『組織を強くする人材活用戦略』より 組織を「分化」する
高度な分化が必要な時代に
社員を変えるには、組織の枠組みを変える必要があります。
工業化社会に過剰適応したサラリーマン社員を、ポストエ業化社会に活躍できるプロの社員に変え、その能力を引き出すには、どんな組織にすればよいでしょうか。
以下、それを説明していくことにします。
組織論には、古くから「分化」と「統合」という対立する概念があります。
組織の中にはさまざまな部門があり、それぞれの部門が特有の環境と対峙しています。たとえば研究開発部門の環境は不確かで変化が激しく、逆に製造部門の環境は確実性が高く比較的安定しています。そのため各部門は、それぞれの環境に応じた特徴を備えなければなりません。研究開発部門には長期的な視野や独創性、柔軟な思考力を身につけた人を配置し、自由かつ柔軟なマネジメントを行う必要があります。
一方、製造部門には正確性や迅速性の優れた人を配置し、規律と統制に重点を置いたマネジメントが必要になります。また営業には、人当たりがよく交渉力やサービス精神のある人を置き、成果を意識させながら自律的に仕事をさせることが大切です。
したがって、複雑で多様な環境に直面している組織ほど、それぞれの環境に応じて「分化」した部門を抱えるわけです。しかも部門間の差異はいっそう大きくなります。その結果、一つの会社の中に、まるで違う会社のように異質な下部組織ができることもあります。
一方で組織は、全体の目的・目標を達成するために部門間の調整や協力が欠かせません。それが「統合」です。すなわち、組織には「分化」と「統合」のバランスが必要なわけです。
問題は、そのバランスをどこに見出すかです。
企業を取り巻く環境は複雑化、多様化する一方です。
自動車や電機製品一つ取り上げても、少品種大量生産から多品種少量(変量)生産へとシフトし、製品ごと、仕様ごとに独自の市場や顧客層を相手にしています。サービス業や小売業も、多様化する顧客のニーズに応えられるよう、会社としては多様な人材と体制を整えておかなければなりません。また技術革新や流行のサイクルも、以前に比べると格段に短くなっています。
グローバル化の影響も見逃せません。企業が世界各地へ進出すると、現地の特性、ニーズに合った経営が必要になり、多様な人材が求められます。同じ技術者でもアメリカと中国、インドでは要求される能力、仕事内容はまったく異なります。マネジャーの役割も当然違ってきます。したがって、雇用・人事管理もまた、現地の風土や慣習、法制度、労働市場に合わせなければなりません。
それだけ「分化」の必要性が大きくなってきたわけです。
IT化で統合が容易に
一方で、ポストエ業化の時代には、それほど強固な「統合」は必要でなくなっています。
第一に、IT化によって周辺作業から解放された社員は仕事の守備範囲が広がり、一人である程度まとまった仕事を処理できるようになりました。サービスや営業の仕事では、従来は数人で行っていた仕事を単独でこなすケースが増えていますし、生産現場でも組み立て作業などで一人生産システムが普及してきています。歩調を合わせて一緒に働く共同作業の必要性がそれだけ減ったわけです。
第二に、そもそも統一性や両二性を要する仕事は、それを得意としている機械やコンピュータに任せればよいでしょう。そしてインターネットやモバイル端末などを活用すれば、「分化」しながらも容易に「統合」できます。会議を開いたり、直接会ったりしなくても、Eメールやテレビ会議などで済む案件も少なくありません。
このように、必要な「分化」と「統合」の均衡点が「分化」のほうヘシフトしているのです。
こうした環境の変化を敏感に察知して組織を再設計している企業があります。
たとえば、リクルートは自社の業務が多様化するなかで、それぞれの事業環境に適した経営を行うため、2012年に社内のカンパニーを分社化しました。リクルート・ホールディングスにいるスタッフは分社化した会社からの出向扱いにしていることからも、「分化」への強い意志がうかがえます。
また、京セラのアメーバ経営、パナソニックの事業部制復活なども、多様な環境に適応する「分化」戦略ととらえることができます。そのほか、創造的な仕事に携わる社員や顧客サービスを担当する社員などは独立子会社に移し、そこでは独自の了不ジメントを行っている企業もあります。
高度な分化が必要な時代に
社員を変えるには、組織の枠組みを変える必要があります。
工業化社会に過剰適応したサラリーマン社員を、ポストエ業化社会に活躍できるプロの社員に変え、その能力を引き出すには、どんな組織にすればよいでしょうか。
以下、それを説明していくことにします。
組織論には、古くから「分化」と「統合」という対立する概念があります。
組織の中にはさまざまな部門があり、それぞれの部門が特有の環境と対峙しています。たとえば研究開発部門の環境は不確かで変化が激しく、逆に製造部門の環境は確実性が高く比較的安定しています。そのため各部門は、それぞれの環境に応じた特徴を備えなければなりません。研究開発部門には長期的な視野や独創性、柔軟な思考力を身につけた人を配置し、自由かつ柔軟なマネジメントを行う必要があります。
一方、製造部門には正確性や迅速性の優れた人を配置し、規律と統制に重点を置いたマネジメントが必要になります。また営業には、人当たりがよく交渉力やサービス精神のある人を置き、成果を意識させながら自律的に仕事をさせることが大切です。
したがって、複雑で多様な環境に直面している組織ほど、それぞれの環境に応じて「分化」した部門を抱えるわけです。しかも部門間の差異はいっそう大きくなります。その結果、一つの会社の中に、まるで違う会社のように異質な下部組織ができることもあります。
一方で組織は、全体の目的・目標を達成するために部門間の調整や協力が欠かせません。それが「統合」です。すなわち、組織には「分化」と「統合」のバランスが必要なわけです。
問題は、そのバランスをどこに見出すかです。
企業を取り巻く環境は複雑化、多様化する一方です。
自動車や電機製品一つ取り上げても、少品種大量生産から多品種少量(変量)生産へとシフトし、製品ごと、仕様ごとに独自の市場や顧客層を相手にしています。サービス業や小売業も、多様化する顧客のニーズに応えられるよう、会社としては多様な人材と体制を整えておかなければなりません。また技術革新や流行のサイクルも、以前に比べると格段に短くなっています。
グローバル化の影響も見逃せません。企業が世界各地へ進出すると、現地の特性、ニーズに合った経営が必要になり、多様な人材が求められます。同じ技術者でもアメリカと中国、インドでは要求される能力、仕事内容はまったく異なります。マネジャーの役割も当然違ってきます。したがって、雇用・人事管理もまた、現地の風土や慣習、法制度、労働市場に合わせなければなりません。
それだけ「分化」の必要性が大きくなってきたわけです。
IT化で統合が容易に
一方で、ポストエ業化の時代には、それほど強固な「統合」は必要でなくなっています。
第一に、IT化によって周辺作業から解放された社員は仕事の守備範囲が広がり、一人である程度まとまった仕事を処理できるようになりました。サービスや営業の仕事では、従来は数人で行っていた仕事を単独でこなすケースが増えていますし、生産現場でも組み立て作業などで一人生産システムが普及してきています。歩調を合わせて一緒に働く共同作業の必要性がそれだけ減ったわけです。
第二に、そもそも統一性や両二性を要する仕事は、それを得意としている機械やコンピュータに任せればよいでしょう。そしてインターネットやモバイル端末などを活用すれば、「分化」しながらも容易に「統合」できます。会議を開いたり、直接会ったりしなくても、Eメールやテレビ会議などで済む案件も少なくありません。
このように、必要な「分化」と「統合」の均衡点が「分化」のほうヘシフトしているのです。
こうした環境の変化を敏感に察知して組織を再設計している企業があります。
たとえば、リクルートは自社の業務が多様化するなかで、それぞれの事業環境に適した経営を行うため、2012年に社内のカンパニーを分社化しました。リクルート・ホールディングスにいるスタッフは分社化した会社からの出向扱いにしていることからも、「分化」への強い意志がうかがえます。
また、京セラのアメーバ経営、パナソニックの事業部制復活なども、多様な環境に適応する「分化」戦略ととらえることができます。そのほか、創造的な仕事に携わる社員や顧客サービスを担当する社員などは独立子会社に移し、そこでは独自の了不ジメントを行っている企業もあります。
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