山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

キャンピング&RVショー2010を見に行く(2)

2010-02-16 01:01:58 | くるま旅くらしの話

昨日の続きです。実はこの初日を選んだのは、心が逸(はや)ったからではなく、この日に開催を記念してのフォーラムがあるからなのです。予めのプログラムを拝見して、私の提唱しているくるま旅くらしというものが、これらの関係者の方々のおかれた立場ではどのように位置づけられ、認知されているのかを知りたかったのです。そして可能ならば、役所の方には直接問いかけて見たいという思いもあったからなのでした。

15時から17時までの2時間という予定で、先ず基調講演として、「RV&キャンピングカーと観光の可能性」というテーマで松本大学教授佐藤博康氏のお話があり、続いて省庁からの報告として観光庁国際交流推進課課長補佐の河田敦哉氏による「観光立国の実現に向けたインバウンドの振興について」というテーマでの資料に基づく話がありました。その後1時間ほど「これからの観光とキャンピングカーレジャーの可能性」というテーマでパネルディスカッションが行なわれました。メンバーは日刊自動車新聞社専務・主筆佃義夫、松本大学教授佐藤博康、日本ボーイスカウト連盟教育部門長小林孝之助、バックパッカーシェルパ斉藤、日本RV協会会長福島雅邦の各氏、そしてコーディネーターはアウトドアジャーナリスト・プロディューサー中村達氏でした。各氏とも斯界の中でトップ或いは中核的な存在としてご活躍の方々ばかりです。

先ず佐藤先生の話ですが、これは実に面白かった。松本大学における先生の専門は観光ホスピタリティ学科というものだそうですが、初めて聞く科目でした。ホスピタリティというのは、日本語で言えば「おもてなし」ということでしょうから、面白い学問だなと思いました。同時にこれからの時代ではとても大切なテーマだなとも思いました。面白かったのですが、お話の内容はキャンピングカーやRVというよりももっと大きなコンセプトの「観光」という面にメインスポットを当てたものなので、くるま旅はその枝葉の一部という位置づけですから、ちょっと期待していたものとは違う感じがしました。でも参考になることがたくさん秘められていたように思います。先生の話はしっかりした調査に裏付けられているようで、これは観光業界に係わる人たちにとっては、たくさんの宝物が披露されている感じがしました。

例えば、「世界的に進化する観光のかたち」という話では、①ライフスタイルを活かすための観光のかたち②観光資源だけでは満足しない旅行者③地域に受け入れられているかを気にする旅行者等々の内容は、これからの観光業をどのような視点で創ってゆくべきかのヒントがたくさんちりばめられており、新たな観光メニューを創造するのに大いに役立つはずだと思いました。また、「旅の効能と車社会」という話では、車の持つ旅の特徴が正確に捉えられており、更には「車旅行に可能性はあるか」という話では、様々な可能性の中から有力なものを的確に捉えられており、その中に私の提唱するくるま旅くらしも間違いなく含まれているなと合点しました。追って、これらのお話の講演録等がJRVAのホームページ等で発表されるのではないかと思いますが、関係者の方は一見・傾聴に値するのではないかと思います。本質を突いた話というのは、ビジネスの中でも幾らでも活用が可能だと思います。興味をお持ちの方は是非なるアクセスをお勧めします。(掲載までには、少し時間がかかると思いますが)

次の国交省観光庁の方の報告の話は、国としての観光立国を目指して、現在年間700万人前後の外国からの観光客を、2019年までに3000万人に増やすという計画だとか。その考え方についてのアウトラインの説明でしたが、これについては、正直のところコメントする能力は自分にはなく、へえ~、なるほどと思うだけでした。キャンピングカーやRVとのつながりがどうなるのかについては、触れられてはおらず、又触れるのが難しいレベルの大きな話なので、具体性に乏しく質問の余地もなさそうでした。今の5倍もの外国人が日本にやって来た時、日本の受け入れ態勢は本当に出来上がっているのか、オリンピックの施設造りよりも遙かに難しいのではないか、などと思いました。

パネルディスカッションは面白かったのですが、時間不足でパネリストとコーディネーターだけの対話を聞くだけのかたちで終わり、一般の人が参加できず、折角のチャンスがつぶれてしまった感じがして、勿体ないなと思いました。あと1時間くらいあっても良いのにと思いました。そのようなことで、あまり核心に触れた論議が少ないという心残りを感じたのですが、話を伺っていていろいろ感ずるものは多く、大変勉強になりました。

パネリストの方々のお話を伺っていると、実際にキャンピングカーやRV車を使って、長期の旅をしたという経験を持たれているのは、シェルパ斉藤氏お一人だけのようで、どうも他の方のお話は私が経験しているくるま旅を通しての問題意識とは少し温度差があるなと思いました。

例えば、くるま旅のためには幼児からの教育や体験が必要ではないかという話が出ていましたが、それはRVサイドのキャンプのノウハウの話であって、定年後のくるま旅をする上では、子供の頃から教育や経験などを意図することは無用ではないかと私は思います。大人がくるま旅をするために必要なのは、その気と好奇心とそれにほんの少し基本的な知識(旅のソフト面についての)を持っておれば十分だと思います。むしろ必要なのは、くるま旅のための環境の整備です。

今の日本には、くるま旅の者にとっての宿泊場所といえば、道の駅と高速道のSA・PA(といっても仮眠対応ですが)くらいしかありません。一般のキャンプ場はといえば、くるま旅の者を受け入れるコンセプトが無く、高額で且つ過剰設備の多い施設が殆どです。最近は料金を値下げして3000円ほどにしたなどという話を聞きますが、自分の車に寝るだけ、電気も水道もそれほど使うわけでもないのに、どうして3000円も払わなければならないのか、この金額が安くてリーズナブルなどとは到底思えません。

くるま旅の施設が無料であるべきという主張には加担できませんが、有料であってもせいぜい1泊1500円くらいが上限であって、それ以上は施設の使用内容から言ってもリーズナブルとはいえないと思います。USAのRVパークのようなものが何故日本には生まれないのか不思議です。キャンプ場の経営者の方たちが、週末の利用者や夏休みの利用者にこだわった経営を、いつまで続けているのかも不思議です。今までの利用のあり方に加えて新たにキャンピングカーを受け入れたりすると、キャンプ場の管理運営体制が崩れてしまうなどと考え、受け入れを拒否している経営者もおられるようですが、そのような方たちは、車社会の現実と未来をどのように見ておられるのか、これ又不思議に思います。

道の駅でマナーを知らない一部の者のために、真面目に旅をしている人たちが大迷惑を被っている問題の本質を、関係者の方たちは一体どのように考えておられるのか、その対策は「マナーを守ろう」などという注意喚起運動のレベルでだけで良いのか、この辺をもっと議論する必要があるのではないかと思っています。私は道の駅のマナー対策の問題は、くるま旅の環境が整備されていないが故の現象だと思っています。守らなければ使えないような環境をつくらない限り、この問題の解決は出来ないと思っています。具体的にどのような環境が必要なのかについては、様々なアイデアがあるでしょうし、そこには大きなビジネスチャンスも含まれているように思っています。

シェルパ斉藤氏の話は実に具体的で、皆首肯できるものばかりでした。「日本縦断オフィシャルガイド」という本があり、彼はこの本の責任編集者として係わっておられますが、恐らくこの方ほど日本の中を歩き回り、訪ね回った人はいないのではないかと思います。それだけに話の内容は実に明快で、実態に即しているなと思いました。例えば、彼はキャンピングカーを用いた旅もしておられるわけですが、「車をムダに乗らないことが大切」という話は、くるま旅の重要なポイントを突いているなと思いました。当たり前のように軽く聞き流してしまう恐れがありますが、私自身も含めて殆どの人が、かなり多くの、車のムダ乗りをしているという現実があります。実際は歩いて見た方が遙かに得るものが多いのに、停まらないで先へ先へと行こうとすることが多いのです。キャンピングカーを「基地」のようなかたちで使うことが大切という話もされていましたが、大変深い内容のある提案だと思いました。

バックパッカーというのは背中にリュックを背負って歩いて旅をする人という意味だと思いますが、その良さというか旅というものの真髄を、くるま旅に取り入れる発想はさすがだなと思いました。と同時に、彼の発言の本当の価値を理解している人が、この会場の中に何人いるのかなとも思いました。

この他にも得るものはたくさんあり、それらをここで一々披瀝できないのは残念です。パネルディスカッションの最後に、コーディネーターから一言ずつ最後にいいたいことを、との投げかけに対して、JRVAの福島会長は、「道の駅にくるま旅の人が泊れる、いわば公認の駐車場を設けて欲しい」という主旨の提案をされましたが、全く同感です。USAのRVパークに一番近いのは道の駅だと思いますし、国交省が視点を少し変えて予算をつければ、大して苦労などしなくても実現可能な話だと思います。無駄な予算を削ることは大いに結構ですが、本当に必要なものを充実させるための費用の投下は、人間が生きてゆく上では必要不可欠です。

私が今回のフォーラムの中で最も強く感じ、自信を深めたのは、くるま旅が、現役の者にとっても、リタイア間もない人たちにも、或いは高齢者と呼ばれる私のような人たちにとっても、心身の「健康」に大きく係わり、寄与するという認識が世の中で大きく取り上げられて来ているということです。特に高齢者層の健康保持に、くるま旅は大きく貢献できる可能性を秘めていると考えています。そのための環境整備に投下する費用は、高齢者の医療費の大きさから考えれば微々たるものでしょうし、老人が健康になることによって社会にもたらす貢献は、決してバカにはならないと思っています。

改めて、関係業界を挙げてくるま旅の環境づくりへの働きかけを強めて頂きたいと思ったのでした。

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