新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

『官僚たちの夏』

2018年04月18日 | 本・新聞小説

今テレビは「モリカケ」の資料改ざん問題とセクハラ疑惑と、唯一明るい情報の大谷選手の大活躍。回り灯籠のようにめまぐるしく変わる国際情勢そっちのけです。
国会の緊張した証人喚問での高級官僚の答弁を見ながら、ふと城山三郎著『官僚たちの夏』の通産官僚の野太い生き様を思い出し、読み直しました。

 

時は’60~’70年代の高度成長期の通産省。欧米は膨張する日本市場を狙っています。放任しておけば日本の企業は大打撃を受けるに違いない、安定するまでは保護するべきだというのが、主人公、風越信吾の一貫した考えでした。
人事こそ通産省を動かす鍵だという考えのもと理想的な布陣を敷き、国を守るために「指定産業振興法」の法案作成に全省を挙げて取り組みます。特定の業種に利益をもたらすものでないという通産官僚の理想の法案でした。

もともと風越には、上司、政治家、財界人への周到な根回しの考えはなく、国会審議で法案は廃案という惨憺たる結果に終わります。すでに日本経済は成長しつつあり保護や規制を必要としないというのも理由の一つでした。廃案は、皮肉にもそれまでの通産行政の成果とも言えるもので、時代はどんどん変わリ始めていました。

高度成長期に、「風越の人事カード」筆頭の高級官僚たちがどのように悩み、どのように行動し、どのように変化していったかが力強く描き出されています。
時代は50年近く前の話ですが、最難関を突破して入省した高級官僚たちの視線は確かに国民を見ていました。気概とプライドをかけた闘いには、上への目線も忖度もない潔さが感じられます。

あれから半世紀、通産省は経産省と名を変え、時代も世界も大きく変わったといういうのが実感です。


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