古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

この国のかたち 4

2005-04-01 | 読書
 私見:何故,日本だけが取り残されたか?この10年、日本に特有の現象が原因で
は?と愚考します。その現象とは、著しい地価の下落です。
 景気が良いとは、お金が沢山世の中を動くことです。そのお金が減ってしまった
ら、不景気です。お金は日銀をジャブジャブ流していると思われるかも知れません。で
も、お金は日銀券だけではありません。銀行からお金を借りると,通常、借りた人の
口座の金額を増やすだけで、日銀券を渡すわけではありません。この銀行口座の増加
額が、お金として機能する。つまり、銀行が創出する信用もお金、流通するお金は激
減したと思います。
 銀行は、今まで土地を担保として貸し出ししていたのが、地価が値下がりするの
で、土地を担保としても安心できない。銀行貸出が激減してしまった。
 日銀が、銀行にお金を出しても,銀行が企業にお金を流さない。そこで詰まってし
まう。政府は,これは銀行が不良債権を抱えているから、お金が銀行から流れていか
ないと考えたようです。しかし、それはミス判断です。不良債権の処理に金を使うか
ら、企業に融資しないのでなく、土地でなく事業の将来性を審査して貸付せよと急に
言われても、そうしたノウハウを十分持っていない。おまけに,不良債権でこりごり
しているから簡単に融資できない。だからお金が流れない。ですから不良債権処理を
すすめても融資は増えないと愚考します。土地の値下がりが始まった時,銀行間信用
の収縮に対する対策を講ずるべきでしたが,政府も日銀も事態の深刻さに気づかな
かったのでは?
 それのみか,金利を下げれば景気は良くなると思ってゼロ金利を続けましたが,グ
ローバル化の経済です。輸出で稼いでいる企業も、日本でお金を運用しても利益が出
ないからドルを海外で運用する。日本でお金を調達し外国で運用する外国企業も出
る。つまり、海外で流通するお金を増やしただけ。10年も続いた米国の好景気は日本
の低金利が貢献した、と私は思います。
 余談ですが,人口が減り始めれば土地価格は下がります。ですから、いずれ日本の
土地価格は下がり始めたのですが,バブルを起こしたことで日本経済に最悪の衝撃を
もたらしたのです。
 以上,小生の独断と偏見です。

この国のかたち 3

2005-04-01 | 読書
 まずは寺島実郎氏の意見
【2000年という年の世界経済は「同時好況」のサイクルのなかにあった。日本だ
けが取り残されていた感はあったが。米国だけが好調という前年までの状況とは異な
り、EU(実質GDP前年比3.3%成長)、北東アジヤ(同8.1%)、東南アジヤ
(同5.8%)、中南米(同3.8%)、ロシヤ。東欧(同6.3%)と地球全体が3.9%
成長という、おそらく人類の歴史においても先例がないほどの好況の同時化が進行し
ていたといえる。】
「日本だけが何故取り残されたか?」寺島氏の意見(【 】内)と、小生の私見を併
記してみます。
【これまでの日本経済は、製造業のごく少数の輸出品目によって輸出を支える形で外
貨を稼ぎ、その金で食料とエネルギー資源を海外から買って生活を成り立たせてき
た。
 この20年間で輸入に占める食料とエネルギーの比重は、1980年の61%か
ら、90年の38%,2000年の33%と低下し、輸出で稼いだ金のほとんどを食
料とエネルギーという生活基盤確保に向けざるをえないという構造からは解放され
た。】
【2000年から遡る10年間,つまり「失われた10年」といわれる日本経済を国
際収支という視点から捉え直すことにする。この10年間の貿易収支の黒字は累積1
兆2500億ドルの黒字を積み上げたわけである。ところが、サービス移転収支で
は、累積6320億ドルのマイナス・・・貿易収支で稼いだ金の半分が消えたことに
なる。
 さらに、資本収支をみると、海外投資大国化を加速させたために、累計8823億
ドルのマイナスとなり、日本が貿易で稼いだ額の実に7割にあたる・・・投資に対す
るリターンもある程度は増加しているが、10年間の所得収支の累積が4830億ド
ルというのは、この間の資本収支の累積に対しても5.7%程度であり、今日までの
累積投資残高からすれば極めて効率の悪い投資を海外に行っている・・・
 約言すれば、「失われた10年」の日本は、貿易収支で得た黒字を国内に投資する
のではなく、もっぱら外国に回し,さしたるリターンもなく立ち尽くしてきた。そし
て、国内の需要が弱く、需給ギャップに苦しみ、この間の実質GDP年平均1.3%
という低成長にあえぎ、世界の成長軌道からも大きく取り残され・・・
 貿易黒字を有効に生かしきることができないという意味で,日本は戦略性に欠けて
いるといわざるをえないのである。】
 つまり、「戦略性の欠如」がいけないと氏は語ります。次に私の私見、と思いまし
たが、長くなりすぎたので次回とします。(続)


この国のかたち 2

2005-04-01 | 読書
 『この国のかたち』の続き、今回は日米関係です。(【 】内『寺島実郎の発
言』)
 9.11後,日本の外交・軍事は米国追随を続けているが
【米国の世界に対する軍事・経済援助の実に3割が、この20年間一貫して、人口わ
ずか600万人のイスラエルに向けられてきた。】ことを留意する必要がある。
 教科書問題や靖国参拝でもめていたが、【今、この国が自尊を込めて健全なナショ
ナリズムを燃やすべき対象は近隣のアジヤではなく、まず米国である。】
【戦後の過渡的占領期はともかく、半世紀を越えても4・5万人の米軍兵力と約10
10平方キロの米軍施設(東京23区の1・6倍)が存在し続けている。】
【ドイツは冷戦後の93年に駐独米軍基地の地位協定を改定し、ドイツの主権回復に
踏み込んだが、日本には世界にも例がないほど米軍の占有的使用権が認められた基地
が存在し続けている。そして、それを不自然とも感じない国になっている。】
 経済についても
【経済の目的は「民」の生活を安定化させることにあり、経済学は貧困、分配の不公
正,失業などの不条理に対し挑戦するものであった。】
【この国は製造業によるわずか上位20品目で輸出の7割を支えて外貨を稼ぎ、エネ
ルギーと食料を外国から買って生きている。】
 一方、輸出で赤字の続く米国は
【マネーゲーム至上の資本主義に傾斜し、一日の世界貿易額180億ドル(モノの取
引)の100倍もの為替の取引(カネの取引)がなされる状況をもたらしている】
 そして【欧州の主要国が悩みながらも模索しているのは、経済的効率と社会的公正
のバランスであり、米国流の市場主義・競争主義と一線を画していこうという試みで
ある。】

【100年前,日本は日清戦争から日露戦争を経て第一次世界大戦に向かうなかで、
世界史の潮流は帝国主義・植民地主義による列強の競争のなかにあると考え、自らも
列強模倣の路線へと傾斜していった。しかし、世界史の深層底流では、民族自決の国
民国家の形成が進み、植民地主義の終焉という次代のテーマが見え始めていた。この
時代認識のズレが不幸だった。今日、米国が発信するグローバルな市場化という潮流
を21世紀の普遍的潮流と認識し、米国の語る「民主主義と自由」を唯一の「正義」
と信じて日本が進んでいくことが正しいのであろうか。】

この国のかたち 1

2005-04-01 | 読書
以下は、3年前の読書感想の再録です。
 「寺島実郎の発言」なる本を読んでいたら、日本の現状を示唆するデータが興味深
い。以下に紹介します。題して『この国のかたち』
【日本の石油供給ソースに占める中東の比重は、73年の石油危機のころ、78%で
あったのが、昨年(2000年)は86%まで上昇している。・・・この10年、
「グローバルな市場化」という流れはエネルギーの世界にも浸透し、「1セントでも
安い石油を効率的に調達すること」のみを志向した結果,行き着いたのが、供給源の
多角化など、コストのかかることは避け、中東から大型タンカーを数珠繋ぎにして運
ぶというシナリオだった。】
【湾岸戦争のころ、ペルシャ湾の哨戒に従事していたペンタゴンの関係者から、「ホ
ルムズ海峡の上を毎日飛んだが、下を通るタンカーはほとんど日章旗を翻していた
よ」とからかわれた。・・・もし湾岸戦争のような事態が起これば、条理を超えて
「130億ドルの戦費拠出」をせざるをえない・・・】
そのためか以下のような問題もある。
【冷戦の終焉を受けて、米国自身が国防予算を三分の一も削減している中で、日本に
おける米軍基地と日本側の駐留経費負担(2000年度、6759億円)が削減され
ないのも不自然である。】

【日本経済に大きな影響を与える基本指標に「原油入着価格」がある。この国の水際
にいくらで石油が到達したかという数字である。90年の原油入着価格はバレル当た
り23.4ドル。この年の為替レートは1ドル=147.8円だったから、円建てでは
3459円・・・95年には円建てベースで1694円。90年代の前半を通じ日本
にとっての石油は実に半額になっていた・・・この石油価格が、96年,97年と上
昇し、為替も円安へと反転したため、97年には2499円まで急騰した。
 折りしもアジヤ経済が好調な拡大を続けており、エネルギー需要も急増,アジヤの
中期的エネルギー需給ギャップが懸念され始めていた。皮肉な表現をすれば、97年
にアジヤ経済危機が起こり,連鎖的にアジヤが失速したことによって「エネルギー需
給不安が一息ついた」】
【日本という国は一日500万バレルの石油を飲み込む生き物である。】
【国民の生存の基盤であるエネルギーと食料について、『骨太の方針』なるものはほ
とんど言及していない。】
追伸:2002年のメールの再録です。