山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

本物の智恵

2010-02-17 04:27:57 | 宵宵妄話

16日の早朝2時頃、ネットのニュースを見ていたら、ショッキングな情報がありました。でも暗く悲しいという話ではなく、嬉しく素晴らしい称賛の世界の話でした。そのニュースの内容は、次のようなものでした。

「2月15日21時15分頃、中央線高円寺駅上り線ホームから女性が線路に転落。これを都内に住む男性会社員が助けようと線路に飛び降りた。そこに快速電車が迫り、女性が気を失っていたため、男性は2本のレールの間に女性を寝かせ、自分はホーム下の避難濠に駆け込んだ。電車は女性の頭上を通過したが、接触せず、転落で負った頭へのケガだけで済み軽症。男性は無事だった」というものでした。

いやあ、驚き、感動しました。心底良かったなあと思いました。転落した女性のことはさっぱり分かりませんが、この青年の行動は人間がとっさの状態で行う行為の最高レベルに値すると思います。どんなに賞讃しても賞讃しきれないほどです。

私は人間の真価というのは、いざというときに発揮されるものだと思っています。普段何事もなく、いつものことがいつものように動いている状況では、人間は当たり前のことを当たり前と思いながら、当たり前のように判断し、行動しています。危険なことは避け、嫌なものも避けて、自分の良かれと思うことを中心に、あまり心を乱されることも無く過しています。

しかし、突然に問題が発生し、状況が一変すると、今までの平常心は乱され、どうしたら良いのか、考えることも判断することも停止してしまうことが多いように思います。ましてや、我が身を捨てて他人(ひと)のために身を投げ出すなどという行為は滅多に出来るものではありません。

この青年はそれを見事に行なったのでした。真(まこと)に素晴らしいと思います。僅か1分間という、もし失敗すれば助けようとした人を助けるどころか、自分自身も死ぬかも知れないという極限の状況の中で、線路に落ちた女性を動かすことが出来ないと判断した時、線路の窪みに両手を揃えて置いて(その時の状況としては手が線路の上に出ていたということでした)、自分も間一髪で避難濠に飛び込んだという、その一瞬の判断と行動は、人間としての並々ならぬ智恵の持ち主だと思います。

普段大言壮語していても、ゴキブリ一匹に出くわして悲鳴を上げて逃げ去るような人や、或いは隣で何が起きても知らん振りを決め込む輩の多い今の世の中で、突然の予想もしなかった事態に遭遇して、これだけ冷静な判断と行動のできる人物がいるとは、真に嬉しい限りです。

電車のホームでの転落事故は結構多く起っており、私の現役時代でも同じ事故で知人が亡くなった事件を覚えています。何の防御柵も無い所に、かなりのスピードで絶え間なく電車が滑り込んでくるのですから、電車のホームというのは、改めて考えてみれば大変危険な場所ということができます。特に今回の中央線高円寺駅のように、通過する電車が多い駅のホームは、要注意です。転落した女性は、後のニュースの中では酒に酔っていたということですが、本人にも或いは飲ませた方にも安易感があったのかもしれません。折角の一杯やった楽しみが、このような事態を惹き起こす恐さを、厳しく反省する必要があると思います。同時に、JRサイドでは何らかの事故防止のための対策を検討すべきです。

これは素晴らしい美談ですが、同時にいろいろな思いを巡らせずにはいられませんでした。私の尊敬する中国の明の時代の哲学者・思想家に王陽明という人がいます。儒教の中で、いわゆる陽明学といわれる学問の祖ですが、この人の教えの言葉の中に「事上磨」というのがあります。事上の「事」というのは「事が起きた」という場合の「事」を指しています。つまり「事とは、問題や困難状況である」ということです。「磨」とうのは文字通り磨くということであり、磨くのは自分自身です。つまり事上磨というのは、問題状況、すなわち難事の状態においてこそ自分を磨けということです。別の言い方をすると人は逆境においてこそ本物の自分を磨くことが出来るという考え方です。何ごともほどほどに上手くいっている、順風満帆の順境の中では、人は自分を磨くことは出来ないのだという解釈も出来ます

いざという時に本物の知恵を発揮できる人こそが事上磨を実践してきた人なのだと思います。この青年は無意識にこの行為をとられたということですが、どこかでしっかりと人間としての大切なものを学んでいるに違いないと思ったのでした。

古希を迎えてもさっぱり事上磨の出来ていない私なのですが、今日は妙に嬉しくなって、自分ことは棚に上げて偉そうなことを言ってしまいました。

 

「山本馬骨のくるま旅くらし読本」発行のご案内

この度、前著「くるま旅くらし心得帖」の続編として、自作による「山本馬骨のくるま旅くらし読本」を刊行しました。副題を「60歳からのくるま旅くらしの楽しみ方」として、くるま旅くらしの意義、考え方、楽しみ方の理屈や事例などを紹介することにしました。又付録として、くるま旅くらしに関する何でもQ&Aを付加しました。これからくるま旅くらしを始めようとされる方には、これ一冊で旅の要領の凡そがお解かり頂けると思います。

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ご希望の方は、メールpdl-taku9930@themis.ocn.ne.jp)にて〒、住所、氏名、冊数をご記入の上お申し込み下さい。お支払いは、同封の振込用紙にて最寄の郵便局にてお振込下さい。pdlのlはLの小文字です。ご注意下さい。

より詳しく内容をお知りになりたい方は、私のホームページ「山本馬骨のくるま旅くらし元帳」にアクセスしてご覧下さい。このブログの右側にあるブックマーク欄からもアクセス出来ます。

 

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