6月2日、木野雅之&式守満美のデュオコンサートがありました。二人とも英国在住で、3月のスコットランドでの演奏を皮切りに日本に渡り、東京から佐賀そしてツアーの最後がここ福岡でした。
木野氏は現在は日本フィルハーモニー交響楽団のソロ・コンサートマスター、式守さんはヨーロッパ各地で演奏活動を行っている期待の新進ピアニスト、福岡市出身です。
プログラムは、シマノフスキー、イザイ、レスピーギ、貴志康一、ヒナステラなど、私には馴染みの少ない近現代音楽家の作曲によるものでした。演奏者も相当な技術を駆使して、ステージが宇宙になったような感じを受けました。聴衆にも難解な曲に思われましたが、みんな身を乗り出して聴いていました。強烈な不協和音が心のどこかで調和するような、そんな感じを受けました。
曲ごとに、木野氏の分かりやすい解説があり、特に貴志康一については興味深いものがありました。1909年大阪に生まれ、28歳で夭折した天才音楽家。ヴァイオリニスト、作曲家、指揮者として活躍。ベルリンフィルでは、あのカラヤンよりも先に指揮棒を振ったとか。1949年、湯川秀樹氏がノーベル賞を授賞したときの晩餐会で奏でられたのが貴志氏の「竹取物語」だったそうです。お伽噺のイメージが浮かぶような日本らしい曲でした。 20世紀初めの日本に、世界に通用する作曲家がいたということが、私にはとても新鮮に聞こえました。こういう解説があると、音楽がぐっと身近になります。
木野さんはさすがソロ・コンサートマスター。大きな体から出るダイナミックな音も、絹糸のように繊細な音も自由自在という感じです。バイオリンは、1776年製ロレンツォ・ストリオーニでした。恩師リッチから譲り受けたものだそうです。
式守さんの演奏は、前回のコンサートではショパン、 ドビュッシーなどでしたが、今回のような近現代の曲も演奏され、随分幅が広いと思いました。演奏後の評判も、とてもいいものでした。
右が、読売新聞(6月9日夕刊)に掲載された記事です。演奏後のこの表情から、やはりお二人とも満足感と安堵の様子が感じとられます。( この写真をクリックしていただくと、記事が読めます。)