未唯への手紙
未唯への手紙
『周縁=地域』から新しい変化が始まる
『エネルギー進化論』より 地域から始まった革命
アメリカにおける自然エネルギーの歴史をたどっていくと、カリフォルニアに行き着きます。第2章で述べた世界的な風力発電市場のきっかけもカリフォルニアでしたし、1993年に、サクラメント電力公社(SMUD)がソーフーパイオニアという住民参加型の太陽光発電に取り組んだことが、太陽光発電が普及するきっかけとなったからです。また、カリフォルニアと並んで世界の風力発電市場の「源流」となったデンマークで、もう少し丹念に歴史をたどっていくと、ニーソルベリという小さな町に行き着きます。この町で始まった風力発電協同組合の取り組みが、デンマークで風力発電や自然エネルギーが拡大する源流となったからです。
両国に共通しているのは、自然エネルギーの始点が、中央から離れた「ローカル」にあるということです。はじめは一筋の流れにすぎなかった自然エネルギーという小さな川が、やがて川幅をひろげ水量を増やし、大きな奔流となっていくー。その大河の源流部は、〈中心〉ではなく必ず〈周縁〉にあるのです。
これはたんなる偶然でぱありません。国家レベルの大きな組織においては、新しい制度や枠組みが適切に設定されると、巨大な市場をつくり出すことが可能です。制度の在り方が社会や経済のかたちを決めます。ところが、国家レベルで新しい制度や枠組みを導入することは、容易ではありません。どのような分野であっても既存の体制(いわば「既得権益」)があり、新しい制度や枠組みによって影響を受けざるをえない場合には、こうした既得権益が必ず大きな政治的な影響力を行使します。それだけでなく、権力の中枢である国家レベルには、多様なステークホルダーがさまざまな意見や利害関係を持ちながら、議論に参加してきます。その結果、うまくいった場合でも当初の狙いとは大きく外れた新しい制度や枠組みに変わってゆき、多くの場合は途中で頓挫します。しかも、その手続きは、壮大なる国家システム・官僚主義によって、過剰なまでに緻密な作業を必要とし、合意・決定に膨大な時間と手続きが必要とされます。
それに比べると、地域レペルだと、参加するステークホルダーの利害関係や合意形成のプロセスが、相対的にシンプルです。地域住民が政策決定のプロセスに参加しやすいこと、問題の現場が身近にあること、あるいは、首長のトップダウンで物事が一気に決められることなどが要因となって、地域という単位では、さまざまな新しい試みにチャレンジしやすい条件がそろっているのです。
そのシンプルさと「ゆるさ」こそが、変化が周縁、すなわち地域から始まる大きな理由です。
1992年にブラジルのリオーデ・ジャネイロで開かれた「地球サミット」で、「21世紀に向けた人類の行動計画」と題されたテキストが採択されています。環境問題に対して、さまざまな主体が協力して社会的な障害を克服していくという、新たな社会的アプローチを要請しているこの計画は「アジェンダ21」と呼ばれています。そのなかでもっとも重視されているのが、地方政府の役割です。
「アジェンダ21」で地方政府に期待される役回りとは何なのか、その内実はつぎのように語られています。アジェンダ21で提起されている諸問題および解決策の多くは、地域的な活動に根ざしているものであることから、地方公共団体の参加と協力は、目的達成(持続可能な社会)のための決定的な要素となる。地方公共団体は、経済的、社会的、環境保全的な基盤を建設し、運営し、維持管理するとともに、企画立案過程を監督し、地域の環境政策、規制を制定し、中央政府およびそれに準じるものの環境政策の実施を支援する。地方政府は、その管理のレベルが市民にもっとも直結したものであるため、持続可能な発展を推進するよう市民を教育し、動員し、その期待と要求に応えていくうえで重要な役割を演じている(国連「アジェンダ21第28章第1節」)。
「アジェンダ21」は、日本でこそあまり知られていませんが、スウェーデンでは広く浸透しています。スウェーデンでは日本の自治体にあたる行政単位をコミューンと呼び、スウェーデン全土で帰一のコミューンが存在します。そのすべてのコミューンが、「アジェンダ21」に盛り込まれた、地域における取り組みに関する「ローカルーアジェンダ21」の担当スタッフと予算をもち、持続可能な社会への取り組みをすすめています。
こうした熱心な取り組みの背景には、高い自治性をもつコミューンの歴史があります。徴税権をもち、環境保全と健康維持への責任を有し、エネルギー、廃棄物、上下水道、公共交通を所管し、いくつかの法の執行機関でもあるコミューンは、スウェーデンにおける数々の先進的試みの核となっています。
アメリカにおける自然エネルギーの歴史をたどっていくと、カリフォルニアに行き着きます。第2章で述べた世界的な風力発電市場のきっかけもカリフォルニアでしたし、1993年に、サクラメント電力公社(SMUD)がソーフーパイオニアという住民参加型の太陽光発電に取り組んだことが、太陽光発電が普及するきっかけとなったからです。また、カリフォルニアと並んで世界の風力発電市場の「源流」となったデンマークで、もう少し丹念に歴史をたどっていくと、ニーソルベリという小さな町に行き着きます。この町で始まった風力発電協同組合の取り組みが、デンマークで風力発電や自然エネルギーが拡大する源流となったからです。
両国に共通しているのは、自然エネルギーの始点が、中央から離れた「ローカル」にあるということです。はじめは一筋の流れにすぎなかった自然エネルギーという小さな川が、やがて川幅をひろげ水量を増やし、大きな奔流となっていくー。その大河の源流部は、〈中心〉ではなく必ず〈周縁〉にあるのです。
これはたんなる偶然でぱありません。国家レベルの大きな組織においては、新しい制度や枠組みが適切に設定されると、巨大な市場をつくり出すことが可能です。制度の在り方が社会や経済のかたちを決めます。ところが、国家レベルで新しい制度や枠組みを導入することは、容易ではありません。どのような分野であっても既存の体制(いわば「既得権益」)があり、新しい制度や枠組みによって影響を受けざるをえない場合には、こうした既得権益が必ず大きな政治的な影響力を行使します。それだけでなく、権力の中枢である国家レベルには、多様なステークホルダーがさまざまな意見や利害関係を持ちながら、議論に参加してきます。その結果、うまくいった場合でも当初の狙いとは大きく外れた新しい制度や枠組みに変わってゆき、多くの場合は途中で頓挫します。しかも、その手続きは、壮大なる国家システム・官僚主義によって、過剰なまでに緻密な作業を必要とし、合意・決定に膨大な時間と手続きが必要とされます。
それに比べると、地域レペルだと、参加するステークホルダーの利害関係や合意形成のプロセスが、相対的にシンプルです。地域住民が政策決定のプロセスに参加しやすいこと、問題の現場が身近にあること、あるいは、首長のトップダウンで物事が一気に決められることなどが要因となって、地域という単位では、さまざまな新しい試みにチャレンジしやすい条件がそろっているのです。
そのシンプルさと「ゆるさ」こそが、変化が周縁、すなわち地域から始まる大きな理由です。
1992年にブラジルのリオーデ・ジャネイロで開かれた「地球サミット」で、「21世紀に向けた人類の行動計画」と題されたテキストが採択されています。環境問題に対して、さまざまな主体が協力して社会的な障害を克服していくという、新たな社会的アプローチを要請しているこの計画は「アジェンダ21」と呼ばれています。そのなかでもっとも重視されているのが、地方政府の役割です。
「アジェンダ21」で地方政府に期待される役回りとは何なのか、その内実はつぎのように語られています。アジェンダ21で提起されている諸問題および解決策の多くは、地域的な活動に根ざしているものであることから、地方公共団体の参加と協力は、目的達成(持続可能な社会)のための決定的な要素となる。地方公共団体は、経済的、社会的、環境保全的な基盤を建設し、運営し、維持管理するとともに、企画立案過程を監督し、地域の環境政策、規制を制定し、中央政府およびそれに準じるものの環境政策の実施を支援する。地方政府は、その管理のレベルが市民にもっとも直結したものであるため、持続可能な発展を推進するよう市民を教育し、動員し、その期待と要求に応えていくうえで重要な役割を演じている(国連「アジェンダ21第28章第1節」)。
「アジェンダ21」は、日本でこそあまり知られていませんが、スウェーデンでは広く浸透しています。スウェーデンでは日本の自治体にあたる行政単位をコミューンと呼び、スウェーデン全土で帰一のコミューンが存在します。そのすべてのコミューンが、「アジェンダ21」に盛り込まれた、地域における取り組みに関する「ローカルーアジェンダ21」の担当スタッフと予算をもち、持続可能な社会への取り組みをすすめています。
こうした熱心な取り組みの背景には、高い自治性をもつコミューンの歴史があります。徴税権をもち、環境保全と健康維持への責任を有し、エネルギー、廃棄物、上下水道、公共交通を所管し、いくつかの法の執行機関でもあるコミューンは、スウェーデンにおける数々の先進的試みの核となっています。
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