昨年、美容室の会社を辞めた家内だが、その後は
まつ毛のエクステに熱中している。
美容関係の仕事は、いずれも相手の手を取るように
接する仕事である。
現在の状況では、最も自粛せねばならない仕事の
ひとつであろう。
その意味では、昨年のうちに辞めたのは、
幸いであった。
さて、自粛だからといって、じっとはして
いられない彼女の事。
美容関係がだめならと、スーパーのベーカリー
部門に応募して、今月よりパートに出ている。
以前は、人の頭が仕事の対象だったが、今回は
パン生地が対象である。
そんな家内が、面白いことを言っていた。
人の頭というのは、いわば小宇宙であって、
それぞれに個性があるのと同様、それぞれの
心の状態が手から伝わるのだそうだ。
元気をもらう場合もあれば、逆に吸い取られる
場合もある。
一日に何十人と接客する中で、その「伝わる」を
何十回も感じると、仕事終わりには精も魂も
尽き果てるのだそうである。
実際、疲れ果てて帰宅して、そのまま寝てしまう
事も少なくなかった。
それでもなんとか、近くのスーパー銭湯に行っては、
自身の心身のリセットをするよう、努力していた。
それが今では、人の頭ではなく、パン生地である。
ある意味力仕事でもあるが、そんなことは全く
気にならないほど、手が気持ちいいという。
小麦粉をこねていると、それまで感じたことのない、
大地の恵みともいうべきものを感じて、還って
癒されているのだそうだ。
事実、仕事が終わって帰って来る顔は、何かすごく
楽しい事をしてきたような明るい顔である。
人間の神経というのは、手、特に指先にかなりの
割合で集中している。
外出自粛、人に会わない、人と距離を置く。
今必要とされていることは、人と手を取り合う
事をやめるという事である。
感染の拡大よりも、むしろこの手を取り合わない
ということの弊害の方が、将来的には大きくなる
気がしている。
顔を見る、声を聴く、言葉を交わすことよりも、
手を取り合う事で通じることというのは、
あまりにも大きいからである。
私達は、この手を取り合うという最大の
コミュニケーションを喪失してはならない。
大げさな言い方だが、その喪失はつまり、
人が人であることの喪失につながると
危惧するからである。
まつ毛のエクステに熱中している。
美容関係の仕事は、いずれも相手の手を取るように
接する仕事である。
現在の状況では、最も自粛せねばならない仕事の
ひとつであろう。
その意味では、昨年のうちに辞めたのは、
幸いであった。
さて、自粛だからといって、じっとはして
いられない彼女の事。
美容関係がだめならと、スーパーのベーカリー
部門に応募して、今月よりパートに出ている。
以前は、人の頭が仕事の対象だったが、今回は
パン生地が対象である。
そんな家内が、面白いことを言っていた。
人の頭というのは、いわば小宇宙であって、
それぞれに個性があるのと同様、それぞれの
心の状態が手から伝わるのだそうだ。
元気をもらう場合もあれば、逆に吸い取られる
場合もある。
一日に何十人と接客する中で、その「伝わる」を
何十回も感じると、仕事終わりには精も魂も
尽き果てるのだそうである。
実際、疲れ果てて帰宅して、そのまま寝てしまう
事も少なくなかった。
それでもなんとか、近くのスーパー銭湯に行っては、
自身の心身のリセットをするよう、努力していた。
それが今では、人の頭ではなく、パン生地である。
ある意味力仕事でもあるが、そんなことは全く
気にならないほど、手が気持ちいいという。
小麦粉をこねていると、それまで感じたことのない、
大地の恵みともいうべきものを感じて、還って
癒されているのだそうだ。
事実、仕事が終わって帰って来る顔は、何かすごく
楽しい事をしてきたような明るい顔である。
人間の神経というのは、手、特に指先にかなりの
割合で集中している。
外出自粛、人に会わない、人と距離を置く。
今必要とされていることは、人と手を取り合う
事をやめるという事である。
感染の拡大よりも、むしろこの手を取り合わない
ということの弊害の方が、将来的には大きくなる
気がしている。
顔を見る、声を聴く、言葉を交わすことよりも、
手を取り合う事で通じることというのは、
あまりにも大きいからである。
私達は、この手を取り合うという最大の
コミュニケーションを喪失してはならない。
大げさな言い方だが、その喪失はつまり、
人が人であることの喪失につながると
危惧するからである。