下天のうちにくらぶれば夢幻の如くなり。
40代最後の年の初めを、佐渡という島で過ごしている。
ここは、古来、島流しの島の一つである。
新潟から高速艇で日本海を渡る。かなり沖合に出ても、
海上の波はうねるように不気味に高く、白い波がしらが
一面に砕ける。
太平洋に慣れ親しんだ身にとっては、ぞっとするような
荒れた海の様相だ。
低い雲が遠くに見える佐渡の山にかかり、雪とあいまって
かすんだように見えるそのすぐ下には、黒い海が広がる。
多少の薄明かりが海面を照らしても、その色は鉛のように
鈍くぬめっているように見える。
ごつごつとした岩肌の上を、まるで岩を砕いて行くように
船は進んでいく。
これが、冬の日本海である。昔の帆船などが冬の航海を
避けたのもうなずける。まさに板子一枚下は地獄である。
いや、板の上も地獄であろう。
この島に流されたものには、絶望しかなかったのではないか。
事実、この地で不遇の死を遂げたものが殆どである。
四苦八苦の、四苦の年を、この土地から始められるのは、
むしろ私らしい。
今はともかく、昔なら人の世も50年。
今でもアル中なら50年。
残り1年の寿命のつもりで、今年一年を奮励努力し、
明年以降の天佑を待つこととする覚悟なのである。
40代最後の年の初めを、佐渡という島で過ごしている。
ここは、古来、島流しの島の一つである。
新潟から高速艇で日本海を渡る。かなり沖合に出ても、
海上の波はうねるように不気味に高く、白い波がしらが
一面に砕ける。
太平洋に慣れ親しんだ身にとっては、ぞっとするような
荒れた海の様相だ。
低い雲が遠くに見える佐渡の山にかかり、雪とあいまって
かすんだように見えるそのすぐ下には、黒い海が広がる。
多少の薄明かりが海面を照らしても、その色は鉛のように
鈍くぬめっているように見える。
ごつごつとした岩肌の上を、まるで岩を砕いて行くように
船は進んでいく。
これが、冬の日本海である。昔の帆船などが冬の航海を
避けたのもうなずける。まさに板子一枚下は地獄である。
いや、板の上も地獄であろう。
この島に流されたものには、絶望しかなかったのではないか。
事実、この地で不遇の死を遂げたものが殆どである。
四苦八苦の、四苦の年を、この土地から始められるのは、
むしろ私らしい。
今はともかく、昔なら人の世も50年。
今でもアル中なら50年。
残り1年の寿命のつもりで、今年一年を奮励努力し、
明年以降の天佑を待つこととする覚悟なのである。