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25%削減目標の意味

2010-03-17 07:07:38 | 科学
鳩山首相が昨年9月の国連首脳会議の席上で温室効果ガス削減の2020年目標として1990年比で25%減という大胆な提案をしました。これ以後、政府はすべての主要国の公平かつ実効性のある参加を条件に一貫してこの目標を主張しています。続いてCOP15でコペンハーゲン合意が確認され、先進国は2020年目標を提案することが要請されました。
まず、25%という数字の根拠を紹介いたします。
この分野ではIPCC(政府の定めた専門家パネル)の第四次報告書が重視されていますが、その中に、安定化温室効果ガス濃度450ppmのケースのシナリオが記されています。このケースにおいては、産業革命以前の自然のレベルから地球の温度が最終的にはほぼ2度上昇するのに相当します。このシナリオでは、2020年の先進国の温室効果ガス排出が1990年比で25~40%と記されています。各国が削減目標として25~40%を提案しているのもこのシナリオと整合しています。さて、2度を目標にするというのは合理性があります。すなわち、非可逆的影響の代表例であるグリーンランドの氷床融解について、気温が1.9~2.0度上昇というのが氷床融解を防ぐ限界の温度とされており、これ以上気温が上昇すると氷が融解して海面が7m上昇に向かう破滅的リスクがあります。これを回避する重要な一線が2度なのです。

 わが国で25%程度の削減量を達成するには、次のような方策が代表的なものです。
1. 10~15%程度の削減量を海外排出権取引と従来の森林吸収で賄う。
2. 車の燃費、建物断熱、家電品のエネルギー効率等について企業側ないし購入側に何らかの規制を導入する。
3. 1~2万円/CO2トン程度の環境税を導入する。
4. 総量規制と排出量取引システムの導入に際しては、鉄鋼・セメント・化学・紙パルプ
等の重工業への総量規制は大きな国内生産の低減を引き起こさないよう配慮する。

25%削減の実現は容易ではありませんが、これを本当に実現するためには、首相は目標数値を連呼するだけではなくて、上記の政策手段を定量的に検討してタイミングよく実行に移すべきであると茅教授は、鳩山首相に提言されています。

   茅陽一 「學士會報」No. 881 
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