅雨明けとなりそうだが、
蒸し暑さが術後の新たな試練となりそうである。