山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

南東北・佐渡・飛越信州の春ぶらり旅(第1日)

2008-09-14 01:41:57 | くるま旅くらしの話

4月24日(月)

その日が来た。TVの取材がなければ、事前のスケジュールなどは極々簡単なもので済ませて、旅に出てからは行き当たりバッタリで進めてゆくのだが、今回はそういうわけにも行かないと考え、佐渡へ渡るまでは、あれこれと思いをめぐらしスケジュールを作ったりした。しかし、その通りに行くのかどうかは分らない。

8時少し前にTV局のスタッフ3人が車でやって来た。ディレクターのFさん、カメラのKさんそれに音声担当のNさんの3人である。とにかく指示に従って動くしかない。先ずはくるま旅ついてのインタビューのようなものから始まって、出発の準備の様子などのあれこれがカメラに収められた。勝手が分らないので、多少ためらいがあるが、仕方がない。とにかく楽しく行きたいと思った。カメラなどを意識しすぎると旅が台無しになってしまう。指示には従うけど、こちらもマイペースはあまり崩さないで、いつもの調子で行こうと、改めて自分に言い聞かせた。

    

 出発時の取材の様子。3人の取材スタッフに取り囲まれて些か緊張した。

10時出発を予定していたが、少し手間取って20分ほど遅れてしまった。このため、当初は高速道は使わないと考えていた予定を変更して、高速道を使うことになった。我が家から常磐道の谷和原ICまでは、わずか2、3分の距離である。月曜日の今頃の時間帯は、空いていて道路は貸切に近いような状態だった。走りながら撮影をするらしくて、SUN号の側をTV局のチャーター車は、何度も前後したり、併走したりしていた。空いていなければこのようなことは出来ないので、結果的には一般道を走らなかったのは正解だったのかもしれない。

取材の方は、この出発の場面が終われば、スタッフの皆さんとは、次は今夕、磐越道小野IC(福島県)の入口で合流することになっており、それまでの間はフリーとなる。我々の方は常磐道の那珂ICで降り、そこからはR118を北上して、福島県矢吹町在住の旅の知人、伊東さん宅に寄り、久しぶりにご尊顔を拝して取材の話などをしながら過した後、小野ICへ向かう予定でいる。

朝方までは小雨が降っていて、こりゃ大丈夫かなと心配していたのだが、取材が始まる頃には雨は上がって、それ以降次第に回復してまあまあの天気となった。

今回の旅のコースの概略は、先ずは今夕、旅の先達の知人森さんご夫妻とご一緒し、明日、福島県三春町の名木滝桜を訪ね、その後喜多方市経由で山形県長井市の1本桜の名木、久保桜や大明神桜などを見て、それからは新潟港から佐渡へ渡って、幾つかの名所などを見ることにしている。TV取材の方は佐渡での2日で終了予定である。その後は我々の自由な旅が続くことになるが、未だその詳細も概要も考えてはいない。

ハッキリしているのは、佐渡から戻っても、東北を北上することはしないということ。例年は角館や弘前の観桜を楽しむのであるが、もう彼の地の桜は最盛期を過ぎてしまうことであろうから、それは止めにして、信越から飛騨の方にまわって見ようとは思っている。

桜の方も、何時もは群れて咲いている団体の美しさの鑑賞が主体だけど、今回は山形県置賜地方の桜回廊と呼ばれている1本桜の名木を見ることにしたのである。それが久保桜であり、大明神桜なのである。新しい観桜の楽しみが増えたのであった。

明日の滝桜では、TV局サイドの要請もあって、旅の知人との再会の場面を取り上げて頂くことになり、丁度この時期、石川県は金沢市の隣の野々市町在住の、くるま旅の大先達である、森さんご夫妻が北海道の旅に向われるという時期でもあり、お話をすると、こちらに向って頂けるというので、その待ち合わせ場所を、磐越道の阿武隈高原SAとしたのだった。今夕ご一緒して、明日は滝桜を見に行くことにしている。

那珂ICを降りて、少し県道を走った後、R118へ。この国道沿線の茨城圏内は、いわば拓の縄張り内のようなものである。常陸大宮市は拓の地元であり、東京に出るまでの15年間余りを過した土地なのである。昔の頃とは大分に景色も様変わりしてしまったけど、それでも懐かしいふるさとの匂いは随所に残っており、ここを走るときは、何ともいえない安堵感がある。実家のある常陸大宮を過ぎて、山方宿という所で小休止。ここには舟納豆という納豆の製造販売をしている店があり、そこに今日行く伊東さんに是非とも食べさせたい、豆酪(とうべい)という、豆腐のモロミ漬けの珍味が置いてあるのである。実にコクのある食品で、とても豆腐とは思えず、カマンベルチーズ旨味を凝縮してそれに味噌の旨味を練りこんだような、日本的な味の珍味なのである。豆腐の味噌漬けというのはよく目にするが、あのような軽薄な味ではない。隠れた珍味を発見した時、どうしても知らせなければならない人が何人かいるのだけど、伊東さんをその中に巻き込みたいという拓の思惑がある。酒飲みの悪い習性だとは承知しているが、なかなか治らない。酒飲みというのは、肴の量はほんの少しで良いから、味が酒にあった超美味な奴を希求するものである。豆酪は、その条件を備えているのだ。というわけで、それと納豆をゲットして出発。

小1時間ほど走って、福島県に入り、塙(はなわ) の道の駅にて休憩。未だ13時前だ。この分だと伊東さん宅では、予定よりも少し長居が出来るかも知れない。迷惑も顧みない勝手な思い込みではある。

福島県との県境は、茨城県の県北にあるわけだが、それは福島県の県南となる。茨城県の県北は奥久慈と呼ばれ、八溝山を源流とする久慈川の渓谷がある山懐の深い土地であり、子供の頃は、その又北に平野があるなどとは、とても想像できなかったのを思い出す。しかし、こうして旅を続けていると、福島の県南は、平野が広がる豊かな穀倉地帯なのを、当たり前のように通っているのが不思議である。

南北・東西などという位置づけは、相対的なものであって、決して絶対的なものではない。それなのに、人間が「境界」などと勝手な決めをして、必要以上に拘ったりするのは、哀しい性癖のなのであろうか。渡り鳥たちの目には、国境も県境も無関係で、ただ季節の移ろいに合わせ、棲み易い場所を求めて東西・南北に住処を変えるだけの話なのだ。我が心の狭さは、渡り鳥たちの大らかさには遠く及ばないように思う。

R118を玉川村で左折して矢吹町方面へ。14時頃、大して迷うこともなく伊東さん宅に到着。やあ、やあ、と1月下旬以来の再会の挨拶を喜ぶ。奥さんのお父さんが病で倒れたため、1月には奥さんは一緒に拙宅に来て頂けなかったが、今日はその分までしっかりお会いしてゆくことにする。

伊東さんご夫妻には、昨年の北海道の旅で知り合ったばかりなのだが、お宅をお邪魔するのはこれで2度目である。ご夫妻は最近旅で知り合った方の誘いで、看病の合間を縫って信州の方へ2、3日の旅をして来たとか。あれこれと思い出話に話が弾んだ。TV取材のことなど忘れてしまいそうだ。それでも約束を反故(ほご)にはできないので、1時間半ほどの歓談で、頃合いを見計らってお別れとなる。ここから先の道は、未だ通ったことがないのだが、迷うこともあるまいと高を括って出発する。

 拓は、ナビなし主義なので、地図だけが頼りなのだが、紙の上では色分けしてある道も、実際走るとなると、色分けは勿論道幅も想定外の箇所が多い。とにかく遅れないように気を使いながら進む。1時間ほどで小野ICの入口付近に到着。TVスタッフの方たちはさすがに時間管理には厳しいようで、既に到着されていて我々を待ち受けて居られた。打ち合わせの後、ICから高速道に入って、森さんご夫妻の待たれる阿武隈高原SAに向う。ここまで、天気の方は全く心配のない状態だった。

17時少し前、阿武隈高原SAに到着。寒い。外へ出ると烈風が吹き荒れている。考えてみれば、ここは標高700mを超えているはず。高速道というのは、うっかりすると高さ(標高)を忘れることがある。森さんの車を見つけて、その近くに停める。車から出て、ご夫妻に挨拶する。お元気そうで何よりであった。今回はこのような場所まで引っ張り出してしまい、果たして良かったのかどうか、少し気になった。でもお二人のお元気な姿を見て、TVのことなど余り気にするまいと思った。

寒さに震えながら、しばらくTVの取材に応じて頂いて、その後はSUN号の中に入って頂いて一緒に夕食をとる。昨年の秋に森さん宅をお邪魔して以来のご一緒の夕食である。食事の場面の撮影なども少しあって、インタビューに対して、お父さんは旅が元気の元なのだというような話をされていた。TVをご覧の中には、それをわざとらしく聞こえるとされる方もいるかもしれないけど、旅に出ると元気になるというのは、森さんご夫妻だけではない、我々を含めた全ての人の偽らざる本心であり、真実である。これを歪めて解釈する人は、旅の力を知らないお気の毒な方だといわざるを得ない。

   

阿武隈高原SAでの森さんご夫妻への取材の様子。ご夫妻はお元気に旅へのの思いなどを話されていた。

森さんご夫妻は、明日滝桜を見たあと、東北の春をゆるりと味わいながら北上を続け、北海道に渡って旅くらしを続け、秋近くまで過される予定だとか。我々も早くそのようなくるま旅くらしをしたいのだが、今年はその夢は叶いそうもない。車の外は、未だ春にはなりきれていない高原の風が吹いていて、寒そうだった。TVのスタッフの方たちは、今夜は郡山泊まりだとか。大変だなあと思った。

コメント
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