山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

マンボウを喰う

2008-05-26 00:03:51 | 宵宵妄話

 生まれて初めてマンボウを喰った。マンボウというのは、水族館で見かけるあのとぼけた顔をしている奴である。顔と胴体と尻尾のバランスが普通の魚とは全く違っており、身体の各部分に、何が不足しているのか、何が多すぎるのかがよく解らない魚()である。調べてみると、マンボウはフグ目マンボウ科の魚だということだから、フグの仲間だということらしい。

 先日横須賀のⅠさん宅をお邪魔した際に、地元に詳しいIさんが、久里浜近郊の港近くの魚屋さんに案内して下さった。頭に超というよりも狂に近い魚好きの私にとっては、抜群の楽しみだった。守谷には魚屋がない。スーパーでしか売っておらず、殆どが切り身か干物ばかりである。今海から上がったばかりという鮮度レベルからは、程遠いものばかりしか置いていない。置けないのであろう。だから旅に出ると、魚市場のある所は避けて通れないのである。

 久里浜の何という港なのかはなどは気にもせずに、船から揚ったばかりのシラスをゲットし、その後案内して頂いた魚屋で、飛び魚と太刀魚の干物、それにIさんのお勧めで、一度マンボウを食べてみるべきというので、丁度並べてあった肝つきの切り身を一つゲットしたのだった。

飛び魚は以前屋久島に縄文杉を訪ねた時、泊まった民宿で食べた1匹丸揚げのから揚げの味が忘れられない。それを思い出し、家に帰ったら是非から揚げを再現して貰おうと思った。屋久島の焼酎三岳があれば文句無いのだが、今頃はべら棒に高くなってしまって手に入りにくい。それから太刀魚というのは、干物は珍しい。塩焼きか刺身又はから揚げなどで食べるのが殆どである。是非賞味しなくてはとゲットした次第。

 さてそのマンボウだが、買った切り身を見ると、エイのような、サメのような肉をしていた。魚肉というよりも鶏肉といった感じだが、筋のようなものがあり、Iさんの話では、漁師の人たちはこれをむしりながら食べるのだという。この魚は、鮮度が落ちやすく、落ちると肉が溶け出すので、できる限り早く食べた方がよいという話だった。しかしその場で食べるわけにも行かないので、とにかく早く家に帰る必要があると思った。

 その日家に戻ると直ぐに食べてみることにした。冷蔵庫に入れて冷やして持ち帰ったので、さほど鮮度は落ちなかったようだ。先ずは刺身で食べてみた。ワサビ醤油をたっぷり付けて、口に入れてみたが、やや水っぽくてぶよぶよした食感だった。どうもあの愛嬌あるマンボウ君が目前にちらついて、あいつを食っちゃっていいのかという、罪悪感のようなものがあって落ち着かない。家内は最初からギブアップのノータッチで、怪しげな目でこちらを見ている。このような雰囲気だったから、とても美味という感じはしなかった。

 Iさんの話では、最近観光客相手にこのマンボウを食べさせるのが流行っているとか。それがべら棒な値段なので、決して値段に見合わないということを知るためにも、一度その味を知っておく必要があるということだった。なるほど、なるほどと思いながら、残りの分も平らげて、刺身はそれで終わりにしたのだった。

 しかしまだ半分以上が残っている。これを最後まで全部食べないと犠牲になったマンボウ君に申し訳ないと思い、さてどうやって食べるかを考えた。肝が入っていたので、それを茹でて、味噌と酢を加えて練り、ボイルしたマンボウ君の肉にそれを付けて食べてみることにした。(これは翌日のことだったが)1日経った所為か、若干臭いがきつくなったようだった。家内は明らかに遠い距離を置いている。そのような冷たい雰囲気の中でも、マンボウ君のためには決して食べるのを諦めてはならないのである。しっかりボイルして、そのペーストを付けて食べると、これが結構いけるではないか。焼酎がないので、ウイスキーをハイボールにして飲んだが、やっぱり焼酎の方がいいなと思った。ボイルしたマンボウの肉は、魚というよりも鶏のササミという感じだった。(鶏君に叱られるかな?)

 というようなわけで、マンボウ君を腹に収めたのだったが、Iさんのおっしゃることがよく解った。フグの仲間だというけど、その大きさ、海の中での生活ぶりからいって、フグとは全く違う体質になってしまっているようだ。マンボウ君は、大きいのは3mを超え、体重も2トン以上にもなるというのだから、これはもう魚というよりも海獣という感じである。その肉をどんなに薄く切って並べても、フグの味には決してならないのは明らかだ。

 マンボウという魚は、安易に喰ってしまっていいという存在ではないような気がする。美味い不味いというような問題ではなく、食べてはいけない魚という感じがするのである。

 今のところ私の魚介類に対する覚えの中には、食べてはいけない魚として鯉だけが登録されているのだが、これからはマンボウ君を加えることにした。私の中では、鯉という魚は友達という感じがあり、食べる気が起きない。人に大へんよく懐(なつ)いてくれる魚で、指を出しても逃げないような奴を食ってしまうなんて、そんなことはとても出来ない。鯉こくやアライが美味いという人がいるが、そのような話には同調しないことにしている。

 これからはマンボウも食べない魚のリストの中に入れることにした。人生でマンボウを喰ったのはこれが最初で最後の出来事である。

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