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メタンハイドレート

これまで述べてきたように非在来型天然ガスの主体をなすシェールガス、コールペッドメタン、およびタイトガスの開発が世界各国で始まっているが、わが国にはこれらの資源に乏しい。非在来型天然ガスとしては古くから水溶性天然ガスが開発されてきているが、それ以外ではメタンハイドレートが存在するのみである。

「燃える氷」メタンハイドレート

 非在来型天然ガス資源の一種であるメタンハイドレートは、水分子加水素結合により形成する寵状の格子の中にメタン分子を取り込んだ固体結晶で、「燃える氷」とも呼ばれる(写真V-1)。

 メタンハイドレート1m3が分解すると、0.8m3の水と、理論的ににに72m3(0七、〇。lMPa)のメタンになるが、寵状の格子の中にメタンがすべて取り込まれないので、目安としてメタン165m3がよく用いられる。

 メタンハイドレートが安定的して存在する領域は、温度O(Cの環境では23気圧以上、1気圧では温度-80七以下という「低温・高圧」の環境である(図V-5)。陸上ではシペリア、カナダ、アラスカなどの永久凍土層の下や、海洋では水深500m以深の大水深に存在する。

 活発化するメタンハイドレート研究

 メタンハイドレートの存在は、世界各地の海洋や極地方の陸上で確認されている(図V-6)。日本周辺海域では北海道から沖縄まで分布が推定されているが、特に東海沖から宮崎県沖に広がる南海トラフ海域と呼ばれる海域に広く分布していると考えられている。

 我が国では、日本周辺海域に相当量の賦存が期待されるメタンハイドレートを将来のエネルギー資源として位置づけ、その利用に向けて経済的に掘削・生産回収するための研究開発を実施し、メタンハイドレートの商業的産出のための技術の整備を目的に、2001年7月に経済産業省により「我が国のメタンハイドレート開発計画」が策定され、JOGMEC、産業技術総合研究所などからなるメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21研究コンソーシアム)によって研究が実施されている。

 日本以外にも、米国、カナダ、インド、中国、韓国なども国としてメタンハイドレートの資源化に向けた研究に取り組んでおり、共同開発などの国際協力も進んでいる。

メタンハイドレートの資源化に向けた課題

 MH21研究コンソーシアムは今までに、メタンハイドレート濃集帯の発見とこれを地震探査データから抽出する技術の確立、メタンハイドレート原始資源量の算定、陸上産出試験での地下のメタンハイドレート層からメタンガスの連続産出の成功などの成果を上げた。しかし、長期産出挙動の把握、海域での産出試験、生産性と回収率を向上させる技術の開発など、メタンハイドレートの商業化には、まだ多くの課題が残されている(表V-2)。わが国が国産エネルギーとして、メタンハイドレート開発で努力することが必要であり、世界のフロントランナーであり続けることは意義深いと思う。

 SPE/AAPG/WPC/SPEEのPRMS (2007年)では石油開発プロジェクトの商業化への熟成度を9段階に区分しているが、現状のメタンハイドレートは、その区分で下から3番目「Prospect」、4番目「Development not Viable」に位置する。上から3番目の商業生産に相当する「Justified for Development」にまで押し上げるには、あと10年ほどかけて数段階の努力が必要である。
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