山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

スペイン風邪のこと

2020-05-17 01:14:30 | 宵宵妄話

 今回の新型コロナウイルスに関する各社の報道を見ていて、どうして100年前のスペイン風邪のことを取り上げないのかなと思っていた。パンデミックとしては、近世では過去最大規模だった感染症事件に、どうして触れないのかが不思議だった。ところが今日(5/17)初めて、NHKのBSでそのことについて報道されているのを見て、もしかしたら自分が気付かなかっただけなのかと思った。これを見るまでには、民放の各社では現状ばかりを取り上げており、過去の大事件にはあまり関心を向けなかったように思う。

 100年前の大事件から人間は、国際社会は、何を学んだのだろうか。たった100年しか経っていないのである。往時の世界の総人口は約20億人、その内の1/4にも当る5億人が感染し、5千万人以上もの人が亡くなったのである。この数値は、往時が第1次世界大戦の時でもあり、各国が秘密裡に対処したため、正確な数字が判らずこれを上回っているとも云われている。恐るべき大事件なのである。

 わが日本国でも、約2千4百万人の患者が発生し、死者が約39万人にも至ったという。39万人という数字は、茨城県でいえば、県庁所在地の水戸市が全滅し、その上に更に10万人以上の死者が横たわるという恐るべき数字である。この悪性の風邪の流行は3回に亘っており、特に第2波の致死率が高かったという。自分のような昭和の前半に生まれた者には、今回の新型コロナ禍に見舞われるまでは、殆ど関心の外にあったのだが、今改めてこれを知ってみると、その数値においても対応においても、今回とは比較にならないほどの大事件だったことに気づく。

 人間は、この大事件から一体何を学んだのか?そして何を学ばなかったのか?そのことを考える必要があるのではないか。当時の各国の政治体制、国際関係は最悪で、世界大戦の最中であり、それは現在とは比較できないとは云え、学ぶべきことは多かった筈だと思う。

しかし、自分的に思うのは、大して学んでなどいないということである。100年の間に科学の進歩は目覚ましく、医療の分野においても多くの感染症を抑え込んで来たのだと思う。パンデミックになる前に予防薬や治療薬の開発が追いついて、それが何度か繰り返されると、医療に係わっていない世界に住む人間は、たちまち過信という安心を抱くのだ。衛生に対する基本的な対処法などは忘れて、手を洗ったり、うがいをしたりすることなどを無視するようになり、病気になったら注射や薬を飲めば治るものと考えてしまう。糖尿病の患者でさえ、薬を飲んだり注射をすれば元の健康体に戻るなどと考えている人は多い。しかし、これらの考え方は安易な思い上がりなのではないか。

今回のコロナ禍では、飲む薬が、防ぐ薬が無いのである。にもかかわらず、あると考えて行動している人は多いのではないか。有名人死亡の報道で、初めて薬が無いことに気づかされた人は多かった筈だ。治療や予防の決め手になる薬が無いとしたら、これはもう感染しないように或いは感染させないように努めるしかない。100年前も感染しなかった人が生き残ったのだ。このような当たり前のことを、100年前の教訓として現代にも活かすべきだったのだと思うけど、残念ながら殆ど何も伝わってはおらず、医療の進歩に胡坐をかいていた、その油断をコロナに突かれている感じがする。

また、国際的にみると、世界大戦中でもないのに、それぞれの国が自国中心的に対応を決めており、これはまあ当然なのだとは思うけど、治療薬や予防薬の開発競争に我を忘れてしのぎを削っている。見方によれば、それはもしかしたら100年前の戦争状態と同じではないか。この他、経済活動の仕組みは、100年前とはとても比較できないほど細密につながっており、もはや1国だけではどうにもならない状態なのだ。この仕組みが、今何箇所かで破綻しかけている。この綻(ほころ)びが早急に補填復旧されないと、世界は再び大恐慌や戦争の勃発に見舞われるかもしれない。何とも危険で恐ろしいことが起こる予感を拭い得ない。

当初スペイン風邪というから、これはヨーロッパ中心でスペインが発病元となったのかと安易に考えていたのだが、とんでもない歴史認識であり、これは戦争を絡めた世界を揺るがす大事件であり、戦争の犠牲者よりも遥かに多い死者を出した事件なのである。スペインなどではなく、まさに日本においては日本風邪ともいうべき大事件だったのだ。我々は、この事件と合わせて今回の新型コロナ禍の事件を後世に教訓として何を残すかを考えなければならない。これは政治に係わる者も医療に係わる者も経済に係わる者も、全ての分野において、国を挙げてなさなければならない課題ではないか。今、そのようなことを思っている。

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