毎日、1000件以上のアクセス、4000件以上の閲覧がある情報発信ブログ。花や有機農業・野菜作り、市民運動、行政訴訟など
てらまち・ねっと



 各地の自治体で、政治倫理条例の制定が進んでいる。
 中には、ついつい、行き過ぎと思われる規定も散見する。気持ちはわかるけど。

 これに関して、辞職勧告などされた議員が「条例は違憲で無効、損害賠償」を求めた事件が起こされた。
 広島県の府中市でのこと。
 1審の広島地裁は、条例の規定について「市議会運営の公正を保障している」などと指摘し、憲法違反とした原告の主張を退け、「請求を棄却」。
 これに対して、先の10月、広島高裁は「違憲で無効」として市に賠償を命じた。
 「判示事項の要旨 市議会議員の2親等以内の親族が経営する企業は市が発注する工事の契約を辞退しなければならず,当該議員は当該企業の辞退届を提出するように努めなければならない旨を定めた市条例の規定は,憲法上保障された当該企業の経済活動の自由及び当該議員の議員活動の自由を制限できる合理性や必要性を欠いているものであり,無効である。」

 市長は、全国の同種の条例を持つ自治体に影響が大きいと上告した。

 ところで、私のまち、今の山県市になる前の高富町だった10数年前、当時の町長が汚職で逮捕された。
 それをきっかけに、住民の請願を受けて、議会で特別委員会を設置して、2年間かけて倫理条例案を練りあげたことがある。
 かなり厳しい原案を私が提案、1条ずつ議論してまとめた。
 兼職の禁止については、「議員が勤めもしくは経営している会社は自治体との請負を禁止する」との私の案に対して、その時点で相当する議員が何人かいることもあってか、強い反対があった。
 結局、地方自治法が禁止していると解釈されているところの「自治体からの請負額が50%を超えてはならない」旨の基準よりは厳しく「10%を超えてはならない」との案で落ち着いた。

 最後に、行政側が「県に適法性など確認」したところ、県から「地方自治法で規定する兼職の制限を超えた制限を条例で規定することは違法性が高い」との意見があり、他の議員たちが「ここぞ」と勢いづき、地方自治法の基準に逆戻り。
 なんという”指導”をする「県」だと憤慨したものだ。

 今回の高裁判決は、「地方自治法の規定を上回るあるいは異なる規制をする条例が直ちに無効であると認めることはできない」とした。
 当時の岐阜県の担当者は、この判示を見たら、なんというのだろう・・・
 
 広島高裁判決は、今日のブログ末でリンクし、主要部分を転記しておくが、私から見ての核心部を抜粋すると
 地方自治法92条の2の規定,その他地方自治法の規定上,議員の兼職禁止規定を同法92条2の範囲に限定する明文の規定はなく,議員の兼職禁止の範囲・態様を規制するのに地方の実情・地域の特性,すなわち,当該普通地方公共団体の規模,産業構造,公共企業に対する依存度,過去の不正行為の有無・態様等を考慮して取り決めることが許されないとする理由は見出せない。地方自治法92条2の規定を上回るあるいは異なる規制をする本件倫理条例の制定が直ちに無効であると認めることはできない。

 ところで、今回の広島事件の核心は次の「2親等規制」にある。
 さすがに私も、当該条例で、「議員が勤めているのではない『2親等』の親族の経営する会社まで制限する」ことはいかがなものかと思う。
 高裁判決は、
 憲法上保障された経済活動の自由及び議員活動の自由を形式的な議員の2親等の親族が普通地方公共団体と契約を締結した企業を経営しているとの理由で制限する合理性も必要性も認めることはできない。
 ・・・本件倫理条例4条の2親等規制を議員が実質的に経営する企業と契約した場合に限定解釈すれば,その規制の合理性・必要性を肯定する余地はあるが,被控訴人は,本件倫理条例4条についてそのような限定解釈をすることなく,控訴人に適用している

 なお、今の山県市になって、選挙ポスターの水増し事件などをきっかけとして私たちが提案してできた倫理条例については以下。
 2008年4月5日ブログ ⇒◆倫理特集/可決制定された倫理条例-保存版で全戸配布/ブログでは解説付きで紹介

人気ブログランキング = 今、4位あたり
 ★携帯でも クリック可にしました →→ 携帯でまずここをクリックし、次に出てくる「リンク先に移動」をクリックして頂くだけで「10点」 ←←

 ★パソコンは こちらをクリックしてください →→←←このワン・クリックだけで10点

●府中市議員倫理条例「無効」 控訴審逆転判決 辞職勧告元市議が勝訴
            (2011年10月29日 読売新聞)
 府中市議会の議員政治倫理条例は違憲で、辞職勧告決議で名誉を傷付けられたとして、元市議の松坂万三郎氏(54)が市を相手取り、約220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、高裁であった。小林正明裁判長は「条例は憲法で保障される経済活動や議員活動の自由を制限しており、無効」とし、請求を棄却した1審・地裁判決を変更、市に33万円の支払いを命じた。

 判決では、条例は議員の2親等以内の親族が経営する企業が市と工事などの契約を結んだ場合、議員は企業に契約の辞退届を提出させるよう努めることなどを規定。2008年10月、松坂氏の兄が社長を務める土木建築会社が市発注の道路工事を契約し、議会は条例違反として松坂氏に警告や辞職勧告を決議した。
 小林裁判長は「2親等規制は、憲法上保障された経済活動の自由及び議員活動の自由を制限できる合理性や必要性が認められず、無効」と判断した。
 市総務課は「判決文を詳細に検討してコメントしたい」とした。

●2親等規制に逆転「無効」
        中国 '11/10/29
 府中市の政治倫理条例に違反し市議会から辞職勧告決議を受けた元市議の松坂万三郎さん(54)が、違法な条例で名誉を傷つけられたなどとして、市に220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、広島高裁であった。小林正明裁判長は請求棄却とした一審広島地裁判決を変更し、市に33万円の支払いを命じた。

 条例は、市議の2親等以内の親族が経営する会社は市発注工事の契約を辞退しなければならないと規定。松坂さんは市議だった2008年、兄の経営する建設会社が市の道路工事を落札して契約し、辞職勧告決議された。

 小林裁判長は「2親等規制は、憲法で保障される建設会社の経済活動の自由と議員活動の自由を制限できる合理性や必要性が認められず無効」と認定。「その違法な規定に基づく辞職勧告決議も違法」と結論づけた。

 昨年11月の一審広島地裁判決は条例の規定を「市議会運営の公正を保障している」などと指摘し、憲法違反とした原告の主張を退けていた。


 府中市総務課は「想定外の判決に大変驚いている。判決内容を精査し、上告するかを決めたい」としている。

●政治倫理条例:高裁違憲判決で府中市が上告へ /広島
        毎日新聞 2011年11月8日
 府中市議の親族の企業と市の契約を制限する同市の議員政治倫理条例が憲法違反とされた広島高裁判決について、市は7日、判決を不服として最高裁への上告を決めた。同日の臨時議会で、上告するための議案が賛成多数で可決された。

 条例は、市議の2親等以内の親族が経営する企業が市と工事などの契約を結んだ場合に、市民に疑惑を生じさせないよう市議は辞退させなければならない、としている。先月28日の判決は「憲法が保障する経済活動の自由や、議員活動の自由を制限する合理性や必要性はなく、違憲」と判断した。

 上告期限は今月11日。伊藤吉和市長は「同じような条例を制定している自治体も最高裁の判断を望んでいると思う。手続きを進め、粛々と裁判に対応していきたい」と話した。【高山梓】

●条例「違憲」で府中市上告
         中国 '11/11/9
 府中市の議員政治倫理条例を違憲とした広島高裁の控訴審判決について、市は8日、判決内容を不服として最高裁に上告した。

 広島高裁判決は、市議の2親等以内の親族が経営する会社に市発注工事の辞退を求める条例について「憲法で保障される経済活動の自由を制限できる合理性や必要性が認められず無効」と認定し、一審の広島地裁判決を覆した。

 市は「敗訴のまま判例化すれば、議員の倫理観を高める動きに水を差す。最高裁の判断を仰ぎたい」としている。

●府中市議会議員政治倫理条例 平成20年3月31日条例第26号  
          府中市議会議員政治倫理条例
(市の契約に対する遵守事項)
第4条 議員、その配偶者若しくは当該議員の2親等以内の親族(姻族を含む。)又は同居の親族が経営する企業並びに議員が実質的に経営に関与する企業は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第92条の2の規定の趣旨を尊重し、市の工事等の請負契約、下請工事及び委託契約を辞退しなければならない。ただし、災害等特別な理由があるときはこの限りでない。

2 前項に規定する議員が実質的に経営に関与する企業とは、次の各号のいずれかに該当する企業をいう。
(1) 議員がその経営方針に関与している企業
(2) 議員が報酬を定期的に受領している企業
(3) 議員が資本金その他これに準ずるものの5分の1以上を出資している企業


3 前2項に該当する議員は、市民に疑惑の念を生じさせないため、責任をもって関係者の辞退届を提出するよう努めなければならない。

4 前項の辞退届は、議員の任期開始の日又は第1項に規定する契約に係る事業を開始することとなった日から30日以内に市長に提出するものとし、その写しを府中市議会議長(以下「議長」という。)に送付しなければならない。


●最高裁の判例のページ
     損害賠償請求控訴事件
事件番号 平成22(ネ)536
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成23年10月28日
裁判所名・部 広島高等裁判所  第2部

原審裁判所名 広島地方裁判所
原審事件番号 平成20(ワ)2499等
原審結果 棄却

判示事項の要旨  市議会議員の2親等以内の親族が経営する企業は市が発注する工事の契約を辞退しなければならず,当該議員は当該企業の辞退届を提出するように努めなければならない旨を定めた市条例の規定は,憲法上保障された当該企業の経済活動の自由及び当該議員の議員活動の自由を制限できる合理性や必要性を欠いているものであり,無効である。


● 判決全文 
      判決全文 
主 文
1 原判決を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は,控訴人に対し,33万円及びこれに対する平成21年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを20分し,その19を控訴人の負担とし,その余は被控訴人の負担とする。
3 この判決は,1項(1)について仮に執行することができる。

(1-2ページ)
第2 事案の概要等
1 事案の概要
(1) 本件は,原審において,府中市議会の議員であった控訴人が,被控訴人(府中市)に対し,国家賠償法1条1項に基づき,①違憲違法な府中市議会議員政治倫理条例(本件倫理条例)違反を理由として同市議会が辞職勧告決議を行ったことによって精神的苦痛を被ったと主張して,損害賠償金550万円及びこれに対する不法行為の後である平成20年12月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた第1事件と,②違憲違法な本件倫理条例に基づく審査請求の一連の手続により精神的苦痛を被ったと主張して,損害賠償金220万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成21年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた第2事件の併合事案である。

(2) 原判決は,控訴人の各請求には理由がないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
(3) 控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。
(4) 控訴人は,控訴審において,第1事件及び第2事件の各損害賠償請求額を110万円とした。

2 前提となる事実
原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「1 前提となる事実」に記載のとおり(ただし,原判決2頁19行目の「原告は,府中市の市議会議員である。」を「控訴人は,府中市議会の議員であったが,平成22年3月,議員を辞職した。」と訂正する。)であるから,これを引用する。

3 争点及びこれに対する当事者の主張
 ・・・・・(略)・・・

(8ページ)
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(第1事件につき法律上の争訟性の有無)について
・・・・・・・・・・・・(略)・・・

(13-14ページ)
(2) 前記認定の事実を前提に,本件倫理条例4条の2親等規制の適法性について検討する。

ア 地方自治法92条の2の趣旨(条例制定権の範囲)について
(ア) 地方自治法92条の2は,議員が,当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員,取締役等たることはできない旨規定している。これは,議員に対し,当該普通地方公共団体と請負関係に立つことを禁止するとともに,請負関係に立つ法人の取締役等の地位に就くことを禁止することにより,議員としての公正な職務の執行を図り,もって議会の公正な運営を確保しようとする趣旨と解される。

(イ) 本件倫理条例4条1項は,府中市議会の議員と企業との関係に対する規制として,議員等が経営する企業等に対し,地方自治法92条の2の規定の趣旨を尊重し,府中市の工事等の請負契約等を辞退しなければならないと規定し,同条3項は,議員に対し,上記請負契約等の辞退義務を負う企業について,責任をもって関係者の辞退届を提出するよう努めなければならないとの努力義務を課している。
本件倫理条例4条の目的は,議員としての公正な職務の執行と議会の公正な運営を確保しようとする地方自治法92条の2の目的と,基本的に同一の趣旨を定めたものと解される
(仮に,本件倫理条例4条の目的が地方自治法92条の2の目的と異なるとしても,本件倫理条例は,具体的な法律の委任に基づくものではなく,本件倫理条例4条の憲法適合性は同じように問題になる。)

(ウ) 控訴人は,地方自治法92条の2がその規制を上回る条例による規制を認めていないから,同条項の規制を上回る本件倫理条例4条の規定は無効である旨主張する。
しかしながら、地方自治法92条の2の規定,その他地方自治法の規定上,議員の兼職禁止規定を同法92条2の範囲に限定する明文の規定はなく,議員の兼職禁止の範囲・態様を規制するのに地方の実情・地域の特性,すなわち,当該普通地方公共団体の規模,産業構造,公共企業に対する依存度,過去の不正行為の有無・態様等を考慮して取り決めることが許されないとする理由は見出せない。地方自治法92条2の規定を上回るあるいは異なる規制をする本件倫理条例の制定が直ちに無効であると認めることはできない

(エ) とすれば,本件倫理条例4条が地方自治法92条の2の趣旨に反して無効であるとの控訴人の主張は採用できない。

イ 本件倫理条例4条の2親等規制の憲法適合性について
(ア) 被控訴人は,前記認定・説示のとおり,議員の兼職禁止について,地方自治法92条の2を上回るあるいはこれと異なる条例を制定することができると解される。しかし,被控訴人が条例を制定して法律と異なる規制をするについては,憲法及び法律に適合しなければならない(法律の委任によらない条例の規制には,法律が憲法に適合しているとの推認と同様の推認が働く制度的保障はない。)。以下,本件倫理条例4条の2親等規制の憲法適合性を検討する。

(イ) 本件倫理条例4条1項は,議員の2親等の親族が経営する企業は,府中市との請負契約等を辞退しなければならないと規定し,同時に,同条3項は,議員は,責任をもって議員の2親等の親族が経営する企業の辞退届を提出するように努めなければならない旨規定し,議員に本件倫理条例4条違反に違反する疑いがあると認められるときは,政治倫理審査会による審査手続を行い,本件倫理条例4条違反行為があるときは,市議会に諮り,条例遵守のための警告を発するか,議員の辞職勧告を行うか,その他議長が必要と認める措置を講ずることができると規定されている。

以上の本件倫理条例の規定は,次のとおり憲法上の保障を受ける経済活動の自由及び議員活動の自由を制限するものである(企業に対する契約辞退を求める制限と議員に対して企業の辞退届を提出させる義務とは相互に関連しているから,議員が企業に対する制限の憲法適合性を主張することは許されると解する。)から,府中市と契約した企業の経営者が議員の2親等である場合において,経済活動の自由と議員活動の自由を制限することができる合理性・必要性が認められなければならない。

a 経済活動の自由
憲法22条2項がいわゆる営業の自由を保障し,憲法29条が財産権を保障するなど憲法は経済活動の自由を保障していると解される。被控訴人と請負契約を締結した企業が,普通地方公共団体と締結した契約の辞退を求められることは,その辞退を直接強制する方法が定められていなくとも,当該企業の経済活動の自由を制限するから,その制限が適法であるためには,その制限が憲法上合理的で必要なものであることが求められる。

b 議員活動の自由
憲法15条が国民主権の原理の表現として公務員を選挙する権利や立候補する自由を保障し,憲法93条2項が普通地方公共団体の議会の議員をその普通地方公共団体の住民が直接選挙することを保障している趣旨に照らせば,選挙で選ばれた住民の代表である議員の活動の自由にも憲法上の保障が及び,憲法21条1項の表現の自由として議会の議員の活動の自由が保障されていると解すべきである。選挙で選ばれた議員が,議員の2親等の親族が経営する企業が普通地方公共団体と締結した請負契約の辞退届を提出する努力義務を課せられ,これに違反したと認められるときには警告や辞職勧告等の措置を講じられることは,直接失職するとの定めがなくとも,当該議員の議員としての活動の自由を制限するから,その制限が適法であるためには,その制限が憲法上合理的で必要なものであることが要求される。

(ウ) そこで,議員の2親等の親族が経営しているとの形式的な理由で2親等親族が経営する企業に対して普通地方公共団体と締結した工事請負契約を辞任することを義務付け,当該議員には企業に辞退届を出すように努める義務を負わせる等の制限(2親等規制)をする合理性や必要性が肯定できるか否かを検討するに,以下のとおり,2親等規制の合理性も必要性も認めることはできない。

a 被控訴人は,名目上は議員が関係しない企業を当事者とする契約であっても,当該議員が請け負っているのと何ら異ならない場合もあり得る,本件倫理条例4条の2親等規制は,このような脱法行為を防ぐことを目的としている旨主張する。
しかし,議員の2親等親族が経営する企業を当事者とする契約においてすべて実質的に当該議員が請け負っているものとみなすことができるとの経験則はないし,そのような事実を認める証拠もない(乙29の意見書をもって,このような事実を認めることはできない。)。議員が実質的に請け負っていると認められる場合には,本件倫理条例4条1項所定の「議員が実質的に経営に関与する企業」として契約の辞退が義務付けられ,同条2項で「議員が実質的に経営に関与する企業」は「議員がその経営方針に関与している企業」「企業が報酬を定期的に受領している企業」「議員が資本金その他これに準ずるものの5分の1以上を出資している企業」と定義されている。要するに,議員の2親等の親族が経営する企業が締結した契約をすべて議員が実質的に請け負った脱法行為であるとする根拠はない。

b 被控訴人は,議員が実質的に経営に関与していると否とに関わらず,親族企業が当該普通地方公共団体の請負をすること自体が議員,行政,業者の癒着を生み,政治腐敗の原因となる,その弊害は,地方自治法が禁じる議員の関係企業の請負と異ならない旨主張する。
しかし,議員が実質的に経営に関与していない議員の2親等の親族が経営する企業が普通地方公共団体と請負契約をすること自体が議員,行政,業者の癒着を生み,政治腐敗の原因となるとの経験則は認められないし,そのような事実を認める証拠もない(乙29の意見書をもって,このような事実を認めることはできない。)。
経営者が議員の2親等の親族であることが,地方自治法が禁じている議員が取締役等である法人との取引によって生じる弊害と同様の弊害を生じさせているとの事実は証明されていないし,前記認定の事実に照らせば,府中市においてそのような弊害があったとの事実も認められない。

c 被控訴人は,議員が実質的に経営に関与していることを立証する方法がなく,親族企業の請負を禁止するに当たり,議員が実質的に関与するものに限定することは立法論として実効性を欠くから,議員が実質的に関与するか否かを問わず規制できる旨主張し,これにそう意見書(乙29)を提出する。
しかし,議員が実質的に経営に関与しているとの立証がないにもかわらず,経営者が議員の2親等であることを理由に憲法上保障された経済活動の自由や議員活動の自由が制限される負担を受忍しなければならない合理性も必要性も認められない。
被控訴人の上記主張は主張自体失当である。

d 以上aないしcで検討したとおり
憲法上保障された経済活動の自由及び議員活動の自由を形式的な議員の2親等の親族が普通地方公共団体と契約を締結した企業を経営しているとの理由で制限する合理性も必要性も認めることはできない。

e 地方自治法は,議員の関係企業への関与禁止(92条の2)と同様に,普通地方公共団体の長についても同様の関係企業への関与禁止(142条)を規定している(副知事及び副市町村長にも準用される。166条2項参照)。他方,同法169条は,会計管理者の特別欠格事由として,普通地方公共団体の長,副知事若しくは副市町村長又は監査委員と親子,夫婦又は兄弟姉妹の関係にある者は,会計管理者となることができない,と規定し,普通地方公共団体の長等の2親等の親族は会計管理者となれない制限をしている(監査委員についても,同様な規制がある。198条の2参照)。前者は,普通地方公共団体の長や議員の職務執行の公正,適正を損なうおそれのある営利的関係のうちでそのおそれが類型的に高いと認められるものを規制の対象にしていると解されている。後者は,会計管理者や監査委員など特に公正な職務遂行が求められる職種について,その公正さを外観上も保つため
に普通地方公共団体の長等と2親等の親族関係にあることを欠格事由と定めるものと解される。地方自治法は,このように議員の関係企業への関与禁止の規制と会計管理者等の特別欠格事由の規制とを区別している。本件倫理条例4条の2親等規制は,地方自治法が規制する会計管理者等の特別欠格事由の規制と同様の範囲まで議員の関係企業への関与禁止を規制しようとするものであるが,そのような規制をする合理的な理由も必要性も肯定する事実が認められないことは,前記aないしcで検討したとおりである。

f 被控訴人は,本件倫理条例の規制に法的拘束力がないことなどを理由に本件倫理条例の2親等規制が適法である旨主張する。
しかし,当該議員が実質的に経営する企業か否かを問題にすることなく,形式的に議員の2親等親族が経営する企業であることを理由に経済活動の自由や議員活動の自由を制限する合理的な理由も必要性も認められないから,本件倫理条例の2親等規制が直接的な法的効力をもたないからといって,本件倫理条例の2親等規制が適法になると解する余地はない。

g また,被控訴人以外の普通地方公共団体にも,本件倫理条例の2親等規制と同様な規定の条例を制定している例が認められる(乙7)。
しかしながら,2親等規制を規定した条例を制定する際に,当該条例を制定した普通地方公共団体において,議員が実質的に経営する企業か否かを問題にすることなく,形式的に議員の2親等親族が経営する企業であることを理由に経済活動の自由や議員活動の自由を制限する合理性や必要性があるかについて,調査検討してその合理性を支える一般的な事実を確認のうえで立法したとの事実をうかがわせる証拠はない。2親等規制を認める条例が他に存在することをもって,本件倫理条例の2親等規制が適法であると認めることもできない。

h 他に本件倫理条例の2親等規制が憲法に適合していることを認めるに足りる主張立証はない。

ウ 本件倫理条例の2親等規制の適法性のまとめ
以上検討したとおり,本件倫理条例4条の2親等規制は,憲法上保障された経済活動の自由及び議員活動の自由を制限できる合理性や必要性が認められず,無効であると認められる。本件倫理条例4条の2親等規制を議員が実質的に経営する企業と契約した場合に限定解釈すれば,その規制の合理性・必要性を肯定する余地はあるが,被控訴人は,本件倫理条例4条についてそのような限定解釈をすることなく,控訴人に適用しているし,また,控訴人が府中市と本件請負契約を締結したA産業を実質的に経営していると認められないことは前記認定のとおりであるから,本件倫理条例4条を控訴人に適用することはできない。


(3) 不法行為の成立について
ア 本件倫理条例4条の2親等規制は,無効であるから,控訴人が本件倫理条例4条の2親等規制に違反したことを理由に被控訴人の公務員である府中市議会の議員が,本件倫理条例に基づいて,本件審査請求をし,政治倫理審査会を設置し,本件報告,本件警告決議及び本件警告措置をとったことは,違法であると認められる。
なお,本件広報は,本件倫理条例9条1項に基づき,審査結果を市民に公表するために行われたと認められるから,公表自体が違法であると評価することはできない(無効な2親等規制を理由にする審査結果であっても,その公表を差し控えるべき理由はない。そのような公表がされたことは,損害である慰謝料算定の事情として考慮すべきものと解する。)。

イ 控訴人の本件倫理条例4条違反の手続に関与した府中市議会の議員は,本件倫理条例の規定に従ったものである。しかし,上記認定した事実によれば,本件倫理条例の2親等規制については,条例制定の際にも,その後の政治倫理審査会での審査の過程においても,憲法に違反して無効である旨の主張があったから,控訴人の本件倫理条例4条違反の手続に関与する府中市議会の議員は,審査会の手続を進めるに当たり,本件倫理条例4条の2親等規定が憲法に適合するか否か調査検討する義務があったにもかかわらず,これを十分に検討することなく,その手続を進めて控訴人に本件倫理条例4条違反があるとの措置をとった過失があると認めるのが相当である。

・・・・・・・・・・(略)・・・



コメント ( 2 ) | Trackback ( )




09:16 from web
アメリカや他の国で若者が貧困、格差に反発して行動している。そこをどうとらえるか、では日本の若者はどうなのか、など気になるところ⇒◆親のすねをかじる若者が急増・アメリカ/「『若者ってかわいそう』なの?」/一番幸せなのは公務員⇒http://t.co/JH0yWau6
by teramachitomo on Twitter

コメント ( 0 ) | Trackback ( )