新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展 福岡市美術館

2020年11月18日 | 福岡市美術館
12月13日まで「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展が福岡市美術館で開催されています。



藤田嗣治と言えば、独自に編み出した半光沢の滑らかな乳白色の絵肌が特徴です。
2009年に3月には、その乳白色を集めた「レオナール・フジタ」展が開催されています。しかし今度の展覧会はちょっと違いました。展覧会の切り口が実に新鮮でした。

藤田は普段から布や工芸品をこよなく愛し、パリで見つけた布の端切れやドレスのデザイン画を日本にいる妻に送ったり、果ては織物、裁縫までするという力の入れようでした。事実、裁縫をしている自画像や裁縫道具が細かく描かれた絵も展示されています。

このように布一般に深く関心を持っていた藤田は、背景に「ジュイ布」を描くのに特に力を入れていました。上の写真で、自画像の両サイドの薄いピンクグレーが「ジュイ布」です。
「ジュイ布」とは、田園風景の人物や植物など単色濃淡でプリントされたフランスの伝統生地のことで、フランス人の憧れの布でした。


《タピスリーの裸婦》の背景の布もジュイ布。細かい部分まできっちりと描かれたポピーと麦、布の折りじわ。日本画の繊細なタッチが見てとれます。
もともとジュイ布自体が人気の的でしたが、絵画の背景をここまで精密に繊細に実物どおりに描いていることが話題になり、藤田の人気向上のきっかけにもなりました。

当時、足元の4種類の布や背景のジュイ布を細かく描き込んだ絵画は、美しい裸体画の人気を更に盛り上げたようです。

妻と二人の生活の場だったパリのメゾン=アトリエ・フジタから届いた展示品の中には、自分で織った布で作った帽子や服、自分と妻用のマスク、半纏、浴衣など穏やかな生活を偲ぶ物もあります。
最後まで日本の工芸品を愛していたことに、捨ててきたはずの日本が心の奥には静かに横たわっていたのだと、ちょっと安心しました。

50年以上も前、藤田の亡くなった昭和43年に「藤田嗣治追悼展」が開催され、その時の図録を引っ張り出して見ました。やはり乳白色の肌の絵の称賛と解説が殆どでした。今回のような「布」を切り口にした画業の検証は初めてと言うことで、とても新鮮でした。

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妹からどうしても藤田嗣治展がみたいと言うことでLINEが入りました。「布」というテーマに心が引かれたようです。コロナ自粛で妹に会ったのは何と9か月ぶり。
入場者は密にならない程よい間隔で、ことさら神経を尖らす必要はありませんでした。
館内のニューオオタニのレストランは、空間が広いから安全な印象が強いのか、安心した表情の客でテーブルは埋まっていました。
全面ガラス張りの向こうは、大濠の水と緑の平和な小春日和が。コロナから解放されたひとときでした。
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