ALQUIT DAYS

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お酒と自殺のリスク

2006年03月12日 | ノンジャンル
ある日、「『大酒』も『飲まない』も自殺リスク高く」という新聞記事が
目に止まった。
ん? と思って、読み進むと、厚生労働省研究班の調査で、東北、
中部、四国、九州、沖縄という地方における40代から60代までの
男性約43,400人を対象に、飲酒状況と自殺との関係を追跡した結果が
出ていた。

少し整理してみる。

月に1~3回の飲酒状況の人の自殺リスクを1.0とする。
週に1回以上の飲酒をする人で、その1回の量を日本酒に換算する。
換算酒量1合未満 自殺リスク  1.2
       2合未満         1.4
       3合未満         1.3
       3合以上         2.3
全く飲まない             2.3
飲んでいたがやめた        6.7

何故か、調査は、地方部が対象で、都市部にはなされていないが、
ストレスの吹き溜まりのような都市部では、多種多様な要因があり、
飲酒と自殺リスクという点での調査という事で、統計上、正確さを
期する為に、地方部に限ったのかもしれない。

娯楽の無い地方では、時間の流れがゆっくりとしている反面、
暇を持て余すという事も多々あるに違いない。のんびりとした
生活環境においての飲酒と自殺との関係を調査する事は、ある意味
納得出来るものがある。

週に1回以上飲酒し、1回の量が3合以上の人達が、2.3倍というのは、
少なからず理解できるが、全く飲まない人達が、同じく2.3倍、
飲んでいたがやめたという人達が6.7倍という調査結果は、
注目すべきだ。

適度の飲酒が、心身を共にリラックスさせる事に有効である事はよく
いわれるが、調査結果にも、その事が如実に見られる。「適度」という
基準から、大きく離れると、ストレスの解消どころか、かえって
ストレスの蓄積を招く事にもなるようだ。

「3合以上」と、「全く飲まない」のデータは、この事を裏付けている
ようでもある。
適度を大幅に超えてしまう場合、反対に適度を大幅に下回る場合、
ともに自殺リスク度は高くなる。全く両極に位置するが、ともに
ストレスの開放という面で、有効性を欠くという事か。

「飲んでいたがやめた」の、6.7倍というデータには、正直驚かされた。
が、考えれば、当然の値かもしれない。飲酒の効用について、良い面、
悪い面共に経験している人が、或いは健康上の理由で、または、他の
諸事情から、それまでの飲酒習慣を止めたとき、その事でストレスを
上乗せする事になる。

二日酔いで死ぬほど苦しんでも、醒めればまた飲めるという経験は、
誰しも持っている事であろう。つまり、二日酔いが辛いから、お酒を
やめたという人は少ないはずだ。とすると、何らかの事情で、
やめざるを得ないということで、やめた人が殆どではないか?

「お酒は飲めるが、飲まない」のと、「お酒を飲みたいが、飲めない」
とでは、大違いなのだ。「お酒を飲めない」私にとっても、心せねば
ならない調査結果である。

まあ、仕事に忙殺されている今の私の状況においては、また趣が
異なるが、お酒の文化という点では、非常にきつい環境下にある
地方では、「飲めない」という状況は、かなりのストレスとなる
可能性が高い。
お酒を飲む飲まないが、人付き合いの善し悪しとみなされている
ケースも、地方では珍しくない。ましてや、ある意味において、
閉ざされた社会の中での話である。そこでの孤独は、都会の孤独とは
比較にならない。

「付き合いが悪い」ということは、都会と地方とでは、その意味において
大きな差がある。
本人も、付き合わなくてもすることは山ほどあるであろう都会に対し、
付き合わないと、それ自体が日常の人間関係に支障をきたすことも
あるのが地方だ。

少し極端だが、実際のところは、それほどの大きな差となってしまう。
人が少ないが故に人付き合いが重要視される閉ざされた社会では、
お酒を飲まない イコール 人付き合いが悪い、仲間ではないと
いった図式が
成り立ってしまうことも多々ある。

また、お酒の席で無粋にも飲まないでいるというのもかなりの
ストレスとなるだろう。
周りはすべてお酒でいい調子になっている。悪酔いして、飲むことを
強要する人も出てくるだろうし、単に飲めない人にとっても
厳しい状況だが、飲めるのに飲めない人にとっては、深刻な環境だ。
自分自身に置き換えてみても、父親の田舎に行ったときに、
お酒を飲まないでどう過ごしたら良いのか、あまり妙案が浮かばない。
お盆や正月のイベントにたまに行くのであるから、
その歓待ぶりは、大そうなものである。

飲まないことでできる暇をもてあまして、どう過ごせばよいのか
想像するに難い。まして地方に住む人にとっては、そういった
イベントが節目ごとにあるのであり、常に、飲んでしまう、
飲まされる、飲まないと場がまずくなるといった、危険な環境下に
あるわけで、断酒の継続というのは非常に難しいのかもしれない。

何かしら、そこに「断酒か死か」といった極端さが、凝縮したような
ケースを想像することが出来る。「全く飲まない」と、「飲んでいたが
やめた」人達のリスクの高いデータに考えさせられた記事であった。

自分の場合は、そういった環境下(つまり父親の田舎に行くことなど)
に置かれるのは、たかだか数日間のことであり、それを越えれば、
また繁忙な都会生活に戻るのであり、さほど深刻には考えていない。
ここのところ、随分ご無沙汰となっていることもあり、
今年のお盆にでも、家族と父親とで、田舎に行こうかとも考えている。



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