山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

野付半島(1)トドワラの怪

2009-09-27 00:29:24 | くるま旅くらしの話

野付半島をご存知でしょうか。世の中に半島と名の付く場所は多いですが、野付半島は半島というのを実感できる不思議な場所です。半島の定義をご存知でしょうか。半分島という書き方は良く考えてみると、面白いと思います。半島というのは、3方位を海(水)に囲まれている地域をいい、4方位を水に接しているのを島というのだそうです。そういう定義から考えると、半島というのは半分島になりかけている地域とも言えそうですが、たった1方位が海に面していないというのは、決定的に島と違うような気がするのですが、ま、あまり理屈は言わないことにします。

   

野付半島の碑。昭和61年、ネイチャーセンターの脇に建立された。先人のご苦労などが記されている。右手奥に尾岱沼港がある。

野付半島は、北海道根室市の北部に隣接する別海町に属する、海老の髭のような細長い地形のエリアをいいます。ここは我が国最大の砂嘴(さし)で、全長が28kmもあります。先に半島というのを実感できるといいましたのは、この半島の狭いところは幅が50mにも達せず、道の両側が海なのです。太平洋に向って突き出た陸地の左側の彼方には水晶島や国後島が望見出来ますし、右側には別海町の尾岱沼港が見えます。両側に海が迫っている実に頼りなく、心細い半島なのです。

   

野付半島の案内板。赤線の部分が舗装道となっている。実に不思議な形の半島である。

砂嘴というのをご存知でしょうか。フリー百科辞典によれば、砂嘴と言うのは、沿岸流によって運ばれた漂砂が静水域で堆積して形成される嘴(くちばし)形の地形のことをいうと説明されています。簡単に言えば、海の砂が波に流れ寄せられて溜まり、それが何時しか陸地と化した場所ということでしょうか。このような場所は、日本では三保の松原(静岡市清水区)や住吉浜(大分県杵築市)などが有名です。

そしてこの砂嘴が更に発達して対岸等の陸地に接近している場所を砂洲(さす)と呼んでいます。更に砂洲が発達して陸とつながったのを陸繫(りくけい)砂洲といい、砂州によって繋がった島を陸繋島と呼んでいますこのように地形の成り立ちを海の運動とのつながりで見て行くと、いろいろなことが解かってきて興味津々です。この頃は、旅も観光案内のレベルから一歩突っ込んでみたいなと思っています。今のところ砂嘴を調べていて、此処まで解りかけてきました。ま、知ったかぶりをするのはこのくらいにしたいと思います。

その野付半島には、トドワラという不気味なエリアがあります。そこは、野付半島を20kmほど行った所にあるネイチャーセンターから更に20分ほど歩いた場所なのですが、最初は一体何のことなのだろうと見当もつきませんでした。そこへ行ってみると、白骨化したトドマツ(椴松)が海中というか、土中に散乱していました。樹木ですから、骨ではないのですが、真っ白に近い、海水に晒されたその残骸は、在りし日の生い茂ったトドマツの姿からは遙かに遠い残酷感のある景観でした。

   

白骨化して横たわるトドマツの残骸。恰も恐竜の骨の如き感じがする。

本来なら砂嘴というのはまだ発達の途中にあるのだと思いますから、その砂嘴の地の上に生え育ったトドマツが枯死するなどというのは考えにくい感じがしますが、どうやらこのトドマツたちは、海と陸の異変に巻き込まれたらしく、樹齢100年くらいの時に海面が上昇したのか、それとも陸地が沈下したのかどちらなのかはわかりませんが、海水に浸って生きられなくなったということです。樹齢100年といえば、それほど遠い昔ではなく、江戸時代あたりではなかったかと、これは私の勝手な推測ですが、何らかの異変がこの地で起こったのではないかと思います。尾岱沼あたりでは今でも掘れば幾らでも温泉が出るという話を地元の人から聞いたことがありますから、このあたりの地下は火山活動が活発なのかも知れません。恐い話です。白骨化したトドマツたちは、大自然の恐怖を今に残して我々に訴えているような気がしました。

   

立ったまま枯死しているトドマツの林。あと何年立っていられるのか、その数は年々少なくなっている。

トドワラからは10kmほど手前に、ナナワラという場所があります。ナナワラというのは、ナラ(楢)の木の林が同じように立ち枯れしている原っぱ、という意味だと思いますが、こちらの方には行ったことはありません。駐車場から望見した感じでは、トドワラのように白骨化状ではなく、付近に緑も多いようで、鹿なども見ることが出来ますから、まだ救われた状態のようです。

我々が現在、興味本位で訪れる観光地となっていますが、枯死して白骨化したトドマツ君たちの姿を見ながら、改めて大自然のその気まぐれに翻弄される生き物の無力さを思ったのでした。もしそれが大自然の気まぐれなどではなく、温暖化や環境汚染などによる人間に対する怒りであったとしたら、トドマツやミズナラ君たちの犠牲などでは済まされなくなるのではないかと、かすかな恐怖に脅えたのでした。

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