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「コジェネ」を提案します

「エネルギー地産地消の決め手」

実は、森ビルの六本木ヒルズ自家発電事業は黒字なのだそうです。東京電力と比べてスケールメリットのない発電事業にもかかわらず、また同じ電気料金でありながら黒字。この事実は何を意味するでしょう。

東京電力の電源構成は、原子力28%、水力5%、火力66%、その他I%。つまり、ほとんどは火力と原子力による発電です。「原発の発電コストは火力の半分程度」と電力業界は喧伝してきたのですから、そのデータに沿えば「原子力が約3割入って全体のコストを下げている」と言えるはずです。原発が入って黒字の電力会社がある一方で、森ビルはスケールメリットもない火力だけで黒字。これは何を意味するのでしょう。

ふたつの可能性が浮上します。

東京電力が不当に高い利益を取っているか、原子力は実は安くないか。「原子力は実は安くない」ことについてはすでに触れましたが、電力会社の利益構造もまた、知れば怒りの代物です。これは第8章で説明します。

ここでもうひとつ考察を進めましょう。コージェネレーションはスケールメリットもないのに利益が出る。ならば、分散して拡大したら、利益も拡大するはずです。さらに言えば、コージェネレーションはエネルギー効率が高いのだから、拡大して大規模発電所と置き換えれば、相対的にCO2排出量も少なくなるはずです。

このテーゼに答える研究者がいます。名古屋大学大学院環境学研究科の竹内恒夫教授です。

彼の試算によれば、「原子力発電を止め、都市部に小規模コ・ジェネレーションを普及させ、電気自動車を普及させれば、対1990年比でCO2排出量を30%削減できる」というのです。

小規模分散型の発電システムでエネルギー自給も可能になる

では、このコージェネレーションは被災地に適当なのでしょうか。

まずガスタービンは浸水対策を施した地下に設置します。六本木ヒルズの例では、6基3万8660キロワットで1万平方メートル、100メートル四方の土地が必要です。人口1万人ほどが広く住んでいる町ならば、ほとんどの被災地で土地の調達は容易でしょう。

そして、作られた電気と熱は地下を通じて供給します。これなら津波が来ても倒れる電柱がないので大丈夫です。

また地産地消式なので、再生可能エネルギーとの相性も抜群です。被災地はみな海沿いなので、洋上風力発電の風車も建てやすいのではないでしょうか。東北は風力資源の宝庫でもありますし、太平洋側は晴天の日が多いので太陽光発電にも適しています。これらの電気がコージェネの電気をベースにして上乗せされます。

また「太陽光や風は変動が激しく、送電網の負担になる」と言われますが、ペース電力であるガスタービンは出力の変動が容易です。一度作り出した熱は急には失われませんから、ガスタービンが変動しても熱供給は対応可能でしょう。

こうなると被災地のエネルギー自給すら視野に入ってきます。

そのためには「火力発電の燃料を自前で調達できたらいいのに」などと思ってしまいます。「そんな夢物語が!」と言われそうですが、実はこの夢物語すら、なんとかできそうな技術革新が進んでいます。
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