囲碁にはいろいろな別名があります。坐陰(ざいん)、手談(しゅだん)、方円(ほうえん)、爛柯(らんか)、その他、「烏鷺(うろ)の争い」、「橘中(きっちゅう)の楽」などです。中でも爛柯は難しい漢字であり、味わいがあります。これに関する故事を述べます。
昔、中国の晋という国に、王質という木樵(きこり)がいました。ある日、山へ行ったら、童子が碁を打っていました。王質は斧をおいて勝負を見物しはじめました。すると一人の童子が王質に棗の実をくれました。それを食べたら、もう腹がへらない。いつまでも見物していました。そのうちに童子が「何故帰らんのか?」といったので、立って斧をとって見ると、柄が腐っていました。爛は朽ちるの意味、柯は斧の柄のこと。つまり、斧の柄が朽ちてボロボロになるまで見物していたのでした。村へ帰ったら何百年も経っていて、知り合いは誰も生きていなかったのです。遊び事に夢中になると現実や生活基盤が夢のように消え失せることの戒めでしょうか。
小島直記「君子の交わり 紳士の嗜み」新潮社
昔、中国の晋という国に、王質という木樵(きこり)がいました。ある日、山へ行ったら、童子が碁を打っていました。王質は斧をおいて勝負を見物しはじめました。すると一人の童子が王質に棗の実をくれました。それを食べたら、もう腹がへらない。いつまでも見物していました。そのうちに童子が「何故帰らんのか?」といったので、立って斧をとって見ると、柄が腐っていました。爛は朽ちるの意味、柯は斧の柄のこと。つまり、斧の柄が朽ちてボロボロになるまで見物していたのでした。村へ帰ったら何百年も経っていて、知り合いは誰も生きていなかったのです。遊び事に夢中になると現実や生活基盤が夢のように消え失せることの戒めでしょうか。
小島直記「君子の交わり 紳士の嗜み」新潮社