『電力化亡国論』より
安定と平衡と定常
「持続可能」とは、安定した状態が継続することを意味します。ここでいう「安定」とは、例えば構造物のような動きの無い安定=「平衡」ではありません。色々な活動を含みながら、例えば水車が回り続けるように、全体として同じような状態が継続することです。このような状態を科学の言葉では「定常」と表現します。
まず、生態系の活動の場である地球の表面環境の「定常性」について考えることにします。
地球は主に太陽からの放射エネルギーを受け取って暖められています。地球表面は大気に覆われています。そこでは太陽から受け取ったエネルギーと地球の惑星としての運動によって大気循環や水循環が生じ、地表面の複雑な形状や陸地と海洋の分布によって多様な部分環境が形作られています。
定常開放系
地球の表面環境の定常性がどのように維持されているのかを図40に示します。地球は可視光線を中心とする太陽放射からエネルギーを受け取り、主に対流圏大気上層からの低温(-23℃程度)赤外線放射によってエネルギーを宇宙空間に放出しています。
大気に包まれた地球の表面温度は平均15℃程度で安定しています。これは、現在の地球が置かれた条件下において、地球の表面温度が15℃となる垂直温度分布を持つ地球大気の対流圏上層から宇宙空間に放出される赤外線放射によるエネルギー量が太陽から受け取るエネルギー量に釣り合うからです。これによって地球表面環境のエネルギーに対する定常性が保障されているのです。
見方を変えると、地球のエネルギー状態が定常性を満足するように地球の表面温度や大気の垂直温度分布が決まっているのです。
地球の表面環境の定常性ぱ、太陽放射の入射と対流圏大気上層から宇宙空間への低温赤外線放射というエネルギーの流れによって、宇宙空間とつながっています。このように系外とつながりを持つ定常系のことを「定常開放系」と呼びます。地球はエネルギーについて定常開放系なのです。
物質の循環構造
ところが物質は地球の重力に捉えられているためにほとんど系外との出入りがありません。地球は物質についてはほとんど閉じた系=「閉鎖系」なのです。そこで地球環境で行われる物質の変化が定常的に継続するためには、物質はあるサイクルを経て元の状態に戻らなければなりません。地球の表面環境が定常系であるためには物質の循環構造が必要なのです。
地球の表面環境の定常性は、宇宙空間とのエネルギーの定常的な流れと、地球表面上での物質の循環構造によって成り立っているのです。
拡散の指標=エントロピー
閉じた系では様々な物理的、化学的、生物的な活動が行われることでエネルギーや物質は次第に拡散して、最終的には物質やエネルギーが一様に拡散して活動が停止します。エネルギーや物質の拡散の程度を示す状態量を「エントロピー」と呼びます。
閉鎖系ではエントロピーは単調に増加します。エントロピーが最大になった平衡状態を「熱的な死」と呼ぶことがあります。
熱とともにエントロピーを捨てる
地球のような定常開放系では、エントロピーは最大ではない値で安定しています。それは、系内で増大したエントロピーを熱とともに宇宙空間に捨てる機構を持っているからです。
熱エントロピーSは、熱量Qをその絶対温度Tで割った値です。
大気水循環は、地表面で熱量Qを平均的に15t:=288Kで受け取ります。そして、受け取った熱を大気上層6000mの高空で-23℃=250Kの低温赤外線放射で宇宙空間に捨て去ります。その結果、地球の表面環境で行われる活動によって増加したエントロピー
△S=Q/250-Q/288
を宇宙空間に捨て去ることで、地球環境は定常性を維持しているのです。
ここで注意が必要なのは、宇宙空間に捨て去ることのできるエントロピーは熱エントロピーだけであり、地球の重力に捉えられている物質のエントロピーは地球の系外に捨て去ることができないということです。
安定と平衡と定常
「持続可能」とは、安定した状態が継続することを意味します。ここでいう「安定」とは、例えば構造物のような動きの無い安定=「平衡」ではありません。色々な活動を含みながら、例えば水車が回り続けるように、全体として同じような状態が継続することです。このような状態を科学の言葉では「定常」と表現します。
まず、生態系の活動の場である地球の表面環境の「定常性」について考えることにします。
地球は主に太陽からの放射エネルギーを受け取って暖められています。地球表面は大気に覆われています。そこでは太陽から受け取ったエネルギーと地球の惑星としての運動によって大気循環や水循環が生じ、地表面の複雑な形状や陸地と海洋の分布によって多様な部分環境が形作られています。
定常開放系
地球の表面環境の定常性がどのように維持されているのかを図40に示します。地球は可視光線を中心とする太陽放射からエネルギーを受け取り、主に対流圏大気上層からの低温(-23℃程度)赤外線放射によってエネルギーを宇宙空間に放出しています。
大気に包まれた地球の表面温度は平均15℃程度で安定しています。これは、現在の地球が置かれた条件下において、地球の表面温度が15℃となる垂直温度分布を持つ地球大気の対流圏上層から宇宙空間に放出される赤外線放射によるエネルギー量が太陽から受け取るエネルギー量に釣り合うからです。これによって地球表面環境のエネルギーに対する定常性が保障されているのです。
見方を変えると、地球のエネルギー状態が定常性を満足するように地球の表面温度や大気の垂直温度分布が決まっているのです。
地球の表面環境の定常性ぱ、太陽放射の入射と対流圏大気上層から宇宙空間への低温赤外線放射というエネルギーの流れによって、宇宙空間とつながっています。このように系外とつながりを持つ定常系のことを「定常開放系」と呼びます。地球はエネルギーについて定常開放系なのです。
物質の循環構造
ところが物質は地球の重力に捉えられているためにほとんど系外との出入りがありません。地球は物質についてはほとんど閉じた系=「閉鎖系」なのです。そこで地球環境で行われる物質の変化が定常的に継続するためには、物質はあるサイクルを経て元の状態に戻らなければなりません。地球の表面環境が定常系であるためには物質の循環構造が必要なのです。
地球の表面環境の定常性は、宇宙空間とのエネルギーの定常的な流れと、地球表面上での物質の循環構造によって成り立っているのです。
拡散の指標=エントロピー
閉じた系では様々な物理的、化学的、生物的な活動が行われることでエネルギーや物質は次第に拡散して、最終的には物質やエネルギーが一様に拡散して活動が停止します。エネルギーや物質の拡散の程度を示す状態量を「エントロピー」と呼びます。
閉鎖系ではエントロピーは単調に増加します。エントロピーが最大になった平衡状態を「熱的な死」と呼ぶことがあります。
熱とともにエントロピーを捨てる
地球のような定常開放系では、エントロピーは最大ではない値で安定しています。それは、系内で増大したエントロピーを熱とともに宇宙空間に捨てる機構を持っているからです。
熱エントロピーSは、熱量Qをその絶対温度Tで割った値です。
大気水循環は、地表面で熱量Qを平均的に15t:=288Kで受け取ります。そして、受け取った熱を大気上層6000mの高空で-23℃=250Kの低温赤外線放射で宇宙空間に捨て去ります。その結果、地球の表面環境で行われる活動によって増加したエントロピー
△S=Q/250-Q/288
を宇宙空間に捨て去ることで、地球環境は定常性を維持しているのです。
ここで注意が必要なのは、宇宙空間に捨て去ることのできるエントロピーは熱エントロピーだけであり、地球の重力に捉えられている物質のエントロピーは地球の系外に捨て去ることができないということです。