古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

TPP問題を愚考しました

2011-11-12 | 経済と世相
「TPP問題」が話題になっている。以下は、小生のTPP論です。
まず、TPPの参加国、
TPPの発足時の目的は、「小国同士の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げることであった(2006年5月、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国が協定を締結)。2010年10月、アメリカがこのTPPに目をつけ、アメリカ主導の下に急速に推し進められることになった。

加盟国・交渉国に日本を加えた10か国のGDPを比較すると、その91%を日本とアメリカの2か国が占める。さらに、オーストラリアを加えると、実に99.7%になる(アジヤの成長力を取り込むと首相は言うが、中国も、韓国も台湾もインドネシヤもカナダもロシヤも加入していない)。
つまり、環太平洋といっても、大国は日本とアメリカ。だから、日本が加入しないと、アメリカにとって、TPPは意味がないといってよい。
だから、アメリカ政府は日本に加入を強要しようとしている。

アメリカはTPPで何を狙っているのか?
米国は第二次世界大戦以後、世界一の覇権国の地位を維持してきた。この立場を維持し続けるには(下世話な話だが)、カネがかかるのだ。かつては米国の経済力は抜群で、貿易で稼ぎまくることが出来た。ところが、ベトナム戦争の出費で疲弊し、さらに日本や欧州の追い上げで輸出競争力は落ちてきた70年代、ニクソンによる金ドル交換の停止、ドルは変動相場制に至った。金本位制を離脱した時点で、ドルの基軸通貨はなくなるはずだったが、米国は軍事力と政治力で中東を押さえることにより、ドルがあれば石油が買える、石油本位制にした。しかし、米国製造業の競争力低下が続き、80年代後半、プラザ合意で、ドル切り下げの軟着陸を実現した。しかし、ドルが安くなっても、製造業は依然として強くならない。ここで、米国は製造業を諦めて、金融業とITで稼ぐことにし、一時これは成功したかに見えた。しかし、リーマン・ショックで、完全にこの路線が失敗した。
かくて、アメリカは「もう一度、米国企業の競争力を強化して稼がねばならない」。ここで、TPPに着目した。「TPPという仕組みの中で、その加盟国の国内では、アメリカ企業にアメリカ国内と同様に稼げるようにしよう」。そのためには、小国連合に経済大国(日本)を加盟させ、TPPを再編成しようというのである。
つまり、TPPは米国の輸出を増やす仕組みであって、日本の輸出を増やす仕組みではない。関税をなくすといっても、アメリカはどんどんドル安に持っていく方針だ(ドルが機軸通貨でなくなることも覚悟した?)から、仮に関税がゼロになっても、円高の損で日本の輸出は伸びない。

では、何故、野田総理はかくも反対の多いTPPに前向きなのか?アメリカの覇権が今後も続くと、考えているからだ。アメリカが世界を支配する体制が続く限り、日本には、米国に協力しないという選択肢はない。
TPPは、日本にとって、コメなど単に農業の問題ではなくて、外交の基本に関する問題なのだ、と愚考します。